気軽に読める京極堂
京極堂が「京極堂」になる以前、教師をしていた頃の話。
本家のようなヘビーなテイストではなく、もう少し平和な類の謎を、中禅寺先生が解き明かす筋立て。
この作者が漫画化した京極夏彦の作品はいくつか読んだのだが、ストーリーといい作品の雰囲気といい、原作の再現度が素晴らしく、「鉄鼠の檻」のレビューでは、原作小説にとってこれほど幸福な漫画化はそうないと思う、ということを私は書いた。
本作は原作者に京極夏彦の名前はあるけれど、どうやら小説の漫画化ではなく、漫画オリジナルの話らしい。
それにどこまで京極夏彦が関わっているのかはわからないが、こんなものを出すあたり、京極夏彦自身、この漫画家をよほど評価しているのだろうと想像される。
京極夏彦の小説の難点として(まあそれは魅力と表裏なのだが)、どうしても「気軽には読めない」ということはあると思う。
よくも悪くも、それが京極夏彦という人間の作家性であるし、京極堂シリーズの特性でもある。
一見さんお断り、みたいなノリであり、それはまんま、京都のノリでもある。
その点、本作は随分とハードルが低く、気軽に、手軽に読める京極堂、という作風を実現している。
当然、それによって損なわれている部分もあるにはあるが、「ライトな京極堂」というのが本作のコンセプトなんじゃないかと思うし、それは成功していると言ってよいかと思う。
- 7
4.0