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作品レビュー
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351 - 360件目/全498件

  1. 評価:5.000 5.0

    「あるがまま」の、その先に

    「サイドA」と「サイドB」があるが、要するに「1巻」「2巻」なので、ご注意を。

    自分らしく、とか、飾らずに、とか、あるがままで、とか、ありのままに、とか、何でもいいのだけれど、全部同じで、本当に苦しみ抜いている人間には、そんな言葉、何の役にも立たないと私は思う。
    そして、自分として生きるということは、そんな二束三文のキャッチ・フレーズで何とかなるほど単純なものではないとも思う。

    でも、そういうメッセージはとにかくキャッチーでリーズナブルだから、いとも容易く社会に溢れかえる。
    そんな時代に、だ。
    この漫画が放ったメッセージは、真逆だ、と私は思った。
    さんざん「自分らしさ」を追い求めながら、この作品が辿り着いた境地というのは、「自分らしく生きるばかりが能じゃないぜ」という地点だったのではないか、と私は受け取った。

    そして、誰かのために微笑みながら自分らしさを捨てられるような場所に行き着いたとき、逆説的ではあるけれど、そこに、また別の「自分らしさ」みたいなものが紡がれるのではないか、と思った。

    そういう全て、この漫画を読まなければ、考えなかったことかもしれない。
    出会えて、本当によかった。

    • 11
  2. 評価:5.000 5.0

    生きづらさ、そして、カートのこと

    別サイトで読んだ、同じ作者の「センコウガール」が素晴らしくて、この漫画に飛んできた。

    女装癖とか同性愛とか、そういうことは多分、作品の本質ではなくて、核心にあるのは一種の生きづらさ、なのではないかと思う。
    なりたい自分、なれない自分、求めていたはずの「自分らしさ」すら、見出だしたはずの「本当の自分」すら、いつの間にやら見誤っていた気がする自分、ぐちゃぐちゃに絡まったまま、それでも生きてゆくしかない自分。
    そんな若い魂の痛みが、ひりひりするくらいに伝わってきて、胸が痛んだ。

    タイトルは明らかにニルヴァーナの「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」をもじっているけれど、カート・コバーンという人もまた、強烈な生きづらさを抱えていた。
    瞬く間にロック・スターに成り上がってしまったという現実と、「こんなものになりたかったわけじゃないのに」という無い物ねだりの相克の中で、カートは生き、死んでいった。
    そんなカートの姿が、この漫画の登場人物たちにだぶって見えた。

    もう少し、書きたいことはあるのだけれど、続きは、「サイドB」で。

    • 7
  3. 評価:5.000 5.0

    ミステリと呼ばないで

    今まで読んだどんな漫画とも明確に違う。
    面白すぎてびびった。

    基本路線はミステリでありながら、話はどんどん脱線していく。
    主人公の整(ととのう)君が、関係ないことをしゃべりまくるせいである。
    事件の取り調べを受けている最中だろうが、バスジャックの人質になろうが、唯我独尊で脱線しまくる。
    何だこいつは。

    しかし、この脱線が、たまらなく魅力的である。
    本線から遥かに逸脱した会話が楽しい、という意味では、タランティーノの映画のような漫画である。
    とにかく整君の呑気なしゃべりが、いちいち鋭く、深い。
    人間や社会に対して、独自の視点でもって、目からウロコの核心を提示するその洞察の見事さは、私の文章ではとても説明できない。
    これはもう、読んでもらうしかない。

    それでいて、「本線」のミステリ部分も、「脱線」を邪魔しない程度にサラッとしていながら、パリッと筋が通っている。
    このバランス感覚の素晴らしさ。

    ミステリのようで、ミステリではない。
    ミステリではないようで、ちゃんとミステリでもある。
    ミステリ、と呼ぶのは何かピンとこない、ミステリじゃない、と切り捨てるのも何かもったいない。
    ミステリが好きな人にも、苦手な人にも薦められる快作。
    誰にでも迷わず薦められる漫画なんて、私にはほとんどない。

    • 619
  4. 評価:4.000 4.0

    正常と異常の間で

    昔、「カッコーの巣の上で」という映画を観た。
    雑に言えば、正常と異常の境界を問いかけるような映画だった。
    それを、思い出した。

    作者自身の経験から、精神科のリアルな日常が語られる。
    この「リアル」がよかった。
    本作の「リアル」は、「取材」ではなく、「経験」した人間にしか語れない種類のものだ。
    つまり、「出来事」が正確である、というだけのリアリティーではなく、現実に対峙した人間(作者)が何をどう受け止め、考え、感じたか、というリアリティーである。

