3.0
腑に落ちないところも
原作は、新書。
少年院に収監される少年たちの中に軽度の知的障害を持つ者が多いことに着目して、認知能力を改善するためのプログラムの必要性を論じた本であるらしい。
(申し訳ないが、未読。)
作品の性質上、当然と言えば当然だが、少年院の少年(女性も含む)たちの記録が、淡々と綴られる。
だが、退屈という印象はなく、不思議と読ませる。
このあたりは、この漫画家の特質かもしれない。
決して「上手い」絵ではないが、なかなか豊かな表現をする。
また、この漫画の作者は、他の作品も含めて、エンターテイメントのための過剰な演出はしない、と心に決めているような印象を受ける。
賛否あるだろうが、私は、その姿勢を支持している。
「現場」をリアルに描こう、という志は、この人のどの作品でも徹底されており、大したものだと思う。
気になった点は、二つ。
ただし、どちらも原作段階の問題であり、漫画の問題ではないのだが。
ひとつは、タイトル。
個人的には、好きになれない。
新書を売るためにインパクトのあるタイトルを、というのはわかるし、事実、それが成功して本は売れたわけだ。
しかし、穿った見方かもしれないが、「ケーキを3等分することも出来ないんでっせ、ヤバくない?」というような、少年たちの知能の異常性を見世物的に扱ったような印象を受けて、ちょっと、首を捻った。
作品の中身を見れば、全くそんなことはないのだけれど。
もうひとつは、「軽度知的障害」という設定だって、所詮は誰かが決めた恣意的なボーダーなんじゃねえの、ということだ。
少年犯罪と認知能力の間には相関性があり、認知能力の改善が非行の抑止になり得る、という原作の主張に基づいて、この漫画は描かれている。
しかし、その根本のところを、私はイマイチ信用できなかった。
それは事実であるかもしれないが、事実の一部でしかないと思うからだ。
例えば、少年犯罪と、残酷な描写のあるホラー映画の影響が結びつけられる、というのとそう変わらないレベルの、眉唾物の話だと言ったら、さすがに失礼だろうか。
こんな考えは希望がなさすぎるかもしれないが、ホラー映画を見て凶悪犯罪に走るような人間は、別にジブリを見たって同じだろ、と私は思う。
ちなみに私は、残酷な描写のあるホラー映画、大好きですけどね。
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ケーキの切れない非行少年たち