rokaさんの投稿一覧

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341 - 350件目/全506件
  1. 評価:2.000 2.0

    設定の面白さ、底の浅さ

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    一言で表すなら、「もったいない」漫画だと思った。

    「消したい感情を消せる」能力、という設定は面白いと思った。
    ネガティブな感情、例えば恐怖だとか怒りだとか嫉妬だとか、そんなもの、感じている最中は誰だっていい気はしない。
    だが、ネガティブな感情やコンプレックスが人間のモチベーションになり得るのはよくある話だ。
    だいたい、負の感情だって欠くことの出来ない私たちの一部なのであって、その一部分だけを都合よく消去しようとすれば、人間はあっさり破綻するだろう。
    そのあたりを、どう広げて、掘り下げて、ストーリーに仕立てるのか、というのが、私のこの漫画に対する期待だった。

    しかし、まあーその掘り下げが浅いの何の。
    「恐怖を失ったら、車に轢かれた」
    「怒りを失ったら、にやにやした何か気持ち悪い人になった」
    「嫉妬を失ったら、アイドルをやる気がなくなった挙げ句、狂信的なファンにバットで殴られた」
    おいおい。
    いくら何でも浅すぎる。

    余談だか、昔ジャンプに「マインドアサシン」という漫画があった。
    主人公は医者で、相手が「消したい記憶」を消せる、という能力を持つ。
    設定がちょっと似ているが、はっきり言って、「マインドアサシン」の方が百倍面白いので、興味のある方は、是非どうぞ。

    • 80
  2. 評価:4.000 4.0

    法医学と哲学

    法医学、という分野に何の知識もなかったので、新鮮に楽しめた。
    いや、むしろ、法医学に何の知識もなかった「けれど」楽しめた、ということに価値があるのかもしれない。

    一話のエピソードは短めで、比較的ライトなミステリ調であり、いい意味であまり頭を悩ませずに、サクサク読める。

    スーパー法医学者の桐山ユキは、冷たいようだが一本筋は通っていて、強い価値観というか、確固とした職業観念に基づいて生きていることを感じさせるキャラクターであり、なかなか魅力的だった。
    「死んだら一人だよ。一人ずつ冷たい解剖台の上に寝かされる」
    という台詞には、彼女の哲学が垣間見えたような気がして、結構グッときた。

    • 2
  3. 評価:2.000 2.0

    フィクションのキャパ

    殺_人オークションサイトのアイデア自体は面白いと思った。
    競り落とされるのはあくまで殺_人の「方法」であって、殺_人を行うかどうかをオークションの参加者が決定するわけではないから、上手い具合に罪悪感が軽減され…ということなのだろうが、そのあたりの掘り下げは浅く、単にアイデアを放り出した感が強い。
    しかしまあ、新しいには新しく、「殺害方法を選べる、というだけの権利に億単位の金を払う人間がいるわけねえだろ」というツッコミは、ひとまず飲み込んだ。

    しかし、ストーリーの整合性のなさはひどいもので、特に終盤の展開は必然性もクソもない、典型的な「どんでん返しのためのどんでん返し」の羅列であり、悲惨なほどである。
    こうなると、先にこらえたツッコミが復活して、細かいことにも腹が立ってきた。
    映画「セブン」や、別の漫画「ミュージアム」をかなり参考にしているはずだが、そのことにも腹が立ってきた。

    根本も末端も破綻しすぎている。
    いくらフィクションとはいえ、これを許容できるほどのキャパは、私にはない。

    • 2
  4. 評価:4.000 4.0

    その罪が愛ならば

    表題作「月光」と「LOVER SOUL」の二本立て。

    「よろこびのうた」を読んだ後、本作を読んだ。
    「よろこびのうた」では、認知症、老老介護、児童虐待、といった現代の問題が題材だったが、本作では監_禁、殺_人、そして即身仏である。
    やはり、ポップな絵柄からは想像しにくい、ヘビーなモチーフを描いている。

