4.0
哀しくて美しい話でした
ぜひ最後まで読んで欲しい作品ですね。
浪子の清すぎる心のなんと美しい事か、
人生で一度きりのわがままを通した決意のなんと強い事か…
最後、できれば武男さんと一緒に過ごしてほしかったですね。
本当にそこだけがつらくて哀しかったです。
周りの人間が本当に非情に見えてしまって、ただ一つ救いだったのが、何があっても最後まで浪子と武男がお互いを想い続けていたことです。
だからこそ…本当に最後だけは二人を引き合わせて欲しかったです。
途中、二人の人の良さにモヤモヤする部分もあるんですが、時代背景を考えると、個人よりも家、女よりも男、子よりも親の意向が優先されるというのは仕方ないと思える部分もあり…
横恋慕した男があっさり死んだり、すれ違いすれ違いでどうにもならなかったりと、創作物ならドラマチックに描けそうなところをあえて現実的な非情さをもって描いているところも、この作品の良さだなと思います。
けしてハッピーな物語とは言えないのに、つらく悲しいながらも読後感がいいのは、やはり前述したように二人が最後まで互いを想い続けていたこと、その気持ちがきちんとお互いに伝わったことが大きいなと思います。
だからこそ浪子の最期のセリフも、独りよがりや自分へ言い聞かせてるような印象がなく、ああ本当に「今」幸せなんだなと思えました。
武男も、戦死していた方が辛くなかったのでは…と思いましたが、浪子の最期の想いを知れたことは、彼の救いになっただろうと思います。
すごくすごく美しいお話で、主要二人がとても好きなのですが、個人的な好みの部分で、やはりフィクションだからこそ(何度も言いますが)、二人が何の心配も不安もなく、穏やかで幸せな日々で最後締め括って欲しかった…というところで★4です。
あと山木!制裁受けてほしかった!継母はともかくとしても、山木だけは本当…娘突き返されただけじゃなくもうとことんまで落ちぶれたところが見たかったくらい嫌いでした(笑)
古いお話なので仕方がないですね。いずれにしてもとても好きなお話でした!
- 9