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作品レビュー
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21 - 30件目/全107件

  1. 評価:5.000 5.0

    もう「殿堂入り」でいい

    学生時代はとても楽しく読んだし、今読んでも好きなエピソードはある。
    子どもでもついていける明るいトーンでありながら、時々、ギクッとするくらい人間のダークサイドや運命の残酷さに切り込んでくる、妙なバランス感覚が好きだ。
    「金田一少年」のように「復讐」に偏った犯人像ではなく、保身、金銭欲、誤解、奇妙なこだわりなど、動機が多岐にわたるのも見所がある。
    ときには「これ、コナン君だよな?」と思うような哀愁や切なさが犯人に滲む回があり、それが大好きだった。
    個人的には、「クモ屋敷」のエピソードがイチオシ。
    何より、殺/人事件という、一般に健全とは見なされがたいモチーフを、漫画の一ジャンルとして、あり得ないほどポップな地平に押し上げたその功績は、もう「殿堂入り」と言って然るべきではないだろうか。

    • 33
  2. 評価:5.000 5.0

    「お約束」の拒否

    読み始めると、止まらなかった。
    何ポイント献上したかわからん。
    私がオムニバスを好きなこともあるが、それにしても、毎回、見事な安定感、そしてテンポのよさ。

    何が凄いって、作品として、一貫して冷徹にルールを守っているところだ。
    主人公は依頼人の寿命と引き換えに呪殺を請け負う死神みたいな存在だが、あくまで漫画の主人公だ。
    だから普通は、もうちょっと融通が利く。
    つまり、ルールを破る。
    漫画の展開として、都合のいいことをやる。
    具体的に言えば、「いくら何でもこの人が死ぬのは可哀想だろ」という人は、殺さない、とか。
    言い方は悪いが、「死んでもいい」と読者が感じるようなキャラを、被害者に設定する、とか。
    一度は請けた依頼でも、それが依頼人にとってあまりに悲劇的な結末(例えば勘違いによる呪殺など)をもたらす場合には、それを教えてやってキャンセルさせてやる、とか。
    そういう展開は、基本的に、ない。
    そういう甘さが、この漫画にはない。

    物語としてサクッと感動を演出できるはずの「お約束」よりも、冷徹にルールを守ることを選んでいる。
    そのぶれない姿勢は、作品として、とても美しいと思った。

    • 32
  3. 評価:5.000 5.0

    ものすごく楽しくて、あり得ないほど美しい

    大人になってからこれほど漫画で笑ったことはなかったし、これほど新刊を待ち望んで日々を過ごしたこともなかった。
    本当に、素晴らしい作品だった。

    まず、「これ」を漫画にした才覚に脱帽する。
    基本的には二人の高校生が河原でだべっているだけという、「こんなの漫画になるのかよ」という題材だが、圧倒的な会話のセンスと、卓越した「間」の表現が、見事に作品を成立させている。
    読んでいるうちに、「こんな漫画ありかよ」という最初の感想は、「これは漫画だから出来たことなのかもしれない」という思いに変わった。
    そういう意味では、およそ漫画らしくない場所から始まって、実に漫画らしい地点に到達した、稀有な作品だと思う。

    私は、毎回げらげら笑いながら、この漫画が終わってしまうことを、どこかで恐れていた。
    青春時代を謳歌する若者が、心のどこかでは、いつかそれが終わることを恐れるみたいに。
    彼らが、「いつまでもこれが続くといいのにな」と思いながら、そして、本当はそれがあり得ないと知りながら、日々を生きるみたいに。

    私は、セトのことが、ウツミのことが、ただただ大好きで、彼らに会えなくなってしまうのが、たまらなく寂しかった。

    けれど、やはり、終わった。
    青春というひとつの時代にも、いつか終わりが来るように。
    ただ、その終わり方というのは、私のあらゆる想像を超えて、それまでこの漫画が積み上げてきたものをある意味で壮大に裏切りながら、これ以外ではきっと駄目だったんだ、と感じさせるような、ものすごく斬新で、あり得ないほど鮮烈なものだった。
    私は、これほど美しい漫画の終わらせ方を、ほとんど知らない。

