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作品レビュー
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11 - 20件目/全144件

  1. 評価:4.000 4.0

    カルトを巡るあれこれ

    この世で最も嫌いなもののひとつがカルト宗教である。
    だからもう、主人公がそれに立ち向かうという設定だけで、私は全力で応援してしまう。
    妻をカルト教団から取り戻すなんてもう、感情移入の度合いが激しくなりすぎてヤバい。

    本作の主人公は、一見すると何かイマイチやる気のない感じが、逆にリアリティーがあってよかった。
    たぎるほどの正義感とか、燃え盛る妻への愛とか、そういうものをストレートには描いておらず、かなり抑制した描き方をしながら、その根っこには譲れないものがちゃんとあるのだ、ということが伝わる。
    私はそういう表現というのが好きだし、特に「大人」に向けての作品は、そうであるべきだとつくづく思う。

    カルト教団の造形も、まあ、いくぶん漫画的な誇張というか、「いくら何でもそりゃないだろ」というところはあるにせよ、その薄気味悪さ、躍動的な嫌悪感を撒き散らす様は、なかなか面白かった。

    余談だが、最近「カルト・オブ・ザ・ラム」という「カルト教団の教祖になる」というゲームをやって、これがたいそう面白かった。
    カルト宗教大嫌い、なのに、カルト教団の教祖になるゲームは嬉々として遊べる。
    人間の(私の)こういう柔軟性というかいい加減さというか、実に興味深いし、恐ろしい。
    「自分だけは大丈夫」なんて思わずに、肝に銘じて生きていかないとね。
    いや、マジな話。

    • 54
  2. 評価:4.000 4.0

    同じであり、別である

    私はもう、完全に「もうひとつのディアボロス」として読んだ。
    しかし同時に、「ディアボロス」とは明確に別の作品だ、とも感じながら読んだ。

    刑事モノであり、裏社会モノであり、バディーモノであり、という多くの作品の枠組みを「ディアボロス」から継承していながら、「同じじゃん」というネガティブな印象を抱かせないところは、なかなか大してものだと思う。
    このあたりは、「PO」といういささか風変わりな題材によるだけでなく、「ディアボロス」の二人とは全くことなる主人公二人のキャラクターをパリッと描けている部分が大きいかと思う。
    (まあ、主人公二人に関していうと、私は「ディアボロス」の二人の方が好きだったのだが。)

    これだけ技量のある作者だから、全然別の作品を描こうと思えば、きっと描けるのだろう。
    しかし、思うに、この作者には、明確に描きたい一貫したテーマがあるのではなかろうか。
    それは、いささか陳腐な言い方をすれば、人間の光と影、ということになるかと思う。
    それを描くのに、表社会と裏社会、というモチーフを「得意技」として用いる、ということなのではなかろうか。

    手を替え品を替え、何度も何度でも、同じものを描く。
    自分が本当に描きたいものを描き続ける。
    小説でも映画でも漫画でも、作品に対するそのようなアプローチというのが私は嫌いではないし、支持したいと思っている。

    • 8
  3. 評価:4.000 4.0

    ハードボイルドとエンターテイメント

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    「静かに暮らしたい」というタイトルを見て、ジョジョファンであれば真っ先に吉良吉影を思い浮かべるはずなのだが、私も例外ではなく、それで読み始めた。

    吉良吉影とは全く違うスズキさんの話だったが、面白かった。
    テンポよく、一気に読ませるのにちょうどいい尺の設定にも好感を持った。

    女性の殺し屋、それも、色仕掛けではなく、正統派の(?)殺し屋、という時点でリアリティーは著しく欠落の方向へ傾くが、そのハンデを覆すくらい、登場人物たちのキャラがパリッと立っていて、ある程度、一貫性がある。
    「ある程度」と書いたのは、冷徹な殺し屋であるはずのスズキさんが少年に肩入れする根拠みたいなものが、いささか薄弱に感じられたからである。
    個人的には、スズキさんにはもう少しドライでいてほしかった。
    ただまあ、冷血に徹しているつもりでも、不意に情が湧いてしまうのが、人間というものなのかもしれない。

    一番好きだったのは、スズキさんの過去のエピソードである。
    幼い頃の自分を助けてくれた殺し屋を殺し、あくまで血の通わない殺し屋として生きることを選んだスズキさんの姿には、胸をしめつけられた。
    だからこそ、少年に対する執着にもうひとつ、何か欲しかった、という思いは残るものの、トータルとしては、甘みと苦みを適度に抱き合わせた、ハードボイルドとエンターテイメントを同居させた、なかなかの良作だと思う。

