独占有名人インタビュー:竹中直人 「俳優としての漫画、監督としての漫画」(めちゃコミック10周年企画)

独占有名人インタビュー:竹中直人 「俳優としての漫画、監督としての漫画」

更新日:2017/09/22 10:00

俳優、監督、歌手とマルチな才能で活躍する竹中直人さん。子どもの頃は漫画家になりたかったという竹中さんが語る“漫画”とは!? 手塚治虫につげ義春、「のだめカンタービレ」「野武士のグルメ」などなど、めちゃコミだけにたっぷり語っていただきました!

竹中直人

竹中直人

漫画家に憧れた子ども時代

――子どもの頃はどんな漫画を読まれていましたか?

小学生のときに、「ロック冒険記」(手塚治虫/手塚プロダクション)という作品を読んで、自分も漫画家になりたいと思いました。ずっと美術だけは5で、模写がうまかったんですよ。自分で言うのもなんですけど(笑)。いつもみんなに「漫画描いて」って言われて、さいとう・たかをさんや川崎のぼるさん、ちばてつやさんの漫画をそのまま描き写してました。その後、「石ノ森章太郎のマンガ家入門」(石ノ森章太郎/秋田書店)って本まで買ったんですよ。

――手塚さんの作品だと、どんな漫画がお好きですか?

女の子がミラクルキャンディーを食べて動物に変身する「ふしぎなメルモ」(手塚治虫/手塚プロダクション)っていう作品もすごく好きだったんですが、特によかったのは「ばるぼら」(手塚治虫/手塚プロダクション)。この作品は“ダークサイドの手塚治虫”っていうのが全開で、たまらなかったですね。ちょっとエッチだったし!

竹中直人

竹中直人

ヒロインのバルボラは、なんだか悪魔的なんです。彼女と付き合う男はみんな成功するので、まさに悪魔に魂を売るような感じなのかもしれませんが。読んでいるうちに、彼女に翻弄されている男たちに感情移入しちゃうんですよ。バルボラは魅力的なんだけど、なんだか寂しさもあって、たまらなかったですね。

今年は手塚さんの漫画「上を下へのジレッタ」(手塚治虫/手塚プロダクション)を原作にした舞台をやった関係で、手塚さんのご家族にもお会いしたんです。でも、手塚さんに影響されて漫画家になりたかったとか、「ばるぼら」(手塚治虫/手塚プロダクション)が好きだったとか、そういう話は全然できなかった。緊張しちゃって!

「のだめ」のシュトレーゼマン役は一度断ったんです(笑)

――漫画原作の作品を実写化するときに、何か気にされることはありますか?

いや、ないですね。でも演じる前には、原作は読みません。「上を下へのジレッタ」(手塚治虫/手塚プロダクション)の舞台のときも役名しか知らなくて。手元に原作もあったんですけど、原作のキャラクターと自分を比較しちゃいそうで、やっぱり読まないほうがいいなぁと思って。演じる前に比較するのって、少し嫌なんですよね。

ピンポン」 (松本大洋/小学館) のときは、卓球部顧問の小泉丈役をやらせてもらったんですが、僕は作品自体を知らなかったんです。読まないって決め込んでるわけじゃないですけど、やっぱり先入観持ちたくなくて、原作は読みませんでした。でも窪塚洋介くんとか井浦新くんとかは、そっくりな感じでしたね(笑)。

かつてはバタフライジョーと呼ばれる伝説の選手だった小泉

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ピンポン
(c) 松本大洋/小学館
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松本大洋
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――「のだめカンタービレ」 (二ノ宮知子/講談社) のときも原作は未読だったんですか?

タイトルは聞いたことがあったんですが、こちらも漫画自体は読んでいませんでした。ある時、プロデューサーに呼ばれて行ったら「ドイツ人指揮者の役をやってくれ」って言われて。僕はどんな仕事でも断りませんし、スケジュールが合えばなんでもやるんですけど、でもこれは「いや~、ちょっとこれは無理です」って最初はお断りしたんですよ(笑)。その打ち合わせの帰り際に「特殊メイクで鼻つけて……そうしたらコントになっちゃうし」って呟いたんですが、次の日事務所に連絡があって、「それ(特殊メイク)でお願いします」って正式オファーが来ました。

竹中さんが演じた、世界的な名指揮者フランツ・フォン・シュトレーゼマン

竹中さんが演じた、世界的な名指揮者フランツ・フォン・シュトレーゼマン

のだめカンタービレ
(c) 二ノ宮知子/講談社

撮影に入る前には原作も届いてたんですが、先に読んだらいろんなこと考えちゃうからとあえて読みませんでした。自分で描いたデザイン画を特殊メイクの方に見せて「こんな顔でやりましょう」と相談して、撮影に入ったんです。

シュトレーゼマンには、かなりスケベオヤジな一面も…

シュトレーゼマンには、かなりスケベオヤジな一面も…

のだめカンタービレ
(c) 二ノ宮知子/講談社

――その後、原作は読まれましたか?

