4.0
レビューの是非
何も知らずに読みたかった。
が、私は頭から「娘、または娘と夫の両方が死んでいるのでは」と疑いながら読み進めた。
夫死亡説は離婚届のくだりでどうやらなさそうだったので、そうなると、娘一択。
そういう目線で読んでいれば、必然的に、消費されない朝食とか、溶けていくだけのクリームソーダとか、主人公を奇異の目で見る周囲の様子とか、伏線は目につく。
結果、よく出来ているな、という一定の感心はしたけれど、サプライズは得られなかった。
娘の死に気づいたのは、私が鋭いからではなく、他のレビューによってである。
さすがに、ネタバレありのレビューの中身は読まなかったが、レビューのタイトルなどで皆が「6話が」「6話が」と書いていれば、どうしても目に入るし、「嗚呼、これは6話でどんでん返しがある漫画なのね」という先入観は、どうしても出来てしまう。
漫画、というか、作品におけるサプライズには、大きく二種類ある。
ひとつは、作品に「どんでん返しがある」という前提で見ても、成立するサプライズだ。
推理小説もサスペンス映画も、基本のサプライズというのは、こっちだ。
読者や観客は、作品が自分たちを騙そうとしているな、という前提で見るし、あとは読者・観客の想定をどう裏切れるか、という勝負になるわけだ。
もうひとつは、「そもそもどんでん返しがある作品だと思っていなかった」という種類のサプライズだ。
推理モノやサスペンスとは違って、「えっ、そういう話だと思っていなかった」というサプライズである。
本作は完全に、後者だ。
そして重要なのは、後者の場合、「どんでん返しがある」ということ自体がネタバレなのだ、ということだ。
問題はそのどんでん返しの内容ではない。
どんでん返しがあると知ってしまった瞬間、サプライズのかなりの部分が失われるのである。
今まで結構な数のレビューを書いてきて、他のレビューに恨み言を言うようなことはほとんどなかったのだけれど、今回はちょっと、残念だった。
まあ、本作の場合、そのどんでん返しは「オチ」ではなく、言わばスタートのようなものなので、今後が楽しみなことに変わりはないのだが。
- 60