rokaさんの投稿一覧

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81 - 90件目/全109件
  1. 評価:5.000 5.0

    揺さぶられる感傷

    昔読んだ小説の中で、語り手が「今までの人生で得たものと失ったもののリスト」を作ろうとするくだりがあった。
    まだまだ長い人生だ(と思う)が、私はこれから、何を得て、何を失って、生きてゆくのだろう。
    そして、死んでゆくのだろう。
    この漫画を読んで、そんなことに思いを馳せた。

    「うせもの」は「失せ物」である。
    「探し物」ではないのだ、本来は。
    だから、私たちはその多くを、見つけられない。
    取り戻せない。
    でも、永久に失ってしまった何かと、誰かと、もう一度、向き合うことが出来たなら。
    せめて、この世の別れの際に。
    そんな感傷を、ぐらんぐらんに揺さぶられる作品。
    駄目だ、涙なしには読めなかった。

    • 7
  2. 評価:5.000 5.0

    漫画の可能性

    高校のとき、この漫画を読まなかったなら、私は今ほど漫画を読むようにはなっていなかったと思う。

    十代の自分が「寄生獣」から感じたのは、一言で言えば、可能性だった。
    おいおい、漫画ってこんなことが表現できるのかよ、という可能性である。
    それを、手塚治虫から感じた人もいるだろう。
    鳥山明から感じた人もいるだろう。
    私にとっては、それが「ジョジョ」と「寄生獣」だった。

    本作は、「ET」的な不思議な友情の物語でもあり、「ジョジョ」的な頭脳戦のバトル漫画でもあり、答えのないかもしれない問いを投げかける哲学的な作品でもあった。
    それは例えば、曖昧な結末を読者に丸投げするのとは、ちょっと違う。
    だって新一は、自分の答えを出したから。
    でも、私たちの答えは、どうだろう。

    優れた作品は、いつだって、答えではなく、問いを残す。

    • 14
  3. 評価:5.000 5.0

    不謹慎すら引き受けて

    いじめというデリケートな問題を「ホラーの題材」になんて不謹慎だ、という批判も理解はできるし、そのあたりは、難しい。
    ただ、そういう不謹慎すら引き受けて、マジなホラーをやろうとしたのではないか、と。
    私としては、丁寧に作り込まれた作品に尋常ではない気合いを感じ、批判する気にはなれなかった。

    もう、序盤からやられた。
    一度希望という餌を与えてから絶望を叩きつけるとか、そんなハイレベルな小学生のいじめ、ありかいな。
    でも、現実に、ありなんだろうな。

    読み進めるうちに、気づく、というか、思い知る。
    ああ、これが続くんだ、と。
    希望の影がちらつく度に、絶望への予感に包まれる。
    その読者サイドの絶望は、作中の登場人物たちの絶望とシンクロする。
    もう終わってほしい。
    これ以上読みたくない。
    それでも読ませる吸引力の恐ろしさ。
    これが一級のホラーでなくて、何だろう。

    • 4
  4. 評価:5.000 5.0

    ルールの発明

    既にルールの決まっているゲームをモチーフに作品を描く人はたくさんいる。
    というか、普通はそうだ。
    スポーツというゲーム、バトルというゲーム、恋愛というゲーム。
    その制約の中で、いかに優れた作品を編み出すか、という勝負が、普通だ。
    でもこの作者は、次から次へと、新しいゲームのルールを編み出す。
    その点においては、ちょっと追いつける人がいないんじゃないかと思う。

    • 9
  5. 評価:5.000 5.0

    漫画と映画

    私の大好きな映画「セブン」と似ていた、というか、似すぎていた。
    悪く言えば模倣、よく言えばオマージュ。
    私は、好意的に受け止めたい。
    漫画として、とても面白かったから。

    基本的な作品のトーンやモチーフは「セブン」を踏襲しつつ、パリッとオリジナルな部分も光る。
    そして、ところどころで、とても「映画的な」表現がある。
    特に(ネタバレギリギリだが)、「彼氏」のシーンや「背中」のシーンなんかは、映像化することを念頭に置いて描いたのではないかと勘繰りたくなるくらい、しびれた。
    映画の表現を、漫画に活かす。
    それは、手塚治虫がやったことでもある。