    素晴らしいのは作者の位置づけで、彼女はただの「ナース」でもなければ「観察者」でもない。
    彼女はおそらく、「ちょっと何かが違えば、私もここにいたかもしれない」という意識で、絶えず患者に接している。
    だから、彼女の分析は、客観的でありながら、決して冷たくはない。
    「正常」サイドから「異常」を描く、というスタンスではない。
    彼女自身が、はじめから正常と異常の間に立っている。
    だから、精神科の患者たちを、あまりに普通に「同じ人間」としてフラットに見ることが出来ている。
    そういう印象を受けた。

    正常と異常の間に、自分は、立っていた。
    その境界をまたいだ経験をした。
    それこそが、彼女が「精神科ナースになったわけ」なのだろうし、ことによると、彼女にとってこの仕事は、天職と呼べるかもしれない、と思った。

    その、少し危うい、でも正直で真っ当で、自分を偽らない立ち位置が、私は好きであった。

    • 15
  5. 評価:5.000 5.0

    コーヒー・ライフ・ゴーズ・オン

    缶コーヒーを中心アイテムに据えた短編集。

    素晴らしいと思った。
    読み終えてしまうのがただただ惜しくて、最後の二話をしばらくとっておいた。
    漫画で、どんな短編集が読みたいか、と言われたら、私は、こんなの、と答えるだろう。

    私たちの日常を、人生の一場面を、まさしく「切り取った」漫画だと思った。
    全然「泣かせにきている」タイプの漫画ではないのだけれど、その切り取り方があまりに正確で、また誠実で、そのことに多分、ちょっと涙ぐんだりした。

    どのエピソードにも、明確な「オチ」と呼べるようなものがない。
    この漫画は、勇気を持って、オチらしいオチを拒絶しているように思った。
    全てのエピソードが、「終わり」ではなく、「続き」を感じさせる。
    そこにあるのは、漫画として綺麗に片づけられた「おしまい」の様式ではなく、これからも続いてゆくしかない、誰かの、そして私たちの、人生の形なのだと思う。

    ハッピーエンドもバッドエンドもなく、私たちの人生は続く。
    多分明日も、同じ缶コーヒーを飲んだりしながら。

    「まあ、缶コーヒーでも飲んで、今日も頑張れよ」
    そんな「メッセージ」を、この漫画は一言も発していない。
    そういう意味では、とても控えめで、寡黙な作品だ。
    それなのに、読者の側には、その感情が残るのだ。
    「まあ、缶コーヒーでも飲んで、今日も頑張るか」と。
    まあ、私は、コーヒーが飲めないんだけれども。

    • 16
  6. 評価:4.000 4.0

    それでも、人生は続く

    夫が死んだ。
    ずっと男に寄りかかってきた人生だから、どうしたらいいかわからない。
    そんな主人公は、現代的な価値観から言うと「駄目な女」かもしれないが、私は好感を持った。
    その理由は明確で、自分がどういう人間であるかを、自覚しているからだ。
    弱さとか愚かさというものは、それを自覚した時点で、もう半分くらいは救われているんじゃないかと思う。
    主人公が前に進めたのも、自分がどういうふうに生きてきたか、という事実から逃げなかったことが、出発点だったのではないかと私は思った。

    誰かを愛せることは、素晴らしい。
    でも、残酷なことに、「生きてゆくこと」は、それとはまた別の問題なのだ。
    多分。

    一人の女性が専門的なスキルを身につけることで自立してゆく、という非常に現代的な漫画だけれど、古い価値観を攻撃するようなタッチではなく、「愛は消えたり奪われたりすることもあるけれど、それでも、人生は続くのよ」と優しく諭すような漫画だと思った。
    その優しさが、私はわりに好きであった。

    • 16
  7. 評価:1.000 1.0

    勝手にしやがれ

    恋に落ちるのは簡単だが、愛を続けてゆくには努力が要る、と思う。

    その努力が出来ない、したくない、というならば別れるべきだ。
    別れないなら努力をすべきだ。
    どちらかだ。
    結婚は維持する、でも努力はしたくない、いい大人が、阿呆か。
    成績を上げたい、でも勉強はしたくない、という子どもと同じ、というか、それ以下だ。
    腐った根性で家庭にいながら子どもを育てているぶんだけ、大人の方が罪は重い。