    共通するテーマは「罪」ではないかと思った。

    「よろこびのうた」も「月光」も「LOVER SOUL」も、登場人物たちは皆、罪に手を染める。
    それは、現代の日本の法律の中では確かに「罪」なのだけれど、読む人がその罪を簡単に否定できないような世界を、この作者は漫画の中に構築する。
    その罪が、優しさであるとき。
    その罪が、慈しみであるとき。
    その罪が、使命であるとき。
    そして、その罪が、愛であるとき。
    私たちはそれを、どう感じ、どう受け止めるのか。
    そんなことを、ずしりと重く、それでいてポップに、読者に提示するこの作者が私は好きだし、今後どんな作品を届けてくれるのか、とても楽しみである。

    • 7
  5. 評価:5.000 5.0

    これが愛じゃなくて、何なのだ

    ネタバレ レビューを表示する

    実際の「福井火葬場心中事件」を基にした、いい意味で、極めて現代的な漫画。
    心が震える傑作である。

    認知症、老老介護、児童虐待、という現代社会のヘビーな諸問題を題材にしており、ある意味では悲壮な物語であるけれど、シンプルでポップな絵柄が、絶妙なバランスを生んでいる。
    これは、漫画だから出来る素晴らしい表現のひとつだと思う。

    興味深かったのは、この漫画で描かれる、日本の古い共同体の姿である。
    閉鎖的な限界集落で、八つ墓村的というか、今の時代、こんな共同体に魅力を感じる人間はまずいないし、私自身、否定的なイメージをずっと持っていた。
    しかし、主人公の妻が犯した罪を、地域の住民皆が協力して隠し通そうとする姿には、胸が熱くなった。
    悪く言えば、そういう隠蔽体質というのは、日本の古い共同体のネガティブな側面そのものなのだけれど、それを真逆から描いてみせたような抜群の切り返しには、思わず唸った。

    生き方を選ぶということは、ある意味で、死に方を選ぶことと等価であると私は思う。
    これは、老夫婦が死に方を選択する物語であり、そして、究極のラブストーリーでもある。
    結末は、悲しくて悲しくて、でも、これ以外もこれ以上もきっとないんだ、と思って、涙が溢れた。
    だって、これが愛じゃなくて、何なのだ。

    • 13
  6. 評価:5.000 5.0

    妖怪と現代

    動物園のように妖怪を展示する「妖怪園」を舞台にしたコメディ。

    私のような妖怪オタクには素晴らしい拾い物だった。
    妖怪園、行きたい。
    マジで行きたい。

    かつて、水木しげるが「妖怪保護区のようなものを作りたい」と話していた。
    時代の変化とともに妖怪は絶滅の危機に瀕しており、保護する必要がある、というのが水木しげるの主張だった。
    冗談のように聞こえるが、マジな主張だったのではないかと私は思う。
    そして、動物園の役割が、時代とともに、単なる「見世物」ではなく「保護区」も兼ねるようになってきた(パンダなんかはその典型だろう)みたいに、この漫画の妖怪園も、そんな保護区として感じられ、心が温まった。

    基本的にはコメディで、それぞれの妖怪にからめた時事ネタの使い方が、実に上手い。
    爆笑、というより、微笑みがいっぱい、というタイプのコメディである。

    時代が変われば、人も変わる。
    妖怪も変わる。
    水木しげるが言ったように、現代の夜は明るくなりすぎたし、妖怪たちはもう、江戸時代のような姿では、私たちの前に現れてはくれないだろう。
    それでも、妖怪という素敵な存在は、その姿を自在に変えながら、この国で、ずっと生き残っていてほしい。
    私はそう思うから、その生き残り方のひとつの形を、この漫画の中に見たような気がして、何だか感動してしまった。

    • 29
  7. 評価:3.000 3.0

    比較の問題として

    京極夏彦の原作の雰囲気をなかなか丁寧に表現しているとは感じたのだが、残念ながら、この漫画の直前に読んだ「鉄鼠の檻」(作画は別の作者)が凄すぎた。

    短編と長編の違いもあるから、単純な比較はフェアではないけれど、それにしても、原作の空気の再現度、登場人物の造形の巧みさ、世界観の厚み、表現のインパクト、どれをとっても「鉄鼠」が圧倒的であり、本作は完全に霞んでしまった。

