3.0
王妃の心情
シャー・ジャタンに寵愛されたムムターズ・マハルの人生が想像とは随分と異なるのだなと、この作品を読んで思った。王の寵愛を独占し、毎年子供を産み続ければ身体が衰弱するのも道理。
表面上は国母として崇めたてられながらも、陰では嫉妬と蔑みの的になり、息子にまで嘲笑されている。死産した夜でさえも、夫からは心情は無視され、その身を求められる。
夫は苦楽を共にしたムムターズを心から愛していたのだろうが、相手の心情まで慮ることが出来ないのは、王族だからだろうか?妻ムムターズの心情に寄り添うことが出来たら、歴史は変わっていたかもしれない。
ムガール帝国やオスマン帝国は後継者争いで、兄弟が壮絶な暗殺を繰り返すので、優しく思いやりのある人間では王は務まらないのかもしれないが。
王妃の心情を本当は誰一人理解していなかったのではと考えたら、彼女のために建てられた美しく荘厳な霊廟タージ・マハルが何とも哀しい建物に見えて切なくなった。
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