東地宏樹:「呪術廻戦」インタビュー 石流龍の強さと余裕 自身も“腹八分目” 演技者としての渇望

配信日:2026/03/27 12:01

アニメ「呪術廻戦」の一場面(c)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
アニメ「呪術廻戦」の一場面(c)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

 「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載された芥見下々(あくたみ・げげ)さんの人気マンガが原作のテレビアニメ「呪術廻戦」の第3期「死滅回游 前編」が3月26日に最終話を迎えた。呪術を持つ者同士の殺し合い「死滅回游」における泳者(プレイヤー)同士の激しい戦闘シーンが話題を集めた第3期において、受肉した過去の術師、石流龍が強烈なインパクトを残した。“腹八分目”の状態で前世の人生を終え、漠然とした“渇き”を抱える石流を演じたのが、東地宏樹さんだ。収録の裏側や、自身の“渇き”について聞いた。

 ◇石流龍は危険な匂いのする男 アニメならではの演技の楽しさ

 東地さんが演じる石流は、仙台結界(コロニー)での戦いにおいて乙骨憂太が対峙(たいじ)した泳者で、“泳者一の呪力出力を誇る大砲”として登場する。

 「僕とは全く性格が異なる、分かりにくい男だなと感じました。分かりにくい人間って魅力があるじゃないですか。また、危険な匂いのする男だなというイメージも強かったです。それで、相手に分からないようなことを言い続ける変なやつじゃないですか」

 「そんなキャラクターをやるのは楽しい」とも語る。

 「自分じゃないものに対して、自分の考えをスタッフの人に提示して、やり取りして作り上げるというのは、やっぱりアニメーションならでは。外画だと、演じている人が実際にいるので、その人に寄り添いながら自分の表現をするんですけど、アニメの場合は『この人があのセリフをしゃべったらどうなるんだろう』というのを僕が考えてやらせてもらう」

 演じる中で意識したのは、石流の「強さ」と「余裕」だった。

 「余裕のある戦いぶりということは、基本あるべきだなと。ただ、ピンチにはなるわけなので、そこの度合いもあるんですけど、基本的にはやっぱり強い。自信過剰な人であっていい。かつ、頭の回転も速い。先の先を読んで、考えながらやらないと勝てない戦いではあるので、みんな頭の回転は速いんですけどね。強い人であるということを自分の中で持ちながらやろうと思っていました」

 ◇石流VS乙骨 収録の裏側 共感も

 テレビアニメ「呪術廻戦」は、スピーディーで迫力ある戦闘シーンが魅力の一つとなっているが、東地さんも収録では「スピード感に追いついていくのは結構大変だった」と振り返る。

 「特に僕の回は戦いがメインなので。収録に当たって、アニメを何話か見せてもらった時に映像のすごさと音楽のすごさは感じていました。アクションに関して『こういう変わったやり方するんだ』と。緩急のつけ方がすごいんですよね。その中を自分が生きるんだなとイメージしながら演じました。収録では、映像はまだ出来上がっていない状態で、ト書きが頼りなんですが、ト書きを見ていると遅れちゃう。そこは申し訳ないけど何回かやらせてもらって、説明を受けて、ディスカッションをして。(乙骨役の)緒方(恵美)さんがいてくださったんで、緒方さんがスタッフとやり取りしているのを見ながら、感じながらやらせてもらいました」

 石流は、前世の人生での“腹八分目”を“満腹”にするために乙骨と戦う。乙骨役の緒方さんと掛け合って感じたのは、その表現の独特さだった。

 「緒方さんと掛け合いしたのって、数回くらいなんです。あまりご一緒したことがなくて。実際に掛け合ってみると、女性がやる男の人の芝居の仕方がやっぱり独特だなと。唯一無二というか。一緒に録(と)ることで、それを感じられたのは貴重だったなと思います。内に引きこもっているようなキャラクターが何か吐き出す感覚というか、その出し方がやっぱり素晴らしいなと思いました。そんな乙骨と石流のコントラストが出ればいいなと思いながら収録していました。石流が乙骨によって自分が望んでいた戦いができた、というところに掛け合いをしながら持っていくという意味でも、一緒に録れてよかったんだなと思います」

