独占有名人インタビュー:デーブ・スペクター「不思議でしょうがなかった日本の漫画」
更新日:2017/02/24 10:00
タレント、コメンテーター、放送プロデューサーとして活躍、寒いけどクセになるギャグでお馴染みのデーブ・スペクターさん。
生粋のアメリカ人ながらも、一時期“埼玉県出身説”が出回ったほど日本語ペラペラのデーブさんですが、彼が日本に興味を持ったキッカケの一つは、日本の漫画だったようです!
デーブ・スペクター
日本からの転校生・ワタル君との出会い
――デーブさんは少年時代に日本の漫画と出会い、日本に興味を持ったそうですね。
小学生の頃、日本人の転校生・ワタル君が持っていた「週刊少年マガジン」(講談社)や「週刊少年サンデー」(小学館)を借りて、「巨人の星」 (梶原一騎、川崎のぼる/講談社) 、「おそ松くん」(赤塚不二夫/小学館)、「オバケのQ太郎」(藤子・F・不二雄、藤子不二雄A/小学館)を読んでいました。そこから自分でも漫画を集めるようになって、当時は船便などで日本の漫画が来ていて、とても貴重だったので捨てずにコレクションしていました。
――特に好きな作品やキャラクターはありましたか?
「オバケのQ太郎」は読みやすかったし、好きでしたね。唯一、僕が絵で描けるのがオバQ。当時同級生だったワタル君へ手紙を描くために何回も練習して描けるようになった。今だとクイズ番組で答えがわからないときに、フリップにオバQだけ描いて出すことがあるけど、 司会の人に怒られるよ。
デーブ少年(12歳)がワタル君へ書いた手紙
ワタル君のお姉さんが持っていた少女漫画雑誌の「りぼん」(集英社)や「なかよし」(講談社)も借りて読んでいたので、少女漫画も好きでしたね。「なかよし」なのに、ワタル君とケンカしながら読んでたなあ。
デーブ少年がワタル君の姉・ミチコさんへ宛てたラブレター
『巨人の星』の伸びるボール―日本漫画の独特な表現
「巨人の星」を読んで不思議だったのが、なぜ日本の野球漫画のボールはお餅みたいに伸びるんだろうって。みんな深刻な目や表情をしていたり、怒ったり悲しんだりしているのも面白かったね。キャラクターのアクションや喜怒哀楽がはっきりしているから、日本語があまり読めなくてもついて行けました。
あと、「おそ松くん」に登場するチビ太のおでんも、当時おでん自体見たことも食べたこともなくて、ずっと手に持っているから「何かの武器なのかな」ってすごく不思議だったね。
1967年の少年マガジンコミックス。当時の価格は130円。
この紙とインキの匂い、漫画の良い匂いだね。
――どんどん漫画にのめり込んでいったデーブ少年は、そこから日本語も覚えていったのでしょうか。
セリフにルビがちゃんと振ってあって、良い日本語教材でしたよ。最初は擬音から覚えていったので、“擬音祭”。アメリカの漫画にも擬音はあるんだけど、日本のは種類が多いし、それだけで笑っちゃうような強引な擬音があったり。擬音使って喋る人がよく居るけど、何となく通じるから面白いね。日本独特の漫画文化だと思いますよ。
――映像をはじめ海外コンテツに精通しているデーブさんから見て、日本の漫画文化については どう思いますか?
漢字文化ということもあってか日本人はみんな絵や漫画が好き。作るものどれも非常にビジュアルが良いし、こだわりがすごいと思います。
日本の漫画雑誌は、一冊に色んな作品が載っているから分厚くて、好きなものだけ読んだり、箸休めで読む作品があったり、4コマ漫画があったり、すごく満足できる。アメリカの漫画「DCコミックス」や「マーベル・コミック」だと、「スパイダーマン」や「スーパーマン」とか一冊で一タイトル。40ページくらいで薄いから、丸めてジーンズのポケットに入れられる。擬音もそうですが、アメリカと日本の漫画で文化の違いがあって面白いです。
――数多くの日本の漫画がハリウッドで映画化されていますが、その点についてはどうですか?
