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作品レビュー
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371 - 380件目/全499件

  1. 評価:5.000 5.0

    暴走する妄想、生きるための笑い

    昔の恋人を引きずるのも、やたら妄想が暴走するのも、男性の性分、という勝手なイメージがあったので、まず設定が新鮮だった。

    ああ、「臨死!!江古田ちゃん」の人か、と納得。
    この作者は「明るい自虐」みたいなものの描き方がとても上手で、客観的にはすごく惨めな状況を、ちゃんと笑いに変える。

    でも、本当は笑えない何かを、心の底には、持っている。
    主人公が何気なく漏らした「私はそーゆーのもう終わっちゃってるんで」には、涙が出そうになった。
    私にも、全く同じことを思いながら生きていた頃があった。
    仕事は順調で、毎日がそれなりに楽しくて、周りは「まだ若いじゃん」と笑うけれど、何年も忘れられない恋人がいる、それだけの理由で、「いや、終わっちゃってるんで」と思いながら生きていた、そんな時代が。

    すごく笑えるんだけど、ちょっと切ない。
    この漫画の「笑い」は、どこかで何かを諦めながら、それでも生きてゆくための、必死のあがきみたいに感じるから。
    それって多分、笑い、というものの、ひとつの本質なんじゃないか、と。

    • 10
  2. 評価:5.000 5.0

    見事なスピンオフ

    学生時代、オリジナルの大ファンだった。

    明智警視や剣持警部を主人公にしたスピンオフなら誰でも思いつきそうなものだが、まさか「犯人」を主役にしたコメディとは、目からウロコである。
    その発想がまずよし。

    オリジナルの「金田一少年の事件簿」は、一部を除いて「復讐」という大義名分を掲げた犯人が大半だったこともあり、基本的には、堂々と、凛として、金田一と対峙した人物が多かった。
    それは、漫画のキャラクターとしては格好がつくが、どこか人間らしさを欠いてもいた。
    犯人だって、ビビるし、テンパるし、捕まって「後悔はないわ」なんて、そんなことないんだ、本当は。
    そういう意味では、このコメディの中で描かれた犯人の姿こそが、「リアル」な犯人像である、と言えるかもしれない。

    徹底的に「下らない」体裁をとりつつも、意外にも「犯人」という存在の本質に迫る、見事なスピンオフ。

    • 49
  3. 評価:5.000 5.0

    イーブン

    夫婦に限らず、男女の関係は、一見すると「そんなの夫が(ないし妻が)悪いじゃん!」という物事も含め、その責任は、イーブンなのではないか、と思う。
    というか、イーブンということにするべき、ではないかと思う。
    どうであれ、お互いに、お互いを、選んだ、という責任がそこにはあるから。
    だから、作品として夫婦の問題を描くならば、そこには本当は「双方の視点」が反映されていないと、フェアではないのかもしれない。
    そういう意味で、この漫画は素晴らしかった。

    妻に共感する人が多いだろうと思う。
    かといって、この漫画は「夫が悪い」と断罪しているわけではなく、夫婦がそれぞれの思いや価値観を抱えながら少しずつすれ違っていく様を、丁寧に、丁寧に描いている。
    目に見えて近づく破綻が、やけに静かで、悲しい。
    手っ取り早く読者の注目を引くなら、妻をさらっと不倫に走らせて、性的な描写をさっくり入れればいい(昨今の多くの漫画がそうするように)のだが、そういう安直な手段に流れていない。
    そこに、作品としての気概みたいなものを感じたし、非常に好感を持った。

    私は一人の夫であるが、幸い、この漫画のような問題からは遠い場所にいる。
    ただ、ひとつ思ったのは、この漫画の夫にとって致命的なのは、性生活の問題以上に、「向き合おうとしない」ことではないか、ということだ。
    要するに、彼は「向き合いたくない」人間なのだと思う。
    そしてその姿勢は、夫婦の関係として、別に間違っているわけではない。
    なぜなら、夫婦とは多分、正面から「向き合う」ための存在ではなく、「横に並んで」歩いてゆける相手だからだ。
    本質的には、文字どおり「向き合って」することよりも、横に並んで眠ることのほうが、大切なのかもしれない。
    けれど、その歩みが、ずれてしまった場合には。
    どちらかが進みすぎたり、遅れたりした場合には。
    立ち止まって、歩み寄って、向き合わなければならないときも、来るだろう。
    きっと、そこから逃げてはいけないのだ。
    少なくとも、愛している、と言いたいならば。

    • 739
  4. 評価:4.000 4.0

    古きよき王道

    日常への奇妙な侵入者、明らかに邪悪な存在なのに、主人公以外は誰もそのことに気づかず、主人公は周りに信じてもらえず、孤立してゆき…というある種のサスペンスの王道的な展開。

    真新しい話ではないが、漫画としてひとつひとつの恐怖演出が的を射ており、安心して(?)楽しめる怖さである。

    非常に安定感のある、古きよきホラー漫画。

    • 8
  5. 評価:4.000 4.0

    情緒がある

    奇抜な設定とか、あっと驚く展開とか、ハラハラするようなスリルとか、そういうものがあるわけではない。
    しかし、独特の空気感は秀逸で、情緒溢れる、という表現がぴったりくる漫画。
    私が平安時代の人間なら「いとをかし」と言ったことだろう。

