rokaさんの投稿一覧

投稿
754
いいね獲得
22,449
評価5 20% 149
評価4 28% 213
評価3 31% 231
評価2 17% 126
評価1 5% 35
1 - 10件目/全152件
  1. 評価:3.000 3.0

    もっといい題材を

    ネタバレ レビューを表示する

    現代の有名怪談の漫画化シリーズ。

    はっきり言ってホラー漫画として魅力があるとは言えない。
    が、これは漫画家のせいではなく、原作(というか元ネタというか)段階のレベルである。
    そもそも「猿夢」という話自体が、怪談としてつまらないと私は思っていて、これをわざわざ漫画にするのもなあ、とは最初から思っていた。
    それでも読んだのは、私が常軌を逸した怪談オタクであるのがひとつ、もうひとつは、この漫画家の「原作を漫画に落とし込む」技術の巧みさを信頼しているためである(京極夏彦の作品の漫画化を通じてそう思った)。

    その意味では、漫画家は流石、いい仕事をしていると思う。
    「猿夢」を漫画化するなら、これ以上はちょっと無理だよな、というところまできちんと到達している。
    特に、ラスト、語り手のある種の諦念、夢を見るのかどうかも半信半疑だけど、いずれ見てしまうような気はするし、どこかでそれを受け入れて生きていくしかないよね、という不穏で微妙な絶望を、ワンカットで表現した技量は素晴らしく、明らかに元ネタを超えている。

    が、悲しいながらどこまでいっても猿夢は猿夢なので、もっといい原作をこの人に任せてくれよ、という思いが残った。

    • 2
  2. 評価:3.000 3.0

    ぶれる文脈

    ネタバレ レビューを表示する

    単純に、一人の女性が自立を獲得する話、として私は読んだ。

    こういう話は、往々にして夫を極端な悪者にする傾向にある(読者を主人公に肩入れされるためにはまあそれで正しい)が、本作はちょっと違って、妻も結構な駄目人間である。
    自分の力で生きていく、というものがまるでない。
    ただ、繰り返し、夫に依存して何となく生きてきたそういう女性が自立する、という話なのだから、これもこれで正しいかと思う。

    夫婦の関係性の描き込みはかなり浅いところにとどまっているが、そもそも、夫婦の問題、というのはおそらく本作の本筋ではないであろうから、それもまあ、よしとしよう。

    ただ、どうにも受け入れがたかったのは、自立への道を歩み始めた主人公が、容易にイケメン税理士に「抱き締めて」とか言っちゃう浅薄さと、それに税理士があっさり応じてしまうという都合のよすぎるロマンス的な文脈である。
    こういうのが一定の読者層に効果があるものだというのは理解はするが、私はどうしても許容できない。
    こういう生半可な描写があると、主人公の自立、という大切な文脈がぶれる。
    何がしたかったんだお前は、となる。
    お前、というのは主人公ではない。
    作品そのものだ。

    まるで別の漫画の話になるが、「闇金ウシジマくん」の中で私が最も好きな台詞のひとつに、「孤独を受け入れないと大人になれない」というのがある。
    孤独というのは何も、一人ぼっちで生きることを意味しているのではない。
    一人でも生きていけるという覚悟と能力のある人間になれなければ、結局食い物にされるんだ、とウシジマくんは言っているわけだ。

    本作の主人公の「抱き締めて」は、要するに「一人で生きていく覚悟がないわ」という叫びであって、それは自立からも、そして実のところ愛からも、最も遠いところにある。
    それを本作でやるべきではなかったと私は思う。
    百歩譲って、税理士、突っぱねろや。
    「あなたはまだそんなことを言ってるんですか?」って言えや。
    ウシジマくんばりに迫力出せや。
    まあ、無理か。
    そうだわな。

