4.0
絶妙な「ずれ」
「青野くん」から飛んできた。
荒削りではあるけれど、この作者の才能は、はっきり表れていると思う。
それは、ひとつには、「ずれた」人間を描く巧みさ、ではなかろうか。
「ぶっ飛んだ」漫画のキャラクター、ではない。
その「ずれ」は、もっと些細で、微妙なものだ。
誰かの人格について、あるいは誰かと誰かの関係性について、「何かおかしい」と思うけれど、そのおかしさを、上手く指摘できない、というような、ずれ。
それを繊細に描くことは、「イカれた」キャラクターを創作するよりも、ずっとさじ加減が難しい気がする。
そういう、才能なのではないか、と。
その「ずれ」は、絶妙すぎて、リアルすぎて、はっとするし、ちょっと怖い。
しかし、そのような「ずれ」は、ある意味では、私たちの誰もが持ち得るものでもあるのだ、と思う。
素晴らしいのは、そういう「ずれた」人々に対して、作者が漫画の「ネタ」として扱うのではなく、確かな愛情をもって表現しようとしていることだ。
みんな、どこか、変。
でも、見方によっては、私たちは皆、そうだ。
だから、作者の「ずれた」人々への愛情というのは、ほとんど、人間を描くことに対する愛情と、等しいのではないか。
そうでなければ、こんな漫画は描けないと思う。
-
22
崖際のワルツ 椎名うみ作品集