rokaさんの投稿一覧

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341 - 350件目/全509件
  1. 評価:4.000 4.0

    現代版・乱歩

    江戸川乱歩という作家は、確かに少年少女向けの探偵小説を書いたし、私も子どもの頃、それで乱歩を知った。
    だが、本質的には、非常に倒錯的で妖艶で淫靡な、「少年少女お断り」的な作品こそが、乱歩の真骨頂だったのだろうと思う。
    そういう乱歩の作品の空気感を、最も強烈に具現化したのは、別の漫画だが、「パノラマ島綺譚」ではないかと思う。

    「パノラマ島綺譚」が、乱歩の作品をそのまま漫画に「再現」したものだとすれば、この「孤島の鬼」は、乱歩の作品を現代的な漫画の文脈の中で「再構築」したものだ、という印象を受けた。

    そのどちらが優れているのかは私にはわからないし、そこに優劣はないのかもしれない。
    ただ、個人的な好みの問題としては、「パノラマ島綺譚」に軍配を上げたくなった。

    • 10
  2. 評価:4.000 4.0

    可愛くて不穏

    少女漫画をほとんど読まない、心の汚れた私は、少女漫画のキャラクターに対しては「いや、そんな奴おらんがな」という無粋な感想を抱きがちで、この漫画の主人公の女の子に対しても、それは同様だったのだけれど、漫画のキャラクターとしては非常に丁寧に描き込まれている気がして、比較的すっと受け入れることが出来た。

    作品としては結構異色で、微笑ましい可愛さの中に、不意に、ミステリ的というか、サスペンス的というか、何とも不穏な空気が漂い始める。
    この奇妙なアンバランスがなかなか魅力的で、不穏が大好きな心の汚れた私は、この先その不穏がどう炸裂するのか、楽しみである。

    • 3
  3. 評価:4.000 4.0

    死者を抱えて

    子どもの頃、従姉の家に大量にあった、今はなきホラー漫画雑誌で読んだ。
    当時、私は何となく、この漫画が苦手だった。
    この漫画の持つ、何となくもの悲しい空気が、ホラーとは別の意味合いで、怖かったのだと思う。

    大人になって読み返してみて、この漫画で描かれている悲しみというのは、死者を抱えて生きることの悲しみではないか、と思った。
    そして、その悲しみは、この漫画の主人公のように、霊を見ることの出来る人間だけが背負う悲しみではない。
    私たちの誰しもが、いずれは、死者を抱えて生きるしかないからだ。
    そういう意味では、特殊な能力を持つ人間を主人公にしながら、とても普遍的なことを描いた漫画である、と言えるかもしれない。

    幼い私には、いつかは自分も死者を抱えて生きてゆかなくてはならないのだ、という真実は、いささか重すぎたのかもしれない。

    • 6
  4. 評価:2.000 2.0

    設定の面白さ、底の浅さ

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    一言で表すなら、「もったいない」漫画だと思った。

    「消したい感情を消せる」能力、という設定は面白いと思った。
    ネガティブな感情、例えば恐怖だとか怒りだとか嫉妬だとか、そんなもの、感じている最中は誰だっていい気はしない。
    だが、ネガティブな感情やコンプレックスが人間のモチベーションになり得るのはよくある話だ。
    だいたい、負の感情だって欠くことの出来ない私たちの一部なのであって、その一部分だけを都合よく消去しようとすれば、人間はあっさり破綻するだろう。
    そのあたりを、どう広げて、掘り下げて、ストーリーに仕立てるのか、というのが、私のこの漫画に対する期待だった。

    しかし、まあーその掘り下げが浅いの何の。
    「恐怖を失ったら、車に轢かれた」
    「怒りを失ったら、にやにやした何か気持ち悪い人になった」
    「嫉妬を失ったら、アイドルをやる気がなくなった挙げ句、狂信的なファンにバットで殴られた」
    おいおい。
    いくら何でも浅すぎる。

    余談だか、昔ジャンプに「マインドアサシン」という漫画があった。
    主人公は医者で、相手が「消したい記憶」を消せる、という能力を持つ。
    設定がちょっと似ているが、はっきり言って、「マインドアサシン」の方が百倍面白いので、興味のある方は、是非どうぞ。

    • 80
  5. 評価:4.000 4.0

    法医学と哲学

    法医学、という分野に何の知識もなかったので、新鮮に楽しめた。
    いや、むしろ、法医学に何の知識もなかった「けれど」楽しめた、ということに価値があるのかもしれない。

    一話のエピソードは短めで、比較的ライトなミステリ調であり、いい意味であまり頭を悩ませずに、サクサク読める。

    スーパー法医学者の桐山ユキは、冷たいようだが一本筋は通っていて、強い価値観というか、確固とした職業観念に基づいて生きていることを感じさせるキャラクターであり、なかなか魅力的だった。
    「死んだら一人だよ。一人ずつ冷たい解剖台の上に寝かされる」
    という台詞には、彼女の哲学が垣間見えたような気がして、結構グッときた。

    • 2
  6. 評価:2.000 2.0

    フィクションのキャパ

    殺_人オークションサイトのアイデア自体は面白いと思った。
    競り落とされるのはあくまで殺_人の「方法」であって、殺_人を行うかどうかをオークションの参加者が決定するわけではないから、上手い具合に罪悪感が軽減され…ということなのだろうが、そのあたりの掘り下げは浅く、単にアイデアを放り出した感が強い。
    しかしまあ、新しいには新しく、「殺害方法を選べる、というだけの権利に億単位の金を払う人間がいるわけねえだろ」というツッコミは、ひとまず飲み込んだ。

