4.0
未来なき強み、死に場所を探して
わずかな余命を宣告された孤独な老人が、ふとしたきっかけから家族の温かみを知るが、その家族が殺され…というところから始まる復讐劇。
あまりに悲惨な設定に胸が痛むが、だからこそ、老人の凄惨な復讐を全面的に肯定できた面もある。
また、「引っ張りすぎだろ」という漫画が巷に溢れる中、極めてコンパクトな尺に収めてある点も、個人的には評価ポイントだった。
主人公はいたって普通の老人である。
が、復讐というのは多かれ少なかれ、その後の自分の人生をも犠牲にするものだ。
その意味では、老い先短い人間ほど、復讐に全てを賭けられる、と言えるかもしれない。
「先のことなど考えない」は若者の専売特許であるように聞こえるが、状況的に考えれば、むしろそれは老人の強みであって、「未来なんかもうねえよ」というのは、ある意味、最強の開き直りである。
この高齢社会にあって、漫画の読者層だって一定数は高齢化していくわけで、昔に比べて漫画というメディアの対象年齢が広がったことを考えるにつけても、今後、「未来なき強み」を持った老人を主人公に据えた漫画は、増えていくかもしれない。
「少年」である読者が主人公の「少年」の活躍に胸を躍らせるように、「老人」の読者が主人公の「老人」の生きざまに胸を熱くする時代は、もうすぐそこに迫っているのかもしれない。
あるいは、その時代はもう、始まっているのか。
そのうち、「老人漫画」なんてジャンルが出来ちゃったりしてね。
本作は、あり得ないくらい不幸な物語だが、皮肉なことに、一人の老人が「これ以外にない」というくらいの死に場所を見出だす物語でもある。
どう死ぬかを見出だすことは、多分、どう生きるかを見出だすことと同じくらい、難しい。
結末には、確かな救いがあった。
私には、始めから、老人がどこにもない死に場所を探しているように見えたから。
- 45
髑髏は闇夜に動き出す