    そういうことで、評価は厳しめになってしまったが、決してつまらない漫画ではなかった。

    • 2
  8. 評価:4.000 4.0

    奥様は怨霊

    どういう経緯かはわからないが、妻が怨霊である、という夫婦のホラー・コメディ。

    ホラー映画の典型みたいな描写や展開を逆手にとって、巧みにギャグ化している。
    怨霊である妻の行動は、「幽霊が頭につける三角のやつを洗濯物として干す」「夫が忘れた弁当を届けに会社のトイレの鏡から現れる」など、かなりキレがあり、細かい着眼点が面白い。

    B級ホラー映画がしばしば「こんなのギャグじゃねえか」と感じられるように、もともと、ホラーとギャグは紙一重みたいなところがある。
    そういうホラーの特性を上手く利用した、なかなか斬新で、楽しい漫画であった。

    • 2
  9. 評価:3.000 3.0

    普通に奇妙

    「世にも奇妙な物語」的な連作短編。
    一話完結(サイトだと二話)で、私はこういうサクサク読める話は好きである。

    ただ、いたって、普通。
    普通の、奇妙な物語。
    「世にも奇妙な物語っぽい漫画だよ」と紹介されてあなたが想像するとおりの漫画だと思って間違いない。
    まあ、こちらとしてもそれ以上の何かを期待して読んだわけではないから別にいいのだけれど、本当に、普通。
    よく言えば安心感があるし、悪く言えば驚きがない。
    もう一度言うが、普通。
    そんな本作に捧げる星は、三つ。

    • 2
  10. 評価:5.000 5.0

    原作への愛情

    今まで、「原作あり」の漫画には、ほとんど星五つをつけてこなかった。
    当たり前だが、漫画は、絵と、話だ。
    その「話」の部分がオリジナルでない作品に対して、最上級の評価をするというのは、正直どうなんだ、と思っていたからである。
    しかし、これは文句なしに例外だ。
    素晴らしい。

    京極堂シリーズの小説は、「姑獲鳥の夏」「魍魎の匣」「狂骨の夢」までは学生時代に読んだけれど、それ以降は、何しろ長すぎて、私の読むスタミナが落ちたこともあり、完全に脱落していた。
    未読の「鉄鼠」を漫画でクリアしてしまおう、という魂胆で読んだのだが、大当たりだった。
    小説版が喚起するイメージとあまりにぴったり合致したキャラクターたちがそこにいて、京極夏彦の小説を漫画化するならこれ以上は望めないだろう、という再現度の高い世界観がそこにはあった。

    それにしても、こんなの、よく漫画にしようと思ったな。
    「姑獲鳥」くらいならともかく、この「鉄鼠」は、難解な禅の世界、複雑極まりない仏教の宗派とその歴史がベースにあり、とても漫画として成立させられそうなストーリーではない。
    だいたい、次から次へ出てくる大量の坊主たちを、わかりやすく完璧に描き分けるだけでも大したものだ。

    正直、「原作あり」の漫画の中には、売れる題材を「利用」しているだけだわな、と感じられてしまうものもある。
    もちろん、商売だから、そういう面があって然るべきなのだけれど、原作のファンとしては、そんな思惑が透けて見えるような作品には、寂しさも感じる。
    だが、私が「鉄鼠」から感じたものは、全く違った。
    半端ではない原作への理解度の深さと、絶対にこの小説を再現してみせるのだという圧倒的な意志力が、紙面から立ち上っているようだった。

    この漫画を成立させたのは、当然、技術的な面もあるけれど、一番大きいのは、原作に対する漫画家の強烈な愛情、それ以外にはないと思う。
    その愛情の深さに、私は感動した。
    原作にとってこれほど幸福な漫画化の例を、私は他に知らない。

    • 17

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