    そんな、無責任を超越したような阿呆だから、「離婚してもいいですか?」なんてふざけたことを言う。
    勝手にしやがれってんだ。
    「はい、いいですよー」って誰に言ってほしいんだ。
    それすら誰かに決めてほしいのか。
    自分の人生の全て、誰かのせいにしたいのか。
    まったく、タイトルからして最低だと思う。
    だったら読まなきゃいいじゃないかって?
    そのとおりだ、私が間違っていた。

    だいたい、どういう読者にどういう感情を起こさせることを意図した漫画なのか。
    「あーわかる、うちの夫もこんな感じ、ほんと、離婚したいよねー」という読者の反応を期待しているのか?
    それを考えると、つくづく気持ちが悪い。
    虫酸が走る。
    漫画を読んでこれほど気分が悪くなったことは、多分ない。

    エッセイ風の描き方だが、どうもフィクションらしい。
    だったらなおさらタチが悪い。
    これがエッセイなら愚かなだけだが、フィクションなら、そこに愚かな読者を釣ろうとするあざとさが加わるからだ。
    そんな商売は、ほとんど邪悪と言ってもいいと思う。

    やだやだ。
    もう忘れよう、この漫画のことは。

    • 66
  8. 評価:4.000 4.0

    流氷の話

    「あの事件」をモチーフにした第一話を読んだときは、印象は悪かった。
    少年の実像に迫るようなリアリティーを感じなかったし、異常な事件を扱ってセンセーショナルな作品にするぜ、というあざとさすら覚えて、気に入らなかった。

    しかし、第四話の「流氷」の話まで読んで、感想が変わった。
    「子どもたちの犯罪」をテーマにしたこの漫画に流れている一貫した悲しみみたいなものに触れた気がした。
    それは、本当は別の未来があり得たかもしれないのに、様々な不運や愚かさから、自らその未来を手放してしまった子どもたちを思っての、悲しみではないかと感じた。

    作品は、そんな子どもたちを擁護するでも非難するでもなく、ただ、見つめている。
    そのスタンスは、嫌いではなかった。

    • 9
  9. 評価:4.000 4.0

    絶妙な「ずれ」

    「青野くん」から飛んできた。

    荒削りではあるけれど、この作者の才能は、はっきり表れていると思う。
    それは、ひとつには、「ずれた」人間を描く巧みさ、ではなかろうか。
    「ぶっ飛んだ」漫画のキャラクター、ではない。
    その「ずれ」は、もっと些細で、微妙なものだ。

    誰かの人格について、あるいは誰かと誰かの関係性について、「何かおかしい」と思うけれど、そのおかしさを、上手く指摘できない、というような、ずれ。
    それを繊細に描くことは、「イカれた」キャラクターを創作するよりも、ずっとさじ加減が難しい気がする。
    そういう、才能なのではないか、と。

    その「ずれ」は、絶妙すぎて、リアルすぎて、はっとするし、ちょっと怖い。
    しかし、そのような「ずれ」は、ある意味では、私たちの誰もが持ち得るものでもあるのだ、と思う。

    素晴らしいのは、そういう「ずれた」人々に対して、作者が漫画の「ネタ」として扱うのではなく、確かな愛情をもって表現しようとしていることだ。
    みんな、どこか、変。
    でも、見方によっては、私たちは皆、そうだ。
    だから、作者の「ずれた」人々への愛情というのは、ほとんど、人間を描くことに対する愛情と、等しいのではないか。
    そうでなければ、こんな漫画は描けないと思う。

    • 19
  10. 評価:5.000 5.0

    胸が壊れそう

    どうしようもなく心を揺さぶられた。
    涙は出なかった。
    ただ、心が痛かった。

    こういう作品だと知っていて読んだ。
    だから、こんなことを言う資格はないのだけれど、「こういう漫画が本当に必要なのか」という考えがよぎってしまった。
    わかっていたくせに。
    作者に申し訳ない。

    もう二度と読まないかもしれない。
    もう一度読んでしまうかもしれない。
    ただ、いずれにせよ、これほど深く感情を切り裂かれた漫画は、私にはあまりない。

    • 17
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