5.0
ひとりぼっちの魔女の秘めた恋のお話
森の湖のほとりに住む先代の魔女だった祖母を亡くしてからずっと天涯孤独のロゼは、現在、跡を継いで、魔女の仕事を孤軍奮闘して取り組んでいる。そんなロゼは、エリート騎士のハリージュに四年前から片想いしている。ハリージュは気づいていないが、四年前に王都の街で、ロゼは彼に救われていたのだ。
祖母を亡くしたばかりの頃で、街の人たちが祖母の死を喜んで悪口を言っていたところ、ハリージュが 「 魔女も人には違わない。魔女の死を喜ぶ奴など胸糞悪い。亡くなった魔女は、善き魔女だった。」と言って亡き祖母を庇ってくれたことで救われて、一目惚れしてしまったのだ。
そのハリージュが、惚れ薬を処方してくれと訪ねて来た。ロゼは、できる限り長く彼と接する時間を保ちたくて、入手困難な薬の材料を用意してくるようにと、次から次へと無理難題をふっかける。
ハリージュの来訪は、孤独なロゼにとって、たった一つの尊い宝物のような時間、胸がときめく大切な刹那のひとときなのだ。
ところで、馴染み゙の商人のティエンさんは身寄りのいないロゼにとって兄のような存在で、祖母亡きあともずっと温かく見守ってくれている。素敵なローブを見繕ってくれる場面は、ほっこり心和んだ。
ロゼは勝手に失恋したと勘違いしていたが、実は、ハリージュが処方を求めている惚れ薬は、彼を兄と慕う王女が依頼したものだった。
この物語は非常にゆっくりと、それこそまるで湖の上をたゆたうように進み、もどかしいほどになかなか進展しないのだが、それがこの作品のツボなのだろう。静寂な森の中の湖のほとりで紡がれてゆく恋心の揺らぎが詩的に描かれている。
まともに食事をとっていないロゼの為を思ってパンなどを差し入れに来てくれるなど気遣ってくれて、とっても心優しいハリージュ。個人的には彼と上手くいってほしいけれど、、、さて、ロゼの恋は実るのか? やはり失恋してしまうのか? 先の展開が凄く楽しみです。
まぁのんびり読んでいこう。
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