4.0
甘くて優しいどんでん返し
ある日、幼馴染みに「殺された」主人公が、幽霊となって幼馴染みの凶行を止めようとするのだが…というストーリー。
「犯人」は第一話からわかってしまっている(ように見える)わけで、読者の側としては、ミステリ部分の焦点を「なぜ」に合わせて読むわけだが、それを終盤に一気に覆す返し技は、なかなか上手に決まっていたと思う。
面白かったのは、それぞれのキャラクターが、登場したときとはずいぶん違う印象に変わっていく点だ。
それ自体は別に作品において普通のことだが、「登場人物全員」がそうである、という漫画は、なかなかないように思う。
そう決めて描かなければ、こうはならない。
登場人物全員に、裏がある。
しかし、その「裏」というのは、自分のダークサイドみたいなものを隠している、というよりは、誰しもが表に出せない弱さや強さを抱いて生きている、という提示であって、露悪的ではなく、むしろ優しさを感じるものであった。
主要な登場人物たちは皆、誰かを傷つけた過去を悔い、再び誰かを傷つけてしまうことを恐れて生きている。
正直、このあたりの描き方は、ちょっとナイーブに過ぎるような気もした。
また、「佐原も実知も生きていた」「親の意向で死んだということにされていた」という展開には、さすがに「おいおい」と思ったし、いくら何でもハッピーエンドありきに過ぎるんじゃないか、という気もした。
最初に書いた終盤の展開も、サスペンスとしてスパッと切れ味のあるどんでん返しというよりは、甘くて優しいどんでん返しである。
ただ、そういう全て、登場人物に対する作者の愛情のように感じて、私は、好意的に受け止めたいと思った。
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おくることば