1.0
作品としては面白いが原作者の意図は無視
最初はこの漫画は大変面白くて良いと思った。
原作を読んだのは四半世紀前で記憶は朧げ。
双子の立場が取り変わる経緯が原作では割とザックリと乱暴に描かれていたと記憶しているが、漫画の方では細やかに無理なく描いており納得できたのでそのまま課金して読み進めた。
原作ではやや荒っぽいストーリーの流れを丁寧にエピソード埋めていて破綻がなく面白い。
にも関わらず全部読み終わった時に疑問を感じた。
この作者は、「とりかへばや物語」を読んだ時に女性が感じる納得いかないところを全部都合良く改変し大団円にしているので、結果的に原作が作品に込めたテーマを破壊していると感じる。
原作「とりかへばや物語」のキモは、2人の女性が男性社会に挑んで挫折する物語だと思う。
東宮は内侍として出仕した男君(ここでは睡蓮)にさっさと妊娠させられ、東宮の地位を失ったと記憶している。その後男君と恋愛したりはなかったと思う。ただ、物語の後半部分を覚えていないので、或いは正室として降嫁するエピソードはあったかもしれない。
女君(沙羅双樹)の方は無事に男の子を産むが、助けに来た男君と入れ替わって我が子を捨てる。
最終的に中宮になった状態で、参内してきた我が子に再会し、我が子なのに声をかけられない事を嘆き悲しむ。そして男の子の方は父親に「母親に会ったかもしれない」と告げる。その切なさが非常に印象に残っているので、確かそんなだったと思う。
中宮という最高の地位にいながら決して幸せではない。
男の子が死産であれば全てが上手く回るので見事な手腕とは思うが、大事な部分を改変しているので納得がいかずモヤモヤする。
あと、原作は当時としては珍しく「もののけ」的なことは描かずひたすらリアルなのだがそこもあっさり神秘的な力に頼っているのも気になった。
ここまで改変すると、「とりかへばや物語」の翻案と称して良いのか疑問に思う。
ただ、少女漫画としては大変面白く見事な作品だと思う。
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とりかえ・ばや