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作品レビュー
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111 - 120件目/全498件

  1. 評価:4.000 4.0

    正常と異常の間で

    昔、「カッコーの巣の上で」という映画を観た。
    雑に言えば、正常と異常の境界を問いかけるような映画だった。
    それを、思い出した。

    作者自身の経験から、精神科のリアルな日常が語られる。
    この「リアル」がよかった。
    本作の「リアル」は、「取材」ではなく、「経験」した人間にしか語れない種類のものだ。
    つまり、「出来事」が正確である、というだけのリアリティーではなく、現実に対峙した人間(作者)が何をどう受け止め、考え、感じたか、というリアリティーである。

    素晴らしいのは作者の位置づけで、彼女はただの「ナース」でもなければ「観察者」でもない。
    彼女はおそらく、「ちょっと何かが違えば、私もここにいたかもしれない」という意識で、絶えず患者に接している。
    だから、彼女の分析は、客観的でありながら、決して冷たくはない。
    「正常」サイドから「異常」を描く、というスタンスではない。
    彼女自身が、はじめから正常と異常の間に立っている。
    だから、精神科の患者たちを、あまりに普通に「同じ人間」としてフラットに見ることが出来ている。
    そういう印象を受けた。

    正常と異常の間に、自分は、立っていた。
    その境界をまたいだ経験をした。
    それこそが、彼女が「精神科ナースになったわけ」なのだろうし、ことによると、彼女にとってこの仕事は、天職と呼べるかもしれない、と思った。

    その、少し危うい、でも正直で真っ当で、自分を偽らない立ち位置が、私は好きであった。

    • 15
  2. 評価:4.000 4.0

    道具は人間次第

    世にも奇妙な物語」路線の作品だが、個々のエピソードの完成度が高い。
    話の展開の「ひとひねり」が丁寧に作られていると感じた。
    ちょっとしたことなのだが、特にこのような連作短編形式の漫画は、そのちょっとした差が、大きな違いを生むのだろう。

    また、単に奇妙な世界を描くのではなく、「道具」を作品の真ん中に置くことで、「道具の価値や意義は結局、使う人間次第だ」という一貫したテーマが、綺麗に作品に乗っている。
    「道具は使っても、道具に使われてはいけない」という教訓は、次から次へと便利すぎる道具が産み出される現代社会において、結果的にだが、辛口の警鐘にもなっている気がする。

    • 15
  3. 評価:5.000 5.0

    全霊で追う二兎

    評価の低さに半ば怒りを感じて力説したい。
    この漫画はもっと評価されなきゃおかしい。

    カルト宗教みたいなことをやっている殺_人一家に生まれた、漫画家志望のオタク少女。
    頭空っぽのハンサムな少年に恋をして、彼を事故から救ったことで、好意を持たれるのだが…という話。

    何が凄いって、ホラーとラブコメの両方に全霊で振り切っているところだ。

    別の漫画のレビューで、私は「オカルトをラブコメの道具にすんなや」という意味のことを書いた。
    ラブコメの「味つけ」にホラーを用いるなんて、邪道だ、破廉恥だ、と硬派なホラーファンの私は思ったのだ。

    また、基本線をホラーにする場合、原則、ラブコメの文脈は邪魔になる。
    ホラー映画だって、いちゃつく男女は真っ先に消されるでしょう?

    ところが本作は、そのどちらでもない。
    ホラー要素のあるラブコメでも、ラブコメ要素のあるホラーでもない。
    ホラーがラブコメを引き立て、ラブコメがホラーのインパクトを強化する。
    ガチガチのホラーであり、ベタベタのラブコメである。
    こんな作品、ないぞ。

    ラブコメ、ホラー、どちらの文脈に乗っかって読んでいても、不意に裏切られる。
    ディズニーランドの「イッツ・ア・スモール・ワールド」と富士急のお化け屋敷を行き来しているような異様な感覚、その独特のトリップ感は、他の作品では味わえない。

    まあ、評価されにくいのは、何となくわかる。
    要するに、ラブコメ、ホラー、どちらの読者層からもそっぽを向かれたのだろう。
    ラブコメファンがこんなものを支持するわけがないし、ホラーファンはホラーファンで「何か違う」と感じてしまうのだろう。

    二兎を追う者は、という。
    だが、そんなことは百も承知で、覚悟と愛情を持って二兎を全力で追う、私は本作をそういう作品だと思った。

    「死人の声をきくがよい」という漫画のレビューの中で、私はこの作者を、現代における犬木加奈子の後継者ではないか、と書いた。
    けど、はっきり言って、犬木加奈子ですら、こんな漫画は描けなかったと思う。

