5.0
最後に愛が勝つために
私は、この作者の「親愛なるA嬢へのミステリー」が大好きで、正直、本作はそれには及ばないかと思った。
それにしても、素晴らしかった。
幼い頃に別れた兄への強烈な思慕を抱きながら生きる主人公。
いつしかバイト先の同僚と惹かれ合うが、彼は兄を殺した男で…というストーリー。
まず、物語の展開力と吸引力が素晴らしく、そのリズム、テンポ、緩急、起伏、濃淡、もう完璧という他にない。
一気に読む以外に選択肢がないくらい、圧倒的な筆力に魅せられる。
そして、描かれる愛の形、が素晴らしい。
「親愛なるA嬢へのミステリー」でも同じことを感じたが、この作者が綴る愛の形は、一筋縄ではいかない。
よく漫画の中にあるような、クリーンで、キュートで、煌めくだけの愛は、この作品にはない。
「愛に生きるのはそんなに甘くないぜ」と語るような作品だと思った。
愛は、とても強くて美しくて、でも、怖いものだ。
その強さと美しさゆえに、ときには排他的にも狂暴にもなれるからだ。
ちょっと差別的な言い方をするけれど、人生は少女漫画ではないから、ある日突然キラキラで永遠の愛が空から降ってくるわけじゃない。
「必ず最後に愛は勝つ」ほどイージーモードでもない。
それは約束された結末ではなくて、最後に愛が勝つためには、何かを捨てたり損なったりしながら、ときには醜悪にも残酷にもなれなくちゃいけない。
それをきちんと引き受ける作品の勇気と気高さに、私は泣いた。
この漫画の二人は、嘘も、秘密も、欺瞞も、障害となる者たちを容赦なく切り捨てる冷酷さも、過去を、下手したら現在すらも改竄してしまう罪深さも、そういう全てを背負いながら、全てを受け止めながら、そして何より、そういう全てを必死で許し合いながら、互いのことだけは失うまいと、懸命に生きようとしていた。
それがつまり、愛し合う、ということなんじゃないか。
私はそう思うから、この漫画の二人を、永遠に祝福する。
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8









私の正しいお兄ちゃん