    余談だか、その「背中」のシーンは実写映画版ではカットされており、何やってんだ制作者、とひどく失望した。

    • 3
  6. 評価:5.000 5.0

    飽き飽きしているあなたに

    正直、「ゲームもの」の漫画には、飽き飽きしていないだろうか。
    「またそういう系ね」と思いつつ惰性で読んでしまう自分に、うんざりしていないだろうか。
    そんなあなたに、「今際の国のアリス」。

    とにかくひとつひとつのゲームがよく練られていて、完成度が高い。
    緊張感も半端じゃない。
    子どもの頃のかくれんぼに感じたような、無邪気なドキドキを思い出した。
    アイデアの数々と確かなクオリティーでもって、最近の「ゲームもの」への失望感を完全に蹴散らしてくれた。
    感謝したいくらいである。

    結末は賛否両論あると思うが、私はこれ以上のオチも浮かばないし、特に文句はない。
    ただまあ、途中のスピンオフはちょっと多すぎる気もする。

    そして、いかんともしがたい、「今際の国」への憧れ。
    学校や職場や家庭がそれなりに充実していたりして、「まあ、幸せだよな」と感じていたりなんかして、決定的な不満や致命的な欠陥が日常にあるわけでもなくて。
    それでも。
    心の片隅に、魂の奥底に、もしかしたら、潜んでいないだろうか。
    現実の日常の秩序が全て崩壊した世界に対する、ないものねだりの妄想や、渇望が。
    私にも、もしかしたら、あなたにも。
    そんなあなたに、「今際の国のアリス」。

    • 9
  7. 評価:5.000 5.0

    矢吹丈の哀しみ

    読んだのは高校生の頃だった。
    魅力的なキャラクターの造形、ボクシングの試合の描写のシンプルなエキサイトも印象に残るが、最も忘れがたいのは、矢吹丈という男の哀しげな目だった。
    子ども心に、「この人は、究極的には、誰ともわかり合えないのではないか」と感じたのを覚えている。
    私は矢吹丈に強く憧れながら、同時に、決定的に拒絶されたような気持ちで、ずっとこの漫画を読んでいた。
    そのようなことを漫画の主人公に対して感じたのは初めてだったし、以来、一度もない。

    • 8
  8. 評価:5.000 5.0

    私の青春漫画

    私の青春漫画。
    ミステリ部分が単純に面白かったことはもちろんだが、だらしない金田一少年が不意に見せる、「妙に出来た人間」としての顔が好きだった。
    「異人館村」で犯人に放った絶叫、
    「飛騨からくり屋敷」のラスト、ある意味での「共犯者」への捨て台詞、
    「黒死蝶」で燃える館を見ての呟き、
    「雪影村」のスタンド・バイ・ミー的なモノローグ。
    嗚呼、思い出は尽きない。

    昔は、ドキドキしながら読んだ。
    今では、昔の友人に会うような、不思議なノスタルジーが込み上げる。

    • 32
  9. 評価:5.000 5.0

    祭りの前の怖さ

    今のところ、だが。
    幽霊も吸血鬼も出てこない。
    狂った、というほど異常な人間も見当たらない。
    何より、まだ、何も起きていない。
    なのに、怖い。
    平坦にすら見える日常が、怖い。
    そこに、どうにも破綻の予感がして仕方がない。
    何かとんでもなく不幸なことが、いずれ起こるに違いない、という予感的な怖さ。
    不穏、という言葉が一番近いのか。
    でも、それでも足りない。
    これは、漫画でしか描けない種類の怖さである気がする。

    この作者は、「漂流ネットカフェ」や「ハピネス」のような、現実の枠を超えたストーリーよりも、日常を舞台にする方が、本領発揮となるのではないかと感じた。

    余談だが、群馬県出身の私にとっては、登場人物たちの群馬弁はすっと入ってくるし、郷愁を誘われるものであった。
    ちょっと得をした気分である。
    だが、その郷愁すら、うすら寒い恐怖を連れてくる。
    何てことだ。

    この怖さは、素晴らしい。
    これからきっと、何かが起こるのだろう。
    そうなったときにも、どうか素晴らしい漫画であってほしい。
    「祭りは準備をしているときが一番楽しい」などというが、それを超える祭りがこの先にあることを願ってやまない。

    • 111
  10. 評価:5.000 5.0

    理想的な少年漫画

    「胸が熱くなる」とは、こういう漫画のためにある言葉ではないか。
    たったひとつ残念なのは、少年時代に読まなかったことだ。
    それでも、熱くなれる。
    「HUNTER×HUNTER」と双璧をなす、理想的な少年漫画だと思う。

    • 15

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