あの手のものは、現場のクリエイティブな人たち以外の人が企画していることが多いから、強引に作ってる感があって面白くないんだよね。僕たちが見たいのはもっと独自なものなのに、原作ファンに媚びていたり、グローバルに売ろうとするから薄味で人畜無害な作りになってしまっているのが残念です。
デーブ・スペクター
ラーメン屋さんの漫画本はどうなるの?
――日夜たくさんの新聞や雑誌から情報を仕入れているとのことですが、電子版は使っていますか?
各新聞や雑誌、紙でも電子でも見ていますよ。海外の新聞はほとんど電子版で読んでいます。電子だとスマホでもiPadでも、とにかくビジュアルが綺麗。最初の頃は質感がなくて寂しかったんだけど、紙だと何年分か山積みで取っておいても検索できないし、ちょっと面倒だよね。
――電子で試し読み、気に入ったら書籍で買ってコレクションする人も多いようです。
音楽で言うと、iTunesで試聴してCDを買うみたいなことですね。例えば、SMAPやビートルズとか、誰かしらのファンの人たちは、リスペクトの意味で現物のCDを買う。ダウンロードする方がよっぽど楽なのに。今はCDショップも減って、アメリカもタワレコなんてなくなって、ほとんどダウンロード。“現物”というものにこだわるのが日本特有なので、日本で電子版が普及するのは、もう少し時間がかかるかもね。でも、普及したら漫画本を置いている町のラーメン屋さんは、さすがに電子では置いてくれないかな。注文待っているときどうしよう。
――たしかに(笑)。メリットとデメリット両方ありますね。
メリットは、今の若い世代は古い作品を知らなかったり、現物を手に入れようとしてもなかなか難しいから、そういうものは電子で探して、手軽に入手できるから便利ですね。
あと、電子メディアの先駆けのような存在の文庫本は、コンパクトであまり場所を取らなくて、持ち運んで通勤電車で読める。僕がよくやるのは、友達が読んでいる小説のしおりを違うページに入れておいたり、最後のページを声に出して読み上げたりするの。電子になると、そんなイタズラもできなくなるから寂しいね。まあ友達なくすからやらない方が良いよ。
デーブ・スペクター
ギャグツイートはずっと続けたい
――最後に、めちゃコミック10周年にちなんで、デーブさん流に一言お願いします!
デジタルは「1」と「0」で成り立っているものだから、 まさにピッタリの10周年ですね。だから11年目はちょっと困るかも。次のチャンスは100周年だから、「めちゃコミック」を頑張って続けていってほしいですね。そのときはもうここにいる全員が居ないと思うけど(笑)。
僕自身の10周年だと何だろう…。Twitterでギャグをツイートするのをライフワークにしていて、そういった目に見えるバロメーターはTwitterくらいのなので、ずっと続けていきます。
――10年後の目標はありますか?
Twitterのフォロワー数が100万を越えたので(2017年2月時点)、10年後はあと3人くらい増えていてほしいですね。その他のプランはなくて、あまり気にせず、日々一つひとつ精一杯やっていけば良いかなって。あと、東京都知事になって都民税を30倍にしたいと思います(笑)。
デーブ・スペクター
終始軽快なトークで、デーブさん節炸裂のインタビューでした!
独自の視点で語る漫画論、クールギャグの中に紛れた冷静で鋭い見解に思わずドキッとしました。
写真:下山展弘
プロフィール
デーブ・スペクター
アメリカ・シカゴ出身。1983年、米ABC放送の番組プロデューサーとして来日。「笑っていいとも!」への出演をきっかけに、お茶の間の人気者に。タレント、コメンテーター、放送プロデューサーとして、長年日本のテレビ界で不動の地位を確立している。主な著書に「いつも心にクールギャグを」(幻冬舎)などがある。
◆デーブ・スペクターさん公式Twitter
https://twitter.com/dave_spector?lang=ja
◆スペクターコミュニケーションズ
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