    • 13
  4. 評価:4.000 4.0

    虚実の振れ幅

    自らが「都市伝説」になる、という妄念に憑りつかれた男の話。
    私がどうかしているのかもしれないが、主人公の気持ちは、何となくわかる。
    私も都市伝説になりたーい。

    ただまあ、主人公の狂気のリアリティーにはそれほど説得力がなく、はっきり言って、客観的に見れば嘘臭いことこの上ない話なのだが、何となく勢いで押しきられてしまった感がある。
    そういう意味では、力のある表現だったのだろう。

    これは原作がそうなのだろうが、現実と妄想が虚実ないまぜになった作品世界を、とても上手に構築していると感じた。
    読み終えて、いったいどこまでが現実だったのだろう、と考え出すと、その振れ幅は0から100まであるような気さえしてきて、それがちょっと、怖かった。
    「現実か妄想か」みたいな作品はそれほど珍しくはないけれど、ここまで異様な振れ幅を持った作品というのは、あまりない気がする。

    ラストの返し技もなかなか上手く決まっていて、短くて良質なものを読んだな、という気分に浸れた。

    • 14
  5. 評価:5.000 5.0

    これが愛じゃなくて、何なのだ

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    実際の「福井火葬場心中事件」を基にした、いい意味で、極めて現代的な漫画。
    心が震える傑作である。

    認知症、老老介護、児童虐待、という現代社会のヘビーな諸問題を題材にしており、ある意味では悲壮な物語であるけれど、シンプルでポップな絵柄が、絶妙なバランスを生んでいる。
    これは、漫画だから出来る素晴らしい表現のひとつだと思う。

    興味深かったのは、この漫画で描かれる、日本の古い共同体の姿である。
    閉鎖的な限界集落で、八つ墓村的というか、今の時代、こんな共同体に魅力を感じる人間はまずいないし、私自身、否定的なイメージをずっと持っていた。
    しかし、主人公の妻が犯した罪を、地域の住民皆が協力して隠し通そうとする姿には、胸が熱くなった。
    悪く言えば、そういう隠蔽体質というのは、日本の古い共同体のネガティブな側面そのものなのだけれど、それを真逆から描いてみせたような抜群の切り返しには、思わず唸った。

    生き方を選ぶということは、ある意味で、死に方を選ぶことと等価であると私は思う。
    これは、老夫婦が死に方を選択する物語であり、そして、究極のラブストーリーでもある。
    結末は、悲しくて悲しくて、でも、これ以外もこれ以上もきっとないんだ、と思って、涙が溢れた。
    だって、これが愛じゃなくて、何なのだ。

    • 13
  6. 評価:5.000 5.0

    漫画の可能性

    高校のとき、この漫画を読まなかったなら、私は今ほど漫画を読むようにはなっていなかったと思う。

    十代の自分が「寄生獣」から感じたのは、一言で言えば、可能性だった。
    おいおい、漫画ってこんなことが表現できるのかよ、という可能性である。
    それを、手塚治虫から感じた人もいるだろう。
    鳥山明から感じた人もいるだろう。
    私にとっては、それが「ジョジョ」と「寄生獣」だった。

    本作は、「ET」的な不思議な友情の物語でもあり、「ジョジョ」的な頭脳戦のバトル漫画でもあり、答えのないかもしれない問いを投げかける哲学的な作品でもあった。
    それは例えば、曖昧な結末を読者に丸投げするのとは、ちょっと違う。
    だって新一は、自分の答えを出したから。
    でも、私たちの答えは、どうだろう。

    優れた作品は、いつだって、答えではなく、問いを残す。

    • 13
  7. 評価:5.000 5.0

    異常なほど独特

    正直、星を五個つけている他の漫画ほど気に入ったわけではないし、人に薦めようとも思わない。
    しかし、あまりに独特な作品の空気に、半ば強引に引っ張られてしまった。

    元受刑者たちのキャラクター造形の巧みさ。
    現実にいたらどう考えても一緒にいたくない人間さえ、何となく許せたり、可愛らしく見えたりしてしまうところに、フィクションとしての力量を感じた。

    「本音と建前」を描いた漫画なのだという。
    そういう側面は確かにあるが、個人的には、読者に対してとても挑戦的な、悪く言えば、意地の悪い作品だと思った。
    だって、考えざるを得ない。
    元受刑者たちが来るのが、自分の町だったら、と。
    「嫌だよ、勘弁してくれよ」という自己保身のエゴと、「生き方によっては許されるべき過ちもあるのではないか、必死で真っ当に生きようとする人間すら拒絶するのか」という倫理の間で、揺れる。
    登場人物が、ではない。
    読者が、だ。
    登場人物は、そんなにマジで葛藤していない。
    だってこれはギャグ漫画なのだ。
    よりにもよってギャグ漫画が、読者の良心や倫理観を試そうとする。
    そんなのありか。