    • 13
  3. 評価:3.000 3.0

    そもそも原作が

    大正時代のホラー(と呼んでいいものか)小説が原作。
    原作は未読だったが、漫画を読んだ後で、青空文庫で一応読んだ。

    原作はともかく漫画としては…という作品は多々あるが、本作の場合、そもそも原作がどうかと思う。
    雑なイメージとしては、宮沢賢治の「注文の多い料理店」みたいな作品の枠組みに、この時代特有のエログロナンセンス的な風味をつけたもの、という印象を持った。
    ホラーというジャンルは洗練という概念に囚われると上手くいかないと私は思っているし、ある種の「訳のわからなさ」というのが原作の魅力であることも一定の理解はできるが、ここまで荒っぽいと、流石に支離滅裂という感想が先に立ってしまい、受け入れ難かった。
    こういう作品を読むと、文学もやはり進歩しているのだということがよくわかる。
    少なくとも本作が「時代が変わっても色褪せない」的な名作であるとは到底思えなかった。

    漫画としては、作品の空気感をなかなか巧みに伝えていたとは思う。
    だが、繰り返し、そもそも原作が、という話である。
    どうでもいいけど、作中、主人公が屋敷を出ていく・いかないのくだりはあまりに冗長で、「いい加減にしろ」と私は叫んだ。

    • 4
  4. 評価:3.000 3.0

    どうしてこんなことに

    ネタバレ レビューを表示する

    あの「ぬ~べ~」の読み切り限定復活、みたいな漫画。
    イメージとしてはほとんどスピンオフに近く、完全にコメディである。

    もともと「ぬ~べ~」は、純然たるホラー漫画というわけではなくて、ホラーの題材を用いた、ギャグありバトルありの少年漫画、という位置づけの作品だと思っているから、コメディであること自体は別に構わない。
    しかし、申し訳ないが、そのコメディがはっきり言って絶望的につまらない。
    昔は楽しく読んだ漫画だし、何かいいことを書きたいが、正直、フォローのしようがない。
    過去のキャラクター総出演的なサービスもあるのに、かつての「ぬ~べ~」ファンであれば読んでみてもいいかもしれない、と発言することすら躊躇われる。

    少年時代の記憶に免じて、星をひとつ足した。

    • 4
  5. 評価:3.000 3.0

    大きすぎる違和感

    類い稀なる絵画の才能を持つが、経済的にはあまり恵まれていない高校生の主人公。
    あるとき、同じ美術部の友人の絵の具を盗んで使ってしまうところを、別の部員に見られてしまい...というストーリー。

    私はコーエン兄弟の映画みたいな転落劇が結構好きで、スタートはワクワクした。
    決して「いい奴」ではない、周囲を見下して生きているような主人公の屈折した造形もよかった。

    しかし、話が進むにつれ、「絵の具をちょっと使ってしまったことをなぜにそこまで」という違和感がどうしてもつきまとってしまい、根本のところで話に入り込めなかった。
    作中では、友人の絵の具を無断で失敬するという行為が、他の全てを犠牲にしても隠蔽せねばならない大罪のように描かれているのだが、これ、どう考えてもおかしい。
    主人公は、自らの行為を目撃した部員に脅されて、どんどん深みにはまっていくが、「いや、そんなことをするくらいなら、『ごめん!どうしても金に困ってて、あのとき、お前の絵の具勝手に使ってもうてん、ホンマごめん!』って言ったらええですがな」という感情があらゆる場面でいちいち湧いてきて、その大きすぎる違和感を払拭してくれる要素は、本作には存在しなかった。

    • 4
  6. 評価:3.000 3.0

    可もなく不可もなく

    先に読んだこの作者の漫画の作風から、「怖い話」とは言っても、てっきりヒトコワ系というか、そういう路線だと勝手に思っていた。
    そしたら、完全に普通のオカルト路線で、いささか面食らった。
    それは私の勝手な先入観であって、オカルトも好きだし、別にいいのだが、オカルト漫画として何か特筆するところがあるかというと、特にない。
    ことさら非をあげつらうつもりもないが、賛辞を送るべき点もない。
    ホラー漫画って、そういう「可もなく不可もなく」みたいな地点からは、最も遠くあるべきだと私は思うのだけれど。