    私の青春は遥か昔に終わり、この漫画もやはり終わり、けれど、ふと懐かしくなってページをめくれば、漫画の中で、セトとウツミは、いつまでも青春なのだった。
    だから、漫画というのは素晴らしくて、でも、そんなの、ちょっと、ずるいと思った。

    • 30
  4. 評価:5.000 5.0

    妖怪と現代

    動物園のように妖怪を展示する「妖怪園」を舞台にしたコメディ。

    私のような妖怪オタクには素晴らしい拾い物だった。
    妖怪園、行きたい。
    マジで行きたい。

    かつて、水木しげるが「妖怪保護区のようなものを作りたい」と話していた。
    時代の変化とともに妖怪は絶滅の危機に瀕しており、保護する必要がある、というのが水木しげるの主張だった。
    冗談のように聞こえるが、マジな主張だったのではないかと私は思う。
    そして、動物園の役割が、時代とともに、単なる「見世物」ではなく「保護区」も兼ねるようになってきた(パンダなんかはその典型だろう)みたいに、この漫画の妖怪園も、そんな保護区として感じられ、心が温まった。

    基本的にはコメディで、それぞれの妖怪にからめた時事ネタの使い方が、実に上手い。
    爆笑、というより、微笑みがいっぱい、というタイプのコメディである。

    時代が変われば、人も変わる。
    妖怪も変わる。
    水木しげるが言ったように、現代の夜は明るくなりすぎたし、妖怪たちはもう、江戸時代のような姿では、私たちの前に現れてはくれないだろう。
    それでも、妖怪という素敵な存在は、その姿を自在に変えながら、この国で、ずっと生き残っていてほしい。
    私はそう思うから、その生き残り方のひとつの形を、この漫画の中に見たような気がして、何だか感動してしまった。

    • 29
  5. 評価:5.000 5.0

    私の青春漫画

    私の青春漫画。
    ミステリ部分が単純に面白かったことはもちろんだが、だらしない金田一少年が不意に見せる、「妙に出来た人間」としての顔が好きだった。
    「異人館村」で犯人に放った絶叫、
    「飛騨からくり屋敷」のラスト、ある意味での「共犯者」への捨て台詞、
    「黒死蝶」で燃える館を見ての呟き、
    「雪影村」のスタンド・バイ・ミー的なモノローグ。
    嗚呼、思い出は尽きない。

    昔は、ドキドキしながら読んだ。
    今では、昔の友人に会うような、不思議なノスタルジーが込み上げる。

    • 27
  6. 評価:5.000 5.0

    パンドラの箱の底

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    (※レビュー訂正)

    大絶賛する気にはなれなかった。
    人に薦める気も起きなかった。
    ただ、心には、残った。

    私は本作を、基本的には「ドラえもん」へのアンチテーゼとして読んだ。
    タコピーのハッピー道具は主人公を何ひとつハッピーにせず、あろうことか「仲直りリボン」は首_吊りに使われ、「ハッピーカメラ」は撲殺の凶器になる。
    主人公の生活や、いじめっ子の家庭環境の描写も陰惨極まりなく、アンチテーゼを超えて「悪意あるパロディ」と言った方がしっくりくるほどだ。
    主人公の名前「しずか」だぞ、おいおい。

    ひとつは、時代かな、と思う。
    いささかネガティブな物言いになるが、「こんなこといいな、できたらいいな」の時代は、終わったのかもしれない。
    よくも悪くも、私たちは知ってしまった。
    人間が便利な道具でハッピーになれるわけではないことを。

    21世紀になってしばらく経って、人間は結構な「こんなこと」が出来るようになったのに、別に対して幸せになれてないじゃん、と。
    残酷ないじめも児童虐待も、戦争と疫病すら、なくなってないじゃん、と。

    主人公は、ハッピー道具に見向きもしない。
    単に「魔法」の存在を信じていないのではない。
    彼女がその身を浸しているのは、仮に魔法があるにせよ、それが自分を幸せにしてくれることはない、という諦観だ。
    彼女の姿は、テクノロジーがもたらすキラキラの未来からはとっくに拒絶された私たちの姿、そのものなのだと思う。