    そして、ギャグ漫画でありながら、「何かとんでもないことが起きるんじゃないか」という不穏な空気が、ずっとある。
    暴力や破綻への嫌な予感が、静かな不安感が、絶えずある。
    繰り返し、よりにもよって、ギャグ漫画の中で。
    私は笑いながら、怯えていた。

    いやほんと、何なんだ、これは。

    • 13
  8. 評価:4.000 4.0

    ジャンル変貌の妙技

    スタートで「こういう話かな」と思っていたのを、いい意味で、かなり裏切られた。
    「フロム・ダスク・ティル・ドーン」というジャンル崩壊映画があるが、それをちょっと思い出した。
    この手の作品は、ジャンルの切り替えが上手く決まらないと「何やねん」という悲惨な出来になるが、なかなかバシッと決まっていたと思う。

    また、基本的にはリアリティーもクソもない話だが、主人公のキモい男の「最底辺だけは嫌だ」という信条は、その是非はともかく、現代の価値観としてなかなかリアリティーがあったし、何より、漫画の主人公の価値観として新しさを感じた。
    個人的には、「僕たちがやりました」のトビオの「普通でいい」という価値観と双璧である。

    そして、この魅力もクソもない主人公でどうすんだよと思いきや、人間に対する観察眼の鋭さや、常人離れした嗅覚という設定を巧みに生かして、意外とカッコよく見せた手腕は、見事と言う他にない。

    惜しむらくは、まあ、表紙がひどい。

    • 14
  9. 評価:5.000 5.0

    みんなみんな可愛い

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    魔王に囚われた姫様が、秘密を吐かせるための様々な「拷_問」を受ける、というギャグ漫画。
    その「拷_問」がまあ実に緩くて、基本的には目の前で美味しそうな食べ物を見せられる、というものである。

    トーストとかたこ焼きとかカップラーメンとか、何でもないものがとても美味しそうに見える漫画である。
    ただ、読み始めたときは、このパターンの繰り返しだと早々に飽きが来そうだな、と思った。
    が、とんでもない、様々な工夫を凝らして、実に巧みにマンネリ化を回避している。
    食べ物以外の「拷_問」があったり、いわゆる「日常回」があったり(囚われの身なのに…)。
    基本線はワンパターンには違いないのだが、まるで飽きさせない。
    その点がまず、見事であった。

    ギャグ漫画としては、しょうもない設定がいちいち楽しくて癖になる。
    特に、子煩悩でモラルの高い「理想の上司」である魔王様の造形が素晴らしい。
    部下のミスを叱責するのではなく、どうフォローするかを考える。
    相手が敵であろうとも、人の善意を利用しない。
    娘の描いた絵を見て「くっくっく…上手」と言う。
    私は魔王様が大好きで、毎回毎回、「今回は魔王様出るかな」と楽しみでしょうがなかった。

    登場するキャラクターたちがみんな魅力的で、とにかく可愛い。
    姫様も魔王様も魔王様の娘も拷_問担当の「敵キャラ」たちも、あろうことか「聖剣」に至るまで、みんなみんな可愛い。

    絶対に誰も傷つかない甘くて優しいギャグ漫画であり、「かーわーいーいー」と私は知能指数の低いティーンエイジャーのような頭脳になって、この漫画を読み続けた。
    あー楽しかった。

    • 12
  10. 評価:2.000 2.0

    語りの醜さ

    職場や恋愛なんかでよくある「ムカッと」を「スカッと」撃退する、という話であるはずなのだが、あまりスカッと出来なかった。
    どちらかというと、モヤッとした。

    その理由は明確で、この漫画の構成にある。
    簡単に言うと、主人公たちが人の悪口を言い合って盛り上がるのを眺める、という漫画だ。
    単なる愚痴、というよりは、他人の醜さを楽しんでいる、といった調子で。
    私は、これがどうにも気持ち悪かった。
    いや、あなたたちもだいぶ嫌な奴じゃないですか、としか思えなかった。
    普通にエピソードが綴られるだけの展開だったら、印象は違っていただろうと思う。

    自分たちはある種の正しさの中に身を置きながら、嬉々として人の醜さを語る人々もまた、醜い。
    そんな皮肉を狙って描いた作品であるならば、なかなか大したものだが、まあ、違うだろうしなあ。

    • 15
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