    • 5
  7. 評価:3.000 3.0

    結婚なんてララーラーララララーラー

    簡単に言うと、結婚を促進するための国の政策として、公務員が業務として「結婚」の相手をやる、という話。
    例えば、あなたが結婚する気になれない男性だったとして、役所に申請すると、国があなたのところに「妻役」の女性を派遣する。
    その人との一年間(一年間ですよ!)の生活を通じて、あなたが「結婚っていいなあ、よし、俺も結婚しよう」と思えれば、ミッション成功、ということで。

    もう、どこから突っ込んでいいのか、書いていて何か嫌になってきたが、いくら何でも設定に無理があるだろ。
    国の狙いが浅はかすぎるのは当然として、特に致命的なのは一件の依頼につき一年間、という期限である。
    公務員の人生を何だと思っているんだ。
    いくら公僕と言ったって酷である。
    これは完全に設定ミスで、せめてこれが三か月とかだったなら、少しは印象も変わったかと思う。

    ただまあ、結婚に絶望しているような漫画が世に溢れる中で、結婚というもののポジティブな面を描こうとした、その心意気や、よし。
    ただ、この漫画で描かれる「結婚の素晴らしさ」というのは、あまりに浅薄である。
    結婚なんて、それ自体は別に、素晴らしいものでも何でもない。
    結婚は、ただの社会制度、システムだ。
    システムが本当の意味で人を幸せにしてくれるわけがない。
    そして、比喩的に言えば、結婚なんて、ギャンブルだ。
    ギャンブルだから、勝つこともあれば、負けることもある。
    賭けるのは金だけではなく、人生というチップである。
    「結婚しない方が幸せだった」という人だって当然いる。
    それでも、「結婚してよかった」と思えたとしたら、結局のところ、運を含めてあなたのおかげであり、あなたが勝ったからだ。
    別に「結婚」があなたを幸せにしてくれたわけじゃない。
    結婚に夢があるのではなく、ずっと一緒に生きてゆくことが夢になるような誰かがいてくれることが、素晴らしいのではなかろうか。
    私は、そう思うけどね。

    • 8
  8. 評価:3.000 3.0

    本質的に再現不可能

    私は以前から雨穴さんのYouTubeが好きで、結構見ていた。
    テレビとも映画とも違う、新しい時代の映像表現として、感嘆と敬意を持って視聴していた。
    YouTubeという媒体にはネガティブな側面もあるが、こういう才能が出てくるのも、時代だな、と。

    ただそれは、やはり「ああいう表現方法」であるからこその魅力であって、話を単体でそのまま漫画のフォーマットに落とし込んでも、あの独特の吸引力を再現することは到底出来ない。
    もちろん、そんなことはわかっていて読んだわけだ。
    だから、本質的に再現不可能な映像表現に、漫画という媒体でどう挑み、どう勝負するのか。
    漫画は漫画として、漫画にしか出来ない「何か」が絶対にあるから。
    それが、私の焦点だった。

    本作に漫画としての大きな瑕疵があるわけではない。
    丁寧なタッチには好感も持った。
    だが、残念ながら想定を超えるような何かは何もなかったし、これだったら雨穴さんのYouTubeを見ていれば十分だろ、という以上の感想は沸かなかった。

    • 4
  9. 評価:3.000 3.0

    醜いものを醜く

    就活に失敗した、いたってノーマルな(まあ結果的にはノーマルじゃなかった、という話なんだろうけど)青年が、裏社会と繋がりのある会社に入社したことで、徐々に悪の道に手を染めていく、みたいな話。