    • 4
  4. 評価:4.000 4.0

    認めざるを得ない

    評価には迷ったし、決して好きな作品でもなかったのだが、どういったってこの突出した独自性は認めざるを得ない。

    今まで読んできた全ての漫画の中で最もレビューが困難な作品のひとつであり、また、これほどレビューとして何かを書くことが無意味な作品も珍しい。

    とにかく読んでもらうしかない、という種類の漫画。
    読んでどうなるかということについては、何の責任も持てないけれど。

    • 4
  5. 評価:4.000 4.0

    気合いの入ったバンパイア

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    まず、吸血描写が実におぞましく、美しい。
    もちろん、画力の高さもあるが、吸血鬼の漫画である以上、絶対にオリジナリティーのあるハイクオリティーな吸血描写を描いてやるんだ、という気合いを感じた。
    その心意気やよし。

    最初は、吸血が性_交のメタファーになっているのかと思ったが、それにこだわった話でもなく、少年バトル漫画のような趣もあり、ただ、そのいずれもいささか中途半端な印象は受けた。

    しかし、作品の骨子は多少ブレながらも、「永遠に生きる存在」としての吸血鬼の悲哀を描く、という点は一貫していた。

    ジャンルとして「吸血鬼の漫画」ということで考えれば、それに求められるものは十分に満たした作品だったのではないかと思う。

    • 7
  6. 評価:4.000 4.0

    妖怪への執着

    罪人が妖怪に見えてしまう、という特殊能力を持つ主人公が、奇怪な相談所の助手として働くことになる、という話。

    私は幼少期より重度の妖怪オタクなので、はっきり言って妖怪を扱った漫画には厳しい。
    そういうわけで、いきなりオタッキーで偏屈なことを言って申し訳ないが、妖怪という存在には本質的に「善悪」はないと思うので、「罪人」という人間サイドの勝手な物差しが妖怪という姿に具現化される、という設定には根本のところで違和感があった。

    おそらく京極夏彦の影響はあるのだろうが、はっきり言ってレベルが違う。

    ただ、妖怪に対する執着、何としてもそれを描くのだ、という熱意みたいなものは明確に伝わったし、方向性やスタンスは違えど、本作に妖怪に対する愛情があると認めることについては、やぶさかでない。

    • 6
  7. 評価:4.000 4.0

    ひっくり返すテンプレート

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    いわゆる「モラハラ夫」を扱った漫画が昨今、ちょっと辟易するほど多い。
    そういう作品を読んでいて、往々にして感じるのは、何か薄っぺらいなあ、ということだ。
    「またこのテンプレだよ」としょっちゅう思う。
    夫なり妻なりを漫画の悪役にしてつるし上げるのは好きにしたらいいけど、夫婦ってそんなに単純なものなのだろうか、と。

    本作はそういうテンプレートを綺麗にひっくり返した良作である。

    展開として、サプライズはあり得るけれど、それは「モラハラ夫と見せかけて、実は…」というサスペンス的な文脈での「どんでん返し」ではない。
    この漫画の描いたひとつの本質というのは多分、「家族の本当の姿なんて、そんなに単純じゃないのよ」ということなのではなかろうか。
    少なくとも、はたから傍観しているだけの他人が、その是非や幸・不幸を判断できるようなものじゃないのよ、と。
    その家族観みたいなものは、実に好感を持てるものだった。

    もうひとつは、「毒親」問題である。
    これも最近、本当に漫画で描かれることが多い。
    で、主人公が親をやり込める(ないしもっと苛烈な復讐をする)までがテンプレである。
    この点も、本作は、違う。
    主人公は、「何となく」母親を許す。
    このあたり、賛否あるのはわかる。
    特に、個人的な経験として親との軋轢がある読者は、「そんなに簡単にいくか」と感じるのも理解できる。
    何を何となく許してんねん、と。
    でも、私はこの「何となく」が好きだった。
    人が人を許すのに、ましてや子が親を許すのに、それほど確固たる根拠が必要なのだろうか。
    親を許せない人がいてもよい。
    親を切り捨てる人がいてもよい。
    親に縛られて人生を送る必要などない。
    私は心の底からそう思う。
    しかし、許せなかったつもりでも、何となく、どさくさのうちに許し合ってしまうようなことが出来るも、また、人間の美徳ではなかろうか。

