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傲慢で残虐なる富者と清廉で何も持たぬもの
祖母の代から伯爵に弄ばれている使用人の母を持つ名無しの娘。母は伯爵の子である彼女を伯爵と夫人から隠すため、娘の髪を染め、名無しのまま男として育てる。伯爵家の長男から激しい虐待を受けて瀕死の状態になったある日、伯爵令嬢に望まぬ公爵家との結婚話が持ち上がり、医者を呼ぶ代わりに伯爵令嬢の身代わりとして嫁がされることになる。
という、替え玉結婚の話なのですが、人生の前半を男として虐待を受けてきたにもかかわらず、「ヌリタス(無意味)」は弱いものに優しく、傷だらけになりながらも愛情深く、神々しいまでに心が強い女性になっていくんです。
彼女の父である伯爵は、娘婿になる公爵を貶めようと庶子である彼女を差し出すのですが、公爵はそんなこと気にしていない溺愛っぷり、彼女の真面目さ清廉さにその国の王までもが行動を変えられていく。残虐なエピソードの多い話ですが、偏った私欲や傲慢な考えに振り回され破滅していく者たちと、清廉なヌリタスの行動の対比が素晴らしく、胸がすくような感覚を味あわせてくれます。
ところで、祖母が貴族(多分王族)に、母が伯爵にもてあそばれて生まれたヌリタスは平民成分が四分の一しかありませんね。あれ?ヌリタスの母はじゃあむしろ伯爵より高貴な血筋?伯爵があまりに血筋を気にするからそんなことを考えてしまいました。
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