    しかし、ストーリーの整合性のなさはひどいもので、特に終盤の展開は必然性もクソもない、典型的な「どんでん返しのためのどんでん返し」の羅列であり、悲惨なほどである。
    こうなると、先にこらえたツッコミが復活して、細かいことにも腹が立ってきた。
    映画「セブン」や、別の漫画「ミュージアム」をかなり参考にしているはずだが、そのことにも腹が立ってきた。

    根本も末端も破綻しすぎている。
    いくらフィクションとはいえ、これを許容できるほどのキャパは、私にはない。

    • 2
  7. 評価:4.000 4.0

    その罪が愛ならば

    表題作「月光」と「LOVER SOUL」の二本立て。

    「よろこびのうた」を読んだ後、本作を読んだ。
    「よろこびのうた」では、認知症、老老介護、児童虐待、といった現代の問題が題材だったが、本作では監_禁、殺_人、そして即身仏である。
    やはり、ポップな絵柄からは想像しにくい、ヘビーなモチーフを描いている。

    共通するテーマは「罪」ではないかと思った。

    「よろこびのうた」も「月光」も「LOVER SOUL」も、登場人物たちは皆、罪に手を染める。
    それは、現代の日本の法律の中では確かに「罪」なのだけれど、読む人がその罪を簡単に否定できないような世界を、この作者は漫画の中に構築する。
    その罪が、優しさであるとき。
    その罪が、慈しみであるとき。
    その罪が、使命であるとき。
    そして、その罪が、愛であるとき。
    私たちはそれを、どう感じ、どう受け止めるのか。
    そんなことを、ずしりと重く、それでいてポップに、読者に提示するこの作者が私は好きだし、今後どんな作品を届けてくれるのか、とても楽しみである。

    • 7
  8. 評価:5.000 5.0

    これが愛じゃなくて、何なのだ

    ネタバレ レビューを表示する

    実際の「福井火葬場心中事件」を基にした、いい意味で、極めて現代的な漫画。
    心が震える傑作である。

    認知症、老老介護、児童虐待、という現代社会のヘビーな諸問題を題材にしており、ある意味では悲壮な物語であるけれど、シンプルでポップな絵柄が、絶妙なバランスを生んでいる。
    これは、漫画だから出来る素晴らしい表現のひとつだと思う。

    興味深かったのは、この漫画で描かれる、日本の古い共同体の姿である。
    閉鎖的な限界集落で、八つ墓村的というか、今の時代、こんな共同体に魅力を感じる人間はまずいないし、私自身、否定的なイメージをずっと持っていた。
    しかし、主人公の妻が犯した罪を、地域の住民皆が協力して隠し通そうとする姿には、胸が熱くなった。
    悪く言えば、そういう隠蔽体質というのは、日本の古い共同体のネガティブな側面そのものなのだけれど、それを真逆から描いてみせたような抜群の切り返しには、思わず唸った。

    生き方を選ぶということは、ある意味で、死に方を選ぶことと等価であると私は思う。
    これは、老夫婦が死に方を選択する物語であり、そして、究極のラブストーリーでもある。
    結末は、悲しくて悲しくて、でも、これ以外もこれ以上もきっとないんだ、と思って、涙が溢れた。
    だって、これが愛じゃなくて、何なのだ。

    • 13
  9. 評価:5.000 5.0

    妖怪と現代

    動物園のように妖怪を展示する「妖怪園」を舞台にしたコメディ。

    私のような妖怪オタクには素晴らしい拾い物だった。
    妖怪園、行きたい。
    マジで行きたい。

    かつて、水木しげるが「妖怪保護区のようなものを作りたい」と話していた。
    時代の変化とともに妖怪は絶滅の危機に瀕しており、保護する必要がある、というのが水木しげるの主張だった。
    冗談のように聞こえるが、マジな主張だったのではないかと私は思う。
    そして、動物園の役割が、時代とともに、単なる「見世物」ではなく「保護区」も兼ねるようになってきた(パンダなんかはその典型だろう)みたいに、この漫画の妖怪園も、そんな保護区として感じられ、心が温まった。

    基本的にはコメディで、それぞれの妖怪にからめた時事ネタの使い方が、実に上手い。
    爆笑、というより、微笑みがいっぱい、というタイプのコメディである。

    時代が変われば、人も変わる。
    妖怪も変わる。
    水木しげるが言ったように、現代の夜は明るくなりすぎたし、妖怪たちはもう、江戸時代のような姿では、私たちの前に現れてはくれないだろう。
    それでも、妖怪という素敵な存在は、その姿を自在に変えながら、この国で、ずっと生き残っていてほしい。
    私はそう思うから、その生き残り方のひとつの形を、この漫画の中に見たような気がして、何だか感動してしまった。

    • 30
  10. 評価:3.000 3.0

    比較の問題として

    京極夏彦の原作の雰囲気をなかなか丁寧に表現しているとは感じたのだが、残念ながら、この漫画の直前に読んだ「鉄鼠の檻」(作画は別の作者)が凄すぎた。

    短編と長編の違いもあるから、単純な比較はフェアではないけれど、それにしても、原作の空気の再現度、登場人物の造形の巧みさ、世界観の厚み、表現のインパクト、どれをとっても「鉄鼠」が圧倒的であり、本作は完全に霞んでしまった。

    そういうことで、評価は厳しめになってしまったが、決してつまらない漫画ではなかった。

    • 2

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