    そういうわけで、現代漫画の二つのテンプレートを極めて自然にひっくり返した、なかなか見事な作品だと思う。

    • 304
  8. 評価:4.000 4.0

    良質な「大人のための」ホラーアンソロジー

    「極上」とまで言えるかは微妙だが、良質な「大人のための」ホラーアンソロジーである。

    いい意味で、子どもにはわからない、人生の酸いも甘いもというか、ある程度の経験を重ねてきた大人にこそ刺さるタイプの話ばかりである。
    ゾッとする、というよりは、切なさが身に染みる、という話が多いのも、大人向けかな、と思う。

    各話、粒揃いだが、私は田村由美による話が一番気に入った。

    余談になるけれど、「大人のための」とは書いたものの、こういう作品を子どもが読むことを「子どもにはわからないよね」と切って捨てるのも、違うな、と思う。
    昔、確かウルトラマンの制作者サイドの誰かが言っていたと思うのだが、子ども向けだといって、「子どもにもわかる」ことだけで作るのは、違うのだ、と。
    確かに子どものときには「わからない」のだけれど、それが一種の「引っかかり」として心に残り、大人になったときに、「あれはこういうことだったのか」と花開く、子ども向けの作品には、そういう側面があるべきだ、と。
    私はそれに全面的に賛同するし、子どもの頃に読んだホラー漫画の中に、そんな作品が確かにあったよな、とも思う。
    そういう意味で、子どもにも読む価値はあるんじゃないかな、と思う次第である。

    • 26
  9. 評価:4.000 4.0

    豊富なオマージュ

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    ざっくり言うと、ホラー映画の巨匠を志す主人公が、有名ホラー映画のキャラクターたちとバトルする漫画。

    私はまあまあのホラー映画ファンなのだが、ちょっとホラー映画に詳しい読者なら、元ネタはまず間違いなく知っているレベルのラインナップである。
    著作権の都合上、作中でタイトルなどは変えてあるが、取り上げられているホラー映画は、「IT」「キャンディマン」「エルム街の悪夢」「チャイルドプレイ」などなど。
    漫画の随所に元ネタへのオマージュがあり、ホラー映画ファンとしては、普通に読んでいるだけでも楽しい。

    当然、作者自身も相当なホラー映画マニアであることが推測されるが、作品の方向性としてはそこまでマニアックに走ることはなく、このあたりは、よくも悪くもある程度、一般読者にも通用し得る内容になっている。

    主人公は少年漫画の典型的なヒーローでは全くなく、いわゆる芸術家気質というか、「地獄変」的というか、善も悪もなく、あくまで映画を撮ることが最優先、というぶれない信念のもとに行動し続けるズレた男なのだが、「俺のカメラにガキの死ぬシーンはいらねえ」と子どもを命がけで守るなど、ちゃんとヒーローをやっていて、なかなか巧みに作られているとも思った。

    ただ、バトル漫画という側面で見ると、バトルそのものの工夫やインパクトはちょっと乏しいような気がして、そういう部分の物足りなさは感じた。

    • 3
  10. 評価:4.000 4.0

    コーエン兄弟を彷彿とさせる

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    現状、読めるのが一巻分だけで、評価は保留のところもあるのだが、なかなか面白かった。

    「レンタル親友」というビジネスに従事している役者志望の主人公は、常連客が計画した誘_拐事件の片棒を担がされることになるのだが、そこからの主人公の立ち回りが結構よく練られていて、良質なサスペンス映画のような趣がある。

    何と言っても、主人公の人間らしさがいい。
    こういう普通の人間のリアリティーというのは、漫画ではなかなか出せない。
    強い信念も深い欲望も特にないけれど、何となく面倒臭いことに巻き込まれたくないとか、何となく人質が気の毒だとか、そういう主人公の内心というのは直接的に描かれているわけではないものの(そこがいい)、その「何となく」のリアリティー、人間は実際こんなもんだろう、というリアリティーに説得力があり、しかも、きちんとサスペンスの返し技も決まっている。

    主人公の立ち回りに、私は、大好きなコーエン兄弟の映画を思い出した。
    ちなみに誘_拐モノというのも、コーエン兄弟が好んで用いた題材である。
    作者、コーエン兄弟が好きなんじゃないかな。
    これ、当たっていたら嬉しい。

    • 6
全ての内容:★★★★☆ 11 - 20件目/全144件

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