    • 4
  6. 評価:4.000 4.0

    生き残り

    一話完結型のオムニバスホラー。
    基本的にはローティーンを対象にした漫画だと思うのだが、意外にきちんとホラーだった。
    もちろん、猟奇的な描写などはないのだが、毎回、甘い結末はほとんどなく、やるなあ、と。

    題材は、いじめや恋の問題という古典的・普遍的なものから、ネットが絡むような現代的な怪談まで様々。
    少女漫画としてのホラーが一大ブームを巻き起こしたのは過去の話で、今やホラー漫画雑誌なんてひとつもない。
    けれど、その歴史の一部は、こんなふうに現代に生き残っているんだな、と思うと、ちょっと感慨深い。

    • 5
  7. 評価:4.000 4.0

    前作に比べて

    基本的な作品のトーンは前作と同じで、相変わらず面白いのだが、一話のエピソードの尺は半分くらいになっており、その点は好みが分かれるかと思う。
    よりサクサク読めるようになったという良さもあるが、そのぶん、キャラクターの掘り下げは浅くなり、重みのあるパンチはなくなった気もする。
    個人的には、「新」ではないバージョンの方が好きである。

    • 4
  8. 評価:4.000 4.0

    本気で怖がれた、あの頃

    嗚呼、もう、懐かしさで心が震える。

    今では、ホラー漫画を読んでも、本気の本気で怖がることなんて出来ない。
    それが出来たのは、子どもだけだ。
    だからこの懐かしさは、過去に触れた作品に対する単純な感慨ではなく、永遠に取り戻せない私自身の恐怖に対する感傷でもある。

    様々な作者によるオムニバスであるがゆえに、なおさら、ホラー漫画雑誌を夢中で怖がれたあの頃が蘇る。

    大人になって、ホラー漫画よりも遥かに恐いものをたくさん知った。
    でも、マジでホラー漫画がトップクラスに恐かった時代も、あったのだ。
    別にそれをいいとも思わない。
    ただ、そんな時代も、あったんだな、と。
    その思いは少しだけ、郷愁に似ている。

    • 5
  9. 評価:5.000 5.0

    気づいた

    「口裂け女」というあまりにベタで古典的な題材を使いながら、決して埋もれることのない、ハサミのように切れ味鋭いホラーに仕上げている。
    流石と言う他にない。
    この漫画の口裂け女の「正体」そのものが、ある意味で、怪談話や都市伝説の核心を射抜いていると思う。

    小さい頃、従姉妹の家に行くと、今はなきホラー漫画の雑誌が大量に置かれていた。
    そのどれもこれも、表紙を飾っていたのは犬木加奈子の絵だった気がする。
    当時の私にとって、犬木加奈子の絵は、たまらなく魅力的な怪しい世界への入り口に立つ道標のような、象徴的な存在だったのだと思う。
    間違いなくひとつの時代を築いた作者であり、私のような子どもは、きっと日本中にたくさんいたことだろう。

    二十年ぶりくらいに彼女の漫画を読み直して、やっと気づいた。
    私は、犬木加奈子という人の絵が、好きなのだ、と。
    というか、ずっと好きだったのだ、と。
    それこそ漫画で、「君のことがずっと好きだったんだって、やっと気づいたよ」とかほざく阿呆な男がいるでしょう。
    私はそのレベルである。
    しかし、おかげで、これからこの人のホラーを読む度に、温かい気持ちになれることだろう。
    そんな漫画は、私にはあまりない。
    そして、そんなホラー漫画は、ひとつもない。

    • 6
  10. 評価:5.000 5.0

    「お約束」の拒否

    読み始めると、止まらなかった。
    何ポイント献上したかわからん。
    私がオムニバスを好きなこともあるが、それにしても、毎回、見事な安定感、そしてテンポのよさ。

    何が凄いって、作品として、一貫して冷徹にルールを守っているところだ。
    主人公は依頼人の寿命と引き換えに呪殺を請け負う死神みたいな存在だが、あくまで漫画の主人公だ。
    だから普通は、もうちょっと融通が利く。
    つまり、ルールを破る。
    漫画の展開として、都合のいいことをやる。
    具体的に言えば、「いくら何でもこの人が死ぬのは可哀想だろ」という人は、殺さない、とか。
    言い方は悪いが、「死んでもいい」と読者が感じるようなキャラを、被害者に設定する、とか。
    一度は請けた依頼でも、それが依頼人にとってあまりに悲劇的な結末(例えば勘違いによる呪殺など)をもたらす場合には、それを教えてやってキャンセルさせてやる、とか。
    そういう展開は、基本的に、ない。
    そういう甘さが、この漫画にはない。

    物語としてサクッと感動を演出できるはずの「お約束」よりも、冷徹にルールを守ることを選んでいる。
    そのぶれない姿勢は、作品として、とても美しいと思った。

    • 32
全ての内容:全ての評価 371 - 380件目/全499件

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