独占有名人インタビュー:片桐仁:漫画家がいれば何もいらない!あの漫画キャラのモデルになった片桐さんが漫画家をリスペクトする理由とは?
更新日:2018/04/19 10:00
お笑い芸人だけでなく、俳優や彫刻家としても活躍中の片桐仁さん。日々、独創的なアイディアを生み出し続けているクリエイティブな片桐さんが好きな漫画とは? 漫画だけでなく、生みの親である漫画家さんのことも深く尊敬しているようです。
「キン肉マン」が近所に3冊しか売ってない!?
片桐仁
――普段漫画は読みますか?
好きな漫画家さんの漫画ならもちろん買うし、最近は漫画アプリを使って読むことも多いですね。
片桐仁
――漫画はいつ頃から読み始めたんですか?
初めて漫画を読んだのは、小学校2年生の頃に買ってもらった「Dr.スランプ」(鳥山明/集英社)の5巻でした。単行本で読んだのが最初の漫画体験で、週刊誌を読み始めたのはもうちょっとあとですね。その後、「月刊コロコロコミック」(小学館)や「週刊少年ジャンプ」(集英社)を周りが読み始めるようになって、「キン肉マン」 (ゆでたまご/集英社) が流行ったんですけど、近所の本屋に3冊しか置いてないから、単行本がなかなか買えなかったんです。わざわざ電車に乗って買いに行くお金もないから、持ってる友達に見せてもらったり、床屋に行ったときに置いてあるのを読んだりしてましたね。
- 少年漫画 キン肉マン
- 4.2 (587件)
「血の轍」に充満する“ひたひた感”は漫画でしか味わえない!
片桐仁
――小さい頃から漫画を読まれている片桐さんですが、最近読んだ漫画でオススメはありますか?
「ビッグコミックスペリオール」(小学館)を毎号読んでるんですけど、「血の轍」 (押見修造/小学館) は1話が掲載されたとき「なんだこの漫画は!」と衝撃を受けました。1コマ1コマをしっかり見せるような、映像的な手法なんです。1巻を買って「もう読まなくていいや」となる漫画もある中、引き込む力に圧倒されました。
主人公のお母さんが毒親なんですけど、これがめっちゃ怖い! 主人公・長部静一(おさべ せいいち)の従兄弟・しげちゃんが、崖から落とされて意識不明の重体になってしまうんです。その原因となるエピソードも、何も悪くない従兄弟母子に対する母のざわざわする目線から来ていて、息子を守るためになりふり構わない母親かと思いきや、そうでもない…と。序盤からこんな流れでこれからどーすんの!? と思いました。物語全体にまとわりつく不穏感がたまらないですね。
絵の描き方も独特で、スクリーントーンを使わないで全部表現してるんですよ。それが気持ち悪さを一層引き立てていて、もし映像化することになったら、あの空気感を表現するのは相当難しいと思います。いくらいい音楽を流しても、いい芝居ができていても、あの“ひたひたする不気味な感じ”は、漫画じゃないと味わえないんじゃないかな。
- 青年漫画 血の轍
- 3.5 (2480件)
「惡の華」「ハピネス」「ぼくは麻理のなか」「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」など、傑作を次々...
漫画家がいれば何もいらない! 漫画の生みの親を超リスペクト
――ご自身も出演された映画「アイアムアヒーロー」では、演じたキャラ・中田コロリ(なかた ころり)が、実際に片桐さんがモデルになっていたとか。
作者の花沢先生とお話したとき、そういうふうにおっしゃってました。ロッチの中岡じゃなくてよかった、と思いました(笑)。僕、よく人に「漫画に出てるよね?」って言われるんですけど、実際に実写版で出させてもらえるのは初めてだったし、今後もそうないと思うんです。だから出演が決まったときは、すごく嬉しかったですね。
――原作は映像化される前から読んでいたんですか?
読んでました。どうやって漫画家になったかとか、それまでにどんな挫折があって…とか、漫画家の成長が描かれた“漫画家漫画”がすごく好きなんです。そんな中、「アイアムアヒーロー」 (花沢健吾/小学館) では、主人公・鈴木英雄(すずき ひでお)の漫画家アシスタントとしての日常から始まって、徐々にゾンビ漫画になっていく流れが、もう秀逸ですよね。
今の漫画やドラマは、読者や視聴者に最後まで見てもらうために、山場をかなり前半に持っていく傾向があります。だからゆったりした物語の始まり方は、リスクが高くて難しいと思うんですけど、花沢先生が1巻丸々使って、ゾンビが登場し始める世界を描き上げたのはすごいとしか言いようがないです。
――他にもご自身がモデルになった漫画はありますか?
