この6年間、願った通りヨハンは人間としてバルデマルの後継者として生きてきたし、自分だってヨハンをギュスタブの跡継ぎである息子と呼び、公爵をお前の父と呼んでるのに。どうみたって、純粋で繊細で他人想いの子供なのに。娘と同じ姿で憎たらしい人間のふりをして高い地位を得られたのはどんな気分だって?石棺に閉じ込められたイドリスの記憶におびえながらも、母に姉と距離をおくべきだったと謝罪し、イネットの代わりに自分を閉じ込めてと泣く子にどうして涙がでるのか?なんて。人間だから、と答えたヨハン。何も知らない6歳の子供を地下にあるディコメンの恥である石棺の元へ連れて行き、大人も怖がる9つに生きたまま切り刻まれた羽を1枚残した悪魔が10人の司祭に封印されたという悪魔伝説を語り、石棺の前で、祖先が悪魔と契約した時に切って血を出した、ディコメンの長男が受け継ぐ短剣で、ヨハンを何度も切り付けて、落ちた左手が勝手に引っ付いて、彼こそが不滅の肉体を持つ、想像するだけでもおぞましいディコメンの悪魔だと告げた。
母は石棺に手を付けた者の末路を知っていたのに、願い事をしてしまった経緯を話す。ヨハンの父という愚か者が飼い犬カーザーに母の兄ディートリッヒを葬り、石棺を母の元へ送った事を石棺の番人クレチマンに聞き、その上で、跡継ぎを産めと執拗に苦しめた。自分で石棺を開けられない父は、石棺を開けろと体中で母を責め、後継者を石棺に願ってしまった。願い事をせずにあの世にいくべきだったのに、生きてしまったせいで、かわいい小さな娘のジオビネタがひどい苦痛を味わってしまう。お前がしたことを見て、可哀そうな娘を閉じ込めてでも守りたい。という母。願い事をしたのは母で、キスをしたのはイネット。ヨハンは何にも悪くないし、自身を人間だと疑わず、一生懸命周りの期待に応えてきたのに、この仕打ちはあまりにひどい。
-
2
魔鬼
070話
魔鬼(70)