3.0
アンバランスな軽さ
「怨み」というおどろおどろしいテーマに反して、作品の手触りは軽く、爽やかですらある。
ひとつには絵柄のせいもあるだろう。
このアンバランスな軽さを、どう感じるかで、好みが分かれそう。
読みやすくてポップだ、と肯定的に思うか、物足りないと、感じるか。
個人的には、もっとどろどろしたものが欲しかった気もする。
-
4
52位 ?
「怨み」というおどろおどろしいテーマに反して、作品の手触りは軽く、爽やかですらある。
ひとつには絵柄のせいもあるだろう。
このアンバランスな軽さを、どう感じるかで、好みが分かれそう。
読みやすくてポップだ、と肯定的に思うか、物足りないと、感じるか。
個人的には、もっとどろどろしたものが欲しかった気もする。
いじめというデリケートな問題を「ホラーの題材」になんて不謹慎だ、という批判も理解はできるし、そのあたりは、難しい。
ただ、そういう不謹慎すら引き受けて、マジなホラーをやろうとしたのではないか、と。
私としては、丁寧に作り込まれた作品に尋常ではない気合いを感じ、批判する気にはなれなかった。
もう、序盤からやられた。
一度希望という餌を与えてから絶望を叩きつけるとか、そんなハイレベルな小学生のいじめ、ありかいな。
でも、現実に、ありなんだろうな。
読み進めるうちに、気づく、というか、思い知る。
ああ、これが続くんだ、と。
希望の影がちらつく度に、絶望への予感に包まれる。
その読者サイドの絶望は、作中の登場人物たちの絶望とシンクロする。
もう終わってほしい。
これ以上読みたくない。
それでも読ませる吸引力の恐ろしさ。
これが一級のホラーでなくて、何だろう。
既にルールの決まっているゲームをモチーフに作品を描く人はたくさんいる。
というか、普通はそうだ。
スポーツというゲーム、バトルというゲーム、恋愛というゲーム。
その制約の中で、いかに優れた作品を編み出すか、という勝負が、普通だ。
でもこの作者は、次から次へと、新しいゲームのルールを編み出す。
その点においては、ちょっと追いつける人がいないんじゃないかと思う。
ベースは仏教界なのだが、そこに、昔話から現代ジャパニーズホラーまで飲み込んで、ごった煮にした不思議な世界が広がる。
滅茶苦茶のはずなのに、しっかりバランスがとれていて、とっちからったカオスでありながら、漫画としてちゃんとまとまっている。
こういうのをセンスというのかな。
その絶妙な世界観が楽しい。
もともと、ホラーとギャグとは、線引きの難しいものだと思う。
小さい頃に怖くてしょうがなかった「ホラー漫画」が、今読むとことごとくギャグだったりする。
この作者はそれをよくわかっていて、本作では確信してギャグの方向に振り切っていると思う。
絵が「古きよき」ホラー漫画タッチであることもあり、妙にノスタルジックな味わいがあった。
当たり前のことなのだが、世の中には、本当に色んな漫画の表現があるんだな、と感じた。
ストーリーはあってないようなもので、アメリカのB級ホラー映画の表面をなぞった程度のものだが、そのB級スラッシャーに、この絵で挑んだことに意味がある。
例えて言うなら、ディズニーがB級スプラッターのアニメを制作したような感じである。
もちろんディズニーは、そんなもの、作らない。
だからこの漫画は、ちょっとした発明なのではないかと思う。
個人の好みは置いておくとして、漫画の可能性を感じさせてくれる作品に出会えるのは、嬉しいことである。
基本的にはB級テイストだが、意外と丁寧に組み立ててあるし、終盤のどんでん返しも上手く決まっていたと思う。
ただ、この手の漫画は主人公サイドに感情移入できる対象がいないと、どうにもテンションが上がらない。
その点は、残念。
あと、仮にも一人の一般ピーポーの悪霊だか怨念だかが、あそこまで派手になるのはいかがなものか。
サラッと読める、ライトな復讐もの。
それが長所でもあるし、短所でもある。
このジャンルも漫画の世界でかなりメジャーになり、色々と凝った作品が生まれている中で、今、この漫画が、どうなのか、と。
この軽さを「逆に新鮮」ととるか、「物足りない」と感じるかは、あなた次第。
ストーリーが本格的に動き出すまでにやや時間がかかるが、それもこの漫画の計算にきちんと組み込まれている気がした。
世界観も物語も、実に緻密に組み立てられており、静かだが、非常にスリリングで、サスペンスフルである。
また、島の描写も、極めて丁寧で美しい。
「設定ありき」で、作品の全貌が決まらない中で見切り発車し、挙げ句に迷走する、というような漫画が多々ある中、この緻密さは称賛に値する。
主人公は魅力に乏しい反面、瀬里沢の冷徹な強さは、際立ってカッコいい。
ノれる曲とノれない曲って、やっぱりある。
「ノリのいい曲」だからって、ノれるとは限らない。
このリズムに、メロディに、ノれる人がいるのはわかるけど、自分はノれない。
そういうことって、ある。
それが、好みというものである。
そんな音楽と一緒で、「ノれれば楽しいんだろうな」と思いつつ、私は、ライブハウスの片隅でしらけているタチの悪い観客のような位置で、この漫画を眺めていた。
どう考えても「そこまでやる必要あるか?」という漫画だけれど、やりすぎの美学みたいなものがあって、その過剰さに乗っかれれば、とても楽しい作品だと思ったし、無視できないオリジナリティーのある漫画だとも感じた。
皮肉でも嫌味でもなく、ノれなかった自分が、残念だ。
設定により、一部のジャンルや作品が非表示になっています
恨まれ屋