    そしていつの時代も、一番傷ついて生きるのは子どもたちだ。
    子どもには傷つく権利があり、その能力もあるからだ。

    それはそうなんだけど。

    わざわざ作品にする必要、あるのか?
    ずっとそう思いながら、読み続けた。

    でも、最後まで読んで、印象が変わった。
    これはもしかすると、現代を生きる子どもたちへの応援歌なんじゃないか、と。

    現実はこんなに上手くはいかない。
    その批判はわかる。
    「対話」なんてものに大した力はない。
    それもわかる。
    私もそう思う。

    しかし、かつてドラえもんが提示した希望を完全に否定しながらも、本作はきっと、希望を持つこと自体は、捨てられなかったのだろう。
    ドラえもんの否定というパンドラの箱の底に残っていたのが、「伝え合う以外にない」ということだったのだろう。
    その希望の是非はともかく、その希望の見出し方は、私は嫌いではなかった。

    • 25
  7. 評価:5.000 5.0

    憂鬱なるサバイバー

    事故や災害だけではなく、虐待などの過酷な経験を生き延びた人のことも「サバイバー」と呼ぶそうだ。
    本作の主人公である雪はそんなサバイバーであり、彼女代行のバイトで収入を得ている。

    ときどき思うのだが、単純明快な正義や勇気や夢や希望に生きる主人公がヒーローやヒロインになるには、現代はいささか複雑になりすぎたような気がする。
    そして、私たちはいささか「知りすぎた」ような気がする。
    それは例えば、正義の名の下に行使される独善的な暴力や、叶えられた一握りの夢の輝きに隠れて散ってゆく者たちの末路や、希望という仮面を被った悪辣なビジネスや、そういう何やかやだ。
    そういう有象無象の悪意や欺瞞に対して、私たちは賢くなりすぎたし、疑うことを覚えすぎた。

    そんな時代にあって、いったいどんな人間が、フィクションのヒーロー/ヒロインになり得るのか。
    その答えのひとつが、意志と哲学ではないかと私は思う。
    世間の常識や道徳や慣習とは関係なく、自分の明確なルールがあり、何があろうとそれを守る。
    「闇金ウシジマ君」はそういう種類の現代のヒーローだと思うし、全く別の漫画だけれど、私には、本作の雪とウシジマ君がだぶって見えた。
    そういう意味で、彼女は、まさに現代漫画のヒロインだと思う。

    特に最初のエピソードには、彼女の生き方が凝縮されていて、その強さと悲しさに、激しく胸を打たれた。

    雪は、夢も希望も信じていない。
    そして何より、愛を信じていない。
    彼女が本当に信じているのは、金だけだ。

    しかし、こういう言い方は本当に傲慢で嫌なのだけれど、それは、間違いだ、と私は思う。

    私がそんなふうに思えるのは、きっと、雪のようなサバイバーになる必要がない、甘く幸運な人生を歩んでこられたからなのだろう。
    まあ、それは認める。
    認めるが、思うのだ。
    全てを疑っても、愛だと信じたものが愛ではなかった、という経験を何度重ねても、愛が消える瞬間をこの目で見ても、それでも、愛だけは疑っちゃいけない、と。
    それが、私の哲学だ。

    生き延びることに、価値はある。
    でも、生き延びた先にあったものが金だけだったなら、「生き延びてよかった」なんて、思えるだろうか。

    だから、私はいつか、雪が愛を信じられる日が来ることを願って、この漫画を読み続ける。
    強く、冷たい、この憂鬱なるサバイバーが、いつの日か、愛を知ることを夢見て。

    • 24
  8. 評価:5.000 5.0

    全ての先達を過去にする

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    凄すぎる。
    どんな賛辞も追いつかないくらい、凄すぎる。

    まず、冒頭のシーンから思った。
    「これ、映画だ」と。
    カット(漫画で言えばコマ、ということになるが)のひとつひとつが端正で美しく、それにいたく感心した。
    物語の内容以前にこのカットの飛び抜けた技術が、作品を根本で支えている。

    ストーリーの骨子は、タイムリープと「寄生獣」的な入れ替わり、いずれも決して目新しいものではないのだが、圧倒的な完成度が、全ての類似作品を単なる過去にしている。
    「ループものは腐るほどあったかもしれないけど、これより面白いループもの、あった?」とでも言わんばかりの勢いである。
    こちらとしては、「いいえ、ありませんでした、すみませんでした!」と言うしかない。

