5.0
「これ系」の最高傑作
ちょっと雑なカテゴリー化になるが、
1.短編形式のオムニバスであり、
2.登場人物が現実の枠を超えた奇妙な出来事を経験する、
というタイプの漫画を、「世にも奇妙な物語系」と勝手に呼ぶことにする。
古くは「笑うせえるすまん」とか「Y氏の隣人」、懐かしいジャンプのホラー枠で言えば「アウターゾーン」、個人的に好きな「走馬灯株式会社」なんかがこれに分類されるかと思う。
何が言いたいって、掃いて捨てるほどあるそのような作品群の中で、過去に数々の名作も生まれてきたこのジャンルの中で、本作が最高傑作なのではないか、ということだ。
この「世にも奇妙な物語系」には、話の「定型」が決まっているタイプが結構あって、例えば「笑うせえるすまん」であれば、喪黒福造に出会って「ドーン」とやられるのが「定型」だし、「走馬灯株式会社」であれば「自分の今までの人生を記録したDVDを見る」というのが「定型」になっている。
本作の場合、「アンテン様」という神様に願い事をすることが「定型」なのだが、まずこの「定型」が、作品の装置として素晴らしい。
設定自体はいたってシンプルで、「ひとつ得れば、ひとつ失う」という人生の鉄則みたいな感じなのだが、そこから生まれる制約や矛盾、得るものと失うもののバランスといったところから、哲学的な深みを感じさせつつ、しかもポップに物語を紡ぐ様は、芸術的ですらある。
そして、明確な「定型」がありながらも、話のバリエーションの振れ幅は尋常ではなく、背筋が寒くなるようなホラーから、抒情的なハートフルストーリーまで、どこを切り取っても完成度が高く、隙がない。
舞台設定も、現代から、戦後から、江戸時代あたりから、と多岐に渡るが、これは、アンテン様が「神」であればこそ可能な設定の自由度であり、また、アンテン様が長きに渡り、人間の本質を見つめ続けてきた、という重みも感じさせる。
アンテン様、という「神様」のあり方は、何だかとても魅力的で、しっくりきた。
私は基本的には無神論者だし、多くの日本人は本質的にそうだと思うが、こういう「神様」がすっと入ってくる読者は多いかと思われる。
そういう意味では、実に日本的な作品でもある。
私は、「私とワルツを」でボロボロ泣いてしまった。
大人になってから、漫画でこれほど泣いたことは多分ない。
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