5.0
涙がとまらない
障害を通したお涙頂戴の物語では全くなく
この作品には紛れもないリアルがあります。
車椅子に乗る彼とヒロインの表紙絵。
パーフェクトワールド。
意図するものをこれでもかと思い知らされます。
この作品の登場人物にはそれぞれの立場で
共感してしまうというか。
歩けないだけではない、常に合併症の危険に晒され無理は出来ない体だけど
普通の生活の中で色んなことを諦めながら生きているからこそ諦めきれないものもある。
建築士として仕事に励む彼は自分に厳し過ぎるくらい痛々しく真っ直ぐです。
普通に生きているよりも命のリミットを現実視しているからなのでしょうね。
実際にこの世なんて不確かだし明日は生きているのか誰にもわからないはずなのに。
紛れもない現実。
1日1日を大切に生きることの意味を考えさせられます。
車椅子に乗れる様になるまでのツラいリハビリも
建築士になるまでの道のりも
日常生活を普通に送れる様になるまで
一体どれほどの努力と苦労を繰り返しながら打ちのめされてきたのか?そんな背景まで考えさせられます。
別に今だって障害を受け入れられているわけじゃない。
そんな頑なだった彼の心をヒロインが寄り添いながらほどいていきます。
彼の母親の、誰かに苦労を負わせても息子に幸せになって欲しいという親心。
それとは相反する様なヒロインの親御さんの思い。
それぞれの立場で自分の子供の幸せを願うからこその気持ちも複雑。
誰も間違ってないよねって思う。
学生時代からのヒロインの片思い。
彼に対して頑張り過ぎてしまうヒロインが心配になりますが
付き合い出して更にお互いを思い合う優しさ。
またヒロインに片思いしている是枝さんの優しさ。
事故後の一番ツラい時から看護師として支えてきた長沢さんも
彼を腫れ物の様に扱うのではなく本当に彼を思うからこそ容赦のない厳しさがあり
本当に色んな人の想いが交差します。
- 5