5.0
静かで怖い「普通の」群像劇
以前、この作者の別の漫画を読んで、それはもう滅茶苦茶に非難するレビューを書いた。
が、本作は素晴らしかった。
ストーリーは、「消えたママ友」の周囲の人々(主にママ友三人)の視点で展開する。
私はママ友の世界からは縁遠い場所にいるが、一人一人の登場人物やその関係性、日常のリアリティーが半端ではなく、一気に引き込まれた。
また、三人の語りの視点の切り替えのタイミングとテンポのよさは絶妙で、一息に読まされてしまった。
これはもう、群像劇として一級品だと思う。
作品の雰囲気としては、日常の中にあるサスペンス、といった風情で、消えたママ友の謎を追う中で、ママ友、夫婦、嫁姑、それぞれの関係性における、秘密や暗部が少しずつ明らかになっていく。
その描き方も、やたらスキャンダラスに暴き立てるのではなく、人間の繋がりのもろさや、表面的な付き合いの虚しさを静かに綴るタッチで、好感が持てる。
誰もが「普通に」嘘や闇を抱えて、「普通に」生きている、その淡々とした提示が素晴らしい。
正直、こういう「雑な絵」の漫画は好みではないのだが、悲しく不穏でうすら寒い作品のトーンと、シンプルで呑気な絵柄は、いい意味でのミスマッチになっているような気もした。
特筆すべきはツバサ君の描き方で、大人の抱える悪意や歪みが「伝染」したかのようなその造形は、実に悪趣味で、怖い。
子どもについて、何かがおかしいのに誰もその破綻をつかめていないし止められない、それは、目を背けたくなるような冷たい現実だ。
特に、最終話でツバサ君が祖母と父親に放つ台詞は、いくぶん漫画的な寓意はあるにせよ、恐ろしく、素晴らしい。
- 20