随分経ってから読みました。友達が持ってきてくれて初めて見たんですが「うわああ、ぜんぜん違うよ!!!」ってなりました。まあ、原作を読まずにオリジナルでやったものだから、それはしょうがないですよね。でもありがたいことに、キャラクターは気に入ってもらえたようで。ある京都の音楽学校からは、「音楽祭があるから、シュトレーゼマン(役名)として出てほしい」って頼まれて、スタイリストと行ったこともあります。「ダンケシェーン!」って。

どんなにスケベでも、シュトレーゼマンの指揮は超一流!!

どんなにスケベでも、シュトレーゼマンの指揮は超一流!!

のだめカンタービレ
(c) 二ノ宮知子/講談社
少女漫画 のだめカンタービレ
二ノ宮知子
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――現在Netflixで限定配信されているドラマ「野武士のグルメ」(久住昌之・土山しげる/幻冬舎)も漫画原作ですね。

あれも全然原作と違いますよね。もう怖くて怖くて。原作があるものを演じるのは、ほんと怖いっすよ。だから、なかなか自分でちゃんと見ないんです。今回ロケをさせてもらったのは、素朴なお店が多かったんです。一件だけ吉祥寺のイタリアンがありましたけど、あとはほんとに外れた場所というか、埼玉や千葉や茨木……遠かったですねぇ。

――逆に映画を元に漫画化された「山形スクリーム」 (個々田健/小学館) のような例もありますね。

あ、漫画になってたんですね! 「山形スクリーム」は、一年かけて作家と一緒に企画を作ったんです。女子高生が落ち武者に襲われるっていうストーリーでつくってくれという依頼があって。「え?俺でいいんすか?マニアックになっちゃいますよ!?」って言って。漫画にもなってたなんて……懐かしいなぁ。

映画『山形スクリーム』(2009年公開)は、公開にあわせてコミカライズもされた

映画『山形スクリーム』(2009年公開)は、公開にあわせてコミカライズもされた

山形スクリーム
(c) 個々田健/小学館
少年漫画 山形スクリーム
個々田健
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今も枕元に置いている――つげ義春の作品

竹中直人

竹中直人

――そしてやはり……竹中さんというと、つげ義春さんのイメージがあるのですが。

それは、すげえ嬉しいことですね。映画は『無能の人』(1991年公開/原作:つげ義春)の一本しか撮れてなくて。ずっと撮り続けていたかったんですけど、なかなか企画通んないんですよ。つげさんとは、いまでも年賀状のやり取りはし ていて、直筆で「また竹中さんとやりたい」と書いていただいたりもしているんですが…。こうやって話してると、つげさんの世界をまたすごく撮りたくなってきます。「海辺の叙景」(つげ義春/筑摩書房)なんて膨らませて撮りたいっすね。誰かが撮ったら嫉妬しちゃうな(笑)。

――つげさんの作品はいつごろから読まれているんですか?

学生時代に「COMICばく」(日本文芸社)や「ガロ」(青林堂)っていう漫画雑誌を読んでたんですが、そこにつげさんの作品が載ってて。圧倒的に好きだったんですよ、つげさんの漫画が。だから、まさか自分が映画にできるとは思わなかったです。映画を撮ったときは34歳だったんですが、去年、目黒シネマという映画館で、僕の監督特集をやってくださって。久しぶりに『無能の人』を見ましたが、自分で言うのもなんだけど、いい映画だなと。演者さんがいいですから。

竹中直人

竹中直人

――また竹中さんが撮られたつげ作品映画を拝見したいです!

ありがとうございます。嬉しいな、何十年も経っちゃったけど。また撮りたいですね、つげさんの世界。とっても心地いいんですよ。寂しくて、そんな前向きじゃなくて、それでエッチで(笑)。いつも枕元につげさんの本が置いてあるんです。ほんとに何度も読んでますよ。ああ。ものすごい心の底から「うわああ、撮りたい」って気持ちが!