    話の進みはテンポよく、それなりに楽しくは読んだ。
    しかし、根本のところで、私は説得力もリアリティーも感じられなかった。

    ひとつは、主人公の変貌について。
    本作は、「普通の人間が裏社会の闇に触れて堕ちていく」という文脈で主人公の変化を描いているのではなくて、「主人公にはもともとそういう資質があった」という描き方をしている。
    それは「転落」というより「覚醒」に近い。
    それ自体は別にいいのだが、こいつにその「資質」がある、ということを、私はどうしても信じられなかった。
    「普通の人間」が根元的なレベルの価値観を変動させてゆく様を描くのは、とても難しい。
    だからこそ、そこがこういう作品の勝負どころだと思うのだが、「いや、こいつもともと悪の素質あってん」というのは、都合のいい逃げのように見えてしまった。

    また、裏社会のディテールについても、何かと浅い気がして仕方がなかった。
    もちろん、私を含めた読者の多くは、裏社会のことなんか実際には知らない。
    漫画だから脚色も必要だろう。
    しかし、少なくとも「こういうこと実際にあるんだろうな、知らんけど」と思わせるだけのリアリティーは欲しいし、それが満たされているとは思えなかった。

    個人的には、一番決定的に入り込めなかったのは、「醜いものをちゃんと醜く描いていない」と感じたことだった。
    これは単なるの印象の問題だし、上手く言えない。
    ただ、作品の中で醜いものをちゃんと描くというのは、結構勇気の要ることだと私は思っていて、本作はそこから逃げているように感じた次第である。
    まあそのぶん、エネルギーを使わずに気楽に読める、というのはある。
    それをこの種の作品の美点として数えられるかは、何とも言えないのだけれど。

    • 6
  10. 評価:3.000 3.0

    並んで、向き合って

    ネタバレ レビューを表示する

    あまりに頻繁に広告が流れてきて、「ねえ、何で妻は口をきいてくれないのかな!?何でかな!?」と夫に泣きつかれているような気分になり、「うるせえなあ、読んでやるよ」と読み始めた。
    そして一度読み始めると、さすがに謎、というか疑問が解けるまでは読んじゃうじゃんか。
    似たような読者は多かろう。
    とにかく読ませれば勝ち、という商売と考えるならば、まあ、成功なんじゃないの。
    読んだ私の負けである。

    話の前半(というか大半)は夫の視点で進むので、「なぜ妻が」の疑問とそれに対するストレスを読者は夫と共有することになるのだが、正直「いや、お前が気づいてないだけで妻の側にはずっと不満があって、何かのきっかけで糸が切れたんだろ、どうせ」という予想とも呼べない考えはずっとあり、実際そのとおりの内容なので、話としては別に面白くも何ともない。
    まあ、現実的にはこんなもんだろう。

    ちょっと評価したのは、夫と妻の視点、双方を描くことで、「気づかない」夫の愚かさがわかりやすく描かれている点。
    夫の見ている世界と妻の見ている世界は違うのよ、と。
    こういうケースの典型だが、男って本当にね、馬鹿よね。
    (ちなみに私は男性である。)

    あと、これは本質的には作品に対する評価とは無関係だが、私はこの漫画の夫も妻も嫌いである。
    夫については言うまでもない、シチュエーションだけ見れば同情したくなるが、馬鹿すぎる。
    妻については、何であれ、無視はいけないと私は思う。
    それをやるなら別れなきゃ駄目だ。
    別れないなら向き合うべきだ。
    別れるか、向き合うかだ。

    私は私なりに、何年か夫という立場をやってみて、今つくづく思うのだが、夫婦は、本質的には「向き合う」相手ではないと思う。
    横に並んで、歩んでいく、抽象的な言い方になるが、お互いを見るのではなく、二人で並んで、何かを見る。
    二人で見るその景色が、世界が、あまりずれていないならば、多分、わりに上手くいっている夫婦なのだろう。
    (この漫画の夫婦はそれがずれまくっている。)
    ただ、向き合わないといけない瞬間というのは、どこかで来る。
    そういうときに、逃げちゃいけないんじゃないかな。
    少なくとも、一度は愛した相手ならばね。

    • 32

設定により、一部のジャンルや作品が非表示になっています