 最終話では、激闘の末、乙骨に敗れた石流が「……ありがとう 満腹だ!!!」と満足そうな笑みを浮かべるシーンも印象的だった。東地さんは、石流の負けても相手を認める姿に共感したという。

 「相手がいたおかげで、自分が何かを与えてもらったという感覚。僕も、いい芝居を見た時に悔しいとかじゃなくて、負けをすぐに認められるというか。いいものを見て、自分の中に何かが入った時にそれに対して感謝する。石流が、あの戦いの中で二分足りなかったものが埋まったということは、多分乙骨にも感謝している。負けても感謝できる。そこは共感できるかなと。僕自身、できれば争いは好まないし、無駄なエネルギーは使いたくないし、みんな笑ってりゃいいじゃん、という感じなので、石流ののらりくらりとして、最後に満腹だという、ある意味ハッピーな感じは悪くないなとすごく思いました」

 ◇「まだ渇いています」 60歳、東地宏樹の渇望

 石流に共感したという東地さん。自身も人生において、石流と似た“渇き”を感じたことはあるのだろうか。

 「若い頃は、カラッカラな時期がありましたよ。八分なんかないという(笑)。自分が大学3年生の時に劇団を旗揚げして、『誰にも負けない芝居を作る』という感じで。それである程度のところまでいったんですけど、いろいろあって劇団を解散することになった。当時は、テレビ出たい、映画出たいと考えていたんですけど、なかなかそういうところにはいけないわけですよね。芝居はお金にならないし、バイトしなきゃいけない状況で、渇ききっていました。言われもない自信だけでやっていたというか。自信がなくなったらもう辞めるしかないので、それだけで自分を保ってやっていた時期はありますね」

 その後、バブルの影響でテレビCM、ラジオCMの仕事が舞い込んだこともあり、「自分の好きなこと」はできるようになったが、「それでも映像の仕事のきっかけがなかなかできず。そうこうしている間に吹き替えやアニメの仕事をいただくようになって今に至る。今考えると、それもありがたい話なんですけどね」と振り返る。

 声優、俳優として活躍する今も“渇き”の感覚は大事だと感じているという。

 「今年で60歳になるんですけど、一回りも上の(井上)和彦さんとか山路(和弘)さんとか、格好よくて元気な先輩がいるからまだまだだと思うんです。自分はあらゆる演技者でありたいと思うので、映画にも出たいですし、演劇でも憧れた人とやりたいなと今はすごく思っていて。ここから70歳までの間に役所広司さんと一緒に何かできないかなと、自分の中で夢として思いながら、口に出してやっていこうかなって。まだちょっとギリギリ元気でいられそうな時に頑張りたいなと思っています。まだ渇いています。腹八分でいいのかな。あと二分の渇きを埋めることを今すごく考えています。渇望してます」

 演技者として渇望する東地さんが表現する石流龍。今後も続く「死滅回游」でどのような魅力的な姿を見せてくれるのか、期待したい。

 「呪術廻戦」は、「週刊少年ジャンプ」で2018年3月~2024年9月に連載されたマンガ。強力な“呪物”の封印が解かれたことで、高校生の虎杖悠仁が呪いを巡る戦いの世界に身を投じることになる……というストーリー。コミックスのデジタル版を含む全世界シリーズ累計発行部数は1億5000万部以上。テレビアニメの第3期「死滅回游 前編」がMBS・TBS系のアニメ枠「スーパーアニメイズム TURBO」で1月に放送をスタートし、3月26日に最終話を迎えた。

 (しろいぬ/MANTANWEB)

提供元:MANTANWEB

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