「えの素」 (榎本俊二/講談社) の完全版が出たときに、片ゲリ博士(かたげりはかせ)というキャラクターで登場させてもらいました。主人公が大量のうんこをするシーンがあるんですけど、作者の榎本先生から“一個描いてくれ”と言われたので、一番大きいコマのうんこの絵を描きました。榎本先生の家に行って、自宅から持っていったダーマトグラフという色鉛筆でうんこの絵を描くという、とても貴重な体験をしました。
先生はもともと映画監督になりたくて、映画学校に通っていたそうなんです。でも映画は一人では作れない。全部一人でやりたい、ということで漫画家になったらしいんです。だから映画のコマ割りのように、ストーリーの流れを絵で作るのが上手いんですよね。例えばサッカー漫画で、誰が誰にどんなパスを出したか、よくわからない漫画もあるじゃないですか。それは結局、止めたような絵の連続でしかないから。でも榎本先生の絵は、どっち側から誰が来てどっちに何をしたかというのが全部わかる。純粋な絵の上手さだけじゃなく、ストーリーの見せ方が抜群なんですよね。
――漫画を読むとき、その漫画家さんの表現力や技術力にも着目されるんですね。他に漫画家さんの底力を感じるのはどういうときですか?
漫画家さんにとって、漫画を一度描き始めたら自分の好きなように描き切るというのは難しいと思うんです。だってネットでは平気で「あなただけのものじゃありません」「ファンの気持ちを考えてください」とか言う人がいるじゃないですか。むしろお前のものじゃないだろう、ゼロから生み出してるのは漫画家なんだから、好きなようにさせろよ、って思いますけどね。
片桐仁
そんな中で、途中で休載も挟みながら、10年以上かけて連載していた「ピアノの森」 (一色まこと/講談社) が完結したときは、漫画家さんのすごさを見せつけられた気がします。ピアノを通じて登場人物が成長していって、主人公が最後に有終の美を飾ったのは、本当にみんながハッピーになるラストだったなと。主人公たちの幼少期から物語が始まって、年に一冊出るか出ないかくらいのペースのときもあったんですが、読者の気持ちを切らさずに引き込める漫画を生み出せるのはなかなか出来ないことですよね。
- 青年漫画 ピアノの森
- 4.5 (1208件)
森のピアノは、その少年を待っていた――。捨て去られたピアノ。壊れて音の出ないピアノ。いま、ひと...
――漫画家さんへのリスペクトの気持ちが強いんですね。
だって漫画家がいたら他に何もいらないじゃないですか。頑張って映画にしたりアニメにしたりしても、原作ファンが一言“違う”って言ったら終わりですから。「絵でここまで表現できるのか!」と驚くことが多いので、漫画の総合芸術としての限界に挑み続ける姿は、本当にリスペクトしかないです。漫画家になってくださってありがとうございます!
片桐仁
“隠してるけど…実はすごいオジサン”を演じてみたい
――今後、演じてみたいキャラクターは何かありますか?
もう45歳になるので、やっぱりオジサン役がいいんじゃないですかね。でもただのオジサンじゃなくて、“実はすごいオジサン”がいい。途中で出てきて、登場シーンは少ないけど、実はすごい能力を秘めているんじゃないかっていうキャラクター、漫画でも多いじゃないですか。ずっと出ている役は体力的に大変ですから(笑)。
片桐仁
漫画じゃないんですけど、昔からいいなと思うのは、戦隊ヒーローの基地にいる偉い人。彼らに“もっとこうしろよ”って指示する師匠ポジションの役は、もう少し年齢が上がったときにぜひやってみたいですね。
片桐仁
昆虫型の手作りスマホケースを片手に現れた片桐さん。漫画への愛や漫画家さんへの深いリスペクトを熱く楽しく語ってくれました!
写真:原恵美子
プロフィール
片桐仁(かたぎり じん)
1973年、埼玉県出身。多摩美術大学在学中に、コントグループ・ラーメンズを結成する。お笑い芸人の他、近年では舞台やドラマ、映画など幅広い分野で俳優としても活躍中。粘土作品展「ギリ展」を開催するなど、彫刻家としての側面も持つ。
◆不条理アート粘土作品展「ギリ展」
◆トゥインクル・コーポレーション 片桐仁 公式プロフィール
http://www.twinkle-co.co.jp/talent/katagirijin.html
◆片桐仁 公式Twitter
https://twitter.com/jinkatagiri_now?lang=ja
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作者
ヘルシー鮫
漫画と猫と今川焼きが好きなゆるいオタク。テニプリは青春にしてホーム。永遠に千石清純に恋してる。【twitter】@herusamecochan
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