    とにかく巧妙に計算され尽くした作品で、ループの設定ひとつとっても、抜群に上手い。
    「ループもの」の弱点のひとつは、主人公(たち)が死んでも「どうせループしたら生き返りますんやろ」という緊張感の欠如なのだが、「ループして戻る地点の時間が徐々に遅くなる」というシンプルな仕掛けで、ループものの宿命を完璧に回避しつつ、見事な緊迫感を生んでいる。
    こんなのは一例に過ぎず、全編に渡って、魅力的なギミックが満ち溢れている。

    ストーリーの作り込みの緻密さも尋常ではなく、マジで作者の頭の中どうなってんだ、というレベルである。
    ただ、謎があまりに重層的であるが故に、読者としては「わからない」という状態がかなり長く続く。
    作品に隠された真意やメッセージがわからない、ということではなく、真相や黒幕がわからない、ということですらなく、ただただ、今何が起きているのかが、圧倒的にわからない。
    何が凄いって、「わからないのに滅法面白い」ということだ。
    張り巡らされた膨大な伏線を綺麗に回収し、ちゃんと「わかる」ところに着地させるのも大したものだが、むしろ「わからない」道中において圧倒的に楽しませてしまう技量、力量に舌を巻いた。

    ストーリー的にも、画としても、毎回毎回見せ場がある、というか後半なんてもう、見せ場しかない。

    これ、連載で読まなくてよかったー。
    一週間待ちきれなくて、多大なストレスになっていたと思う。

    いやー参った。
    本当に参った。
    こんなに凄い漫画、そうあるものではない。

    • 23
  9. 評価:5.000 5.0

    素晴らしきジェットコースター・コミック

    ヤバい。
    面白すぎてヤバい。
    本サイトでは更新が遅いので、別のサイトで最新話まで一気に読んだ。

    現実的なミステリとして読めば、多少の粗はあるものの、そんなのどうでもいいと感じさせてくれる吸引力抜群のストーリー、そして、ハイレベルな画力。
    主人公含めて、登場人物が誰一人信用できない、という圧倒的な緊張感。

    ただ、本作の一番のアイデンティティーは、その異様なまでのテンポのよさではないかと思う。
    とにかく展開がすこぶる早い。
    単行本の単位で言うと2巻分しか読んでいないのに、体感的には、3倍くらいの量を読んだような満足感があった。
    毎回のようにサプライズがあり、映画では「ジェットコースター・ムービー」なんていう表現があるが、本作はまさに「ジェットコースター・コミック」である。

    これは実際、非常に微妙なところで、「展開が早すぎる」というのは、作品によっては傷になる。
    (事実、他作品に対して、私はそういうレビューを書いたこともある。)
    また、これが仮に小説であったなら、私は「おいおい、早すぎるだろ」と感じたとも思う。
    つまり本作のスピード感というのは、「漫画だからギリギリセーフ」という危ういバランスの上に成り立っているわけで、そのあたりのさじ加減が絶妙である。

    じっくりと丹念に積み上げる、というよりは、矢継ぎ早にパンチを繰り出してくるようなタイプのサスペンスであり、この魅力的なスピード感は、突出している。
    サスペンスフルなエンターテイメントのお手本のような作品であり、もう、何も言うことはない。
    ただただ、早く続きが読みたい。

    • 23
  10. 評価:5.000 5.0

    容赦ない

    これを読んで、同じ作者の「ミスミソウ」という作品について、何か納得がいった。
    この作者は、恐怖や絶望を表現することに容赦がない。
    「そこまでやるか」ということを、平気でやる。
    その思いきりのよさが怖すぎる。
    加えて、唐突なホラー描写の破壊力も、漫画として素晴らしい。

    しかし、この作品の最大のアイデンティティーは、そういう正統なホラーの枠組みを根底からぶっ壊すほどのパワーで躍動する、○○の存在感だろう。
    完全なバランスブレイカーなのに、あり得ないくらいに魅力的だった。

    絶望的なホラーでありながら、あまりにもぶっ飛んでいる、日本版&漫画版「エクソシスト」とでも呼びたくなる傑作。

    • 23
全ての内容:★★★★★ 21 - 30件目/全107件

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