4.0
絵の綺麗さが切なさを増している!
こまかいことは他の方々のレビューにも同じご意見がありますので,私が感じたなかで他のレビューにはないかな?という事柄を。
切ない恋が小説でテーマになっているものを元にしている作品のようですが,私は小説は読んでいないものの,絵の綺麗さ,特に人物の眼差しなどの描き方が,物語りそのものに合っているのだと思います。
無料から課金して,出ている話は全て読みましたが,ロイドには悪い印象は抱きませんでした。むしろ初めて「他者に踏み込みたくなるほど惹きつけられる,主人公の最初は見せなかった辛さ,脆さを知りたいと胸を掻き乱される」ような様子に,単なる若者の成長や主人公に対する理解の深まりだけではなく,作品のなかでは「真」と表現されているものに限り無く近付いているのだろうということ,それは主人公のたっだ一人の異界の誰にも知られることのない人生に触れて初めて可能だったのだと感じさせるものがあります。誰よりも普段生活している世界では強者であるからこそ孤独でもあり,結局,誰にも理解できない所にいる点においては,ロイドと主人公は同じもしくは似ているのです。
主人公には,私はロイドの父親を,大した器もなく自分に死地に赴くよう決定打をあたえた男として,抱えているのは恋の片鱗だとしても,その感情を忘れてもしくは手放して欲しいです。
本来の年齢差がありますが,ロイドが若さ故に尊大だとしても,一人で背負ってきた経験や自身で切り抜けてきた危機に裏打ちされた強さ,誰かにおそらく頼らずに切り抜けて来た者だからこそ互いに互いしか分かり合えない,と思う関係に,実際に恋愛関係に発展せずとも,心では双方,絆を結んで欲しいです。
私には,主人公が,今でも,ロイドに彼の父親を見て,思い出す感情が,何だか無益なものに見えてしまいます。人間の記憶は,その人が生きて行きやすいように自覚なく変容するものでもあり,思い出は,戻らぬ日々だからこそより美しく,場合によっては美化されるものですが,それを辛い想いとともに23年も引き摺るほどの相手ではないとしか感じません。異界の未明の地にいるからこそ「記憶」が唯一の拠り所だとしても,今,目の前には,ロイドがおり,自分とは違い帰って行く存在だとしても,生身の人間と記憶の中の人間との差に,気づいて欲しいです。願わくば二人にとってこの出会いが,互いに僥倖となりますように。
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恋した人は、妹の代わりに死んでくれと言った。―妹と結婚した片思い相手がなぜ今さら私のもとに?と思ったら―@COMIC