――つげさん以外でオススメの作品は?

谷口ジローさんの作品かな。中でも「遥かな町へ」(谷口ジロー/小学館)って漫画があるんです。10年くらい前かな、下北沢にある馴染みのお店に置いてあって、店員さんが勧めてくれたんです。「とてもいいっすよ」って。読んだらたまんなかったですね。冒頭から電車を間違えて自分の町にたどり着いて、お墓参りして気を失って、しばらく街を歩いて、ガラスに自分の顔が映ったら中学生の自分になってる。その時点でゾクッとしました。その後、父親が行方不明になっている理由を探すっていう展開が、なんてドラマチックなんだろうって。いやー、素敵な話でしたね。

漫画家・谷口ジローさんは、卓越した作画技術で数々の名作を残した

漫画家・谷口ジローさんは、卓越した作画技術で数々の名作を残した

事件屋稼業
(c) 関川夏央・谷口ジロー/双葉社

――こちらも、映画化にぴったりの作品ですね。

ええ。ものすごい映像的だったんで、「これは映画にしよう」って話になって、プロデューサーが谷口さんに確認を取ってくれたんです。そしたら、自分で言うものなんですけど「竹中さんだったら是非」って言ってくれて。でも先に、フランスで映画になっちゃったんです。

ただ、今また復活できないかって話をしてはいるんですよ。企画出して本格的に動きたいなぁって。……うわああ。撮りたいですね、すごく!

竹中直人

竹中直人

――めちゃコミ10周年にちなんで、「10年」にまつわるエピソードを教えてください!

「10年」というと、フィッシュマンズ(1987年結成)っていう好きなバンドの"IN THE FLIGHT"っていう歌を思い出します。その歌に出て来る登場人物……それは作詞作曲をされた佐藤伸治さんなんだと思いますが、歌詞の中で彼が「4つ階段を上った先にあるドアを前にして、10年経ったらなんでもできそうな気がする」って言うんです。でもすぐ後に「やっぱりそんなの嘘で、僕はいつまでも何もできないだろう」って思い直す、というちょっと寂しさが残る曲なんですが。すごく好きでした。10年というとまずその歌を思い出します。

あとは、50歳になったぐらいから「あと10年頑張れるかな」って言うようになりました。そうしたら、60歳になっちゃった。「あと10年、どんだけ頑張れるだろう」って、特にこの歳になると、いつもそれしか考えてないですよ。うーん……あと10年、頑張れるかな。また映画撮れるかなぁ。そうそう叶うもんじゃないけど(笑)。撮りたいなぁ。

竹中直人

竹中直人

竹中直人サイン色紙

漫画そして映画に対する、溢れんばかりの愛と情熱を語ってくださった竹中直人さん。取材中には、なんとフィッシュマンズさんの歌も披露してくださいました。つげ義春さんや谷口ジローさん作品の監督映画、公開される日を心待ちにしています!!

写真:下山 展弘

プロフィール

竹中直人(たけなかなおと)

83年に『ザ・テレビ演芸』(EX)でデビュー。俳優や映画監督、ミュージシャンなど幅広く活躍。91年の『無能の人』で映画監督デビュー。同作ではヴェネツィア国際映画祭 国際批評家連盟賞を受賞し、2013年の『R-18文学賞vol.1 自縄自縛の私』まで7作を監督している。96年、NHK大河ドラマ『秀吉』で主演を務めるなど、俳優として多数の作品に出演。2017年4月にはニューアルバム「ママとカントリービール」をリリースした。

◆竹中直人 公式プロフィール

http://www.from1-pro.jp/talent/detail.php?id=2

※上記リンクは外部サイトに接続します

◆ニューアルバム『ママとカントリービール』リリース!

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『オレンジの気分』(2011年リリース)以来の待望のアルバム『ママとカントリービール』(2017年リリース)。収録曲はすべて竹中直人さん作詞、玉置浩二さん作曲と超豪華。Netflix『野武士のグルメ』のエンディング曲『白い砂のサボテン』も収録した、大人のためのPOPミュージックに仕上がっています!

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作者

上原さんじ

上原さんじ

昨年から自分の中でめでたいものが流行っています。1年に1回しか会えないレア感、福々しいフォルム、若干邪魔なところを含めて、現状は鏡餅が一強です。

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