3.0
ホラーのパワー
画力は完全にマイナス。
だが、絵柄はホラーに合っている。
特にホラーやサスペンスの場合、技術的な問題とは別に、絵柄の「合う・合わない」があり、その点は、セーフではなかろうか。
ホラー部分とミステリ部分のバランスがよく、怖がらせる一辺倒になっていたらグダグダになっていたところを、上手く回避した。
荒削りではあるものの、荒削りゆえの洗練されないパワーを感じる、なかなかパンチのきいたホラー。
- 2
2位 ?
画力は完全にマイナス。
だが、絵柄はホラーに合っている。
特にホラーやサスペンスの場合、技術的な問題とは別に、絵柄の「合う・合わない」があり、その点は、セーフではなかろうか。
ホラー部分とミステリ部分のバランスがよく、怖がらせる一辺倒になっていたらグダグダになっていたところを、上手く回避した。
荒削りではあるものの、荒削りゆえの洗練されないパワーを感じる、なかなかパンチのきいたホラー。
最近よくある「ゲームもの」の中でも、際立って空っぽ。
個々の死には何の重みも価値もドラマもなく、「ゲーム」の真意も狙いも冗談みたいなもので、「意味づけ」を徹底して拒否しているように思える。
特に「バスケ少年」のシーンなんかは、漫画におけるドラマチックな死、に対するアンチテーゼのようだった。
それを薄っぺらさと感じるか、潔さと感じるか。
まあ、短い間ドキドキして、後には何も残らない、そういうジェットコースターみたいな漫画も、あっていいと思う。
少年漫画のヒーローの、現実には出来ないような大冒険や武勇伝を読んで、少年たちは、胸がスカッとする。
それとこの漫画は、本質的には同じ構図ではないかと思った。
ただ、対象が女性で、大人だ、ということであって。
駄目男をバッサリ成敗するのは、現実ではなかなか難しい。
殺傷力の高い言葉が上手く出てこなかったり、決まったと思ったらカウンターを食らったり、切る決心をしたはずなのにズルズル続いてしまったり。
そんな、駄目男に対するイライラと同時に、駄目男を見事にやっつけられない自分自身へのモヤモヤも、晴らしてくれるような漫画なのではないかと感じた。
ただ、私は愚かな男性の側なので、そこまで感情移入は出来なかった。
性差についてあまり語りたくはないが、私が女性であったなら、評価は違っていただろうと思う。
三億円事件の真相には諸説あるが、「過激派を一掃するための国家規模の陰謀」というのは、さすがにやりすぎの感が強く、説得力には欠ける、と個人的には思う。
まあ、それはいい。
基本は少年少女の逃亡劇で、個々のキャラクターにそれぞれカラーが出ていて、ハラハラしながら楽しめた。
時系列を操作するのはこの作者の得意技なのか、「クダンノゴトシ」でもそうだったが、交錯する現在と過去が、よりいっそうスリルを高めていると感じた。
陰謀渦巻く三億円事件という「大きな」ストーリー。
その主人公には、普通にいけば、老練な刑事や探偵が相応しいように思えるが、敢えて「小さな」主人公を設定している。
それによって、多少の無理は出てしまっているが、少年漫画的な盛り上がりを獲得しているとも思う。
ただ、個人的にどうにもひっかかるのが、二点。
ひとつは、夏美の関口に対する母性の覚醒。
高校一年だろ。
いくらなんでも無理がある。
もうひとつは、ラストの大和の選択。
そこで、死のうとするか?
倫理的に、とかではなく、物語的に、どうにも腑に落ちなかった。
この二点は、どちらも「子ども」をメインの登場人物にした弊害だと思う。
夏美の件はもちろん、大和の件も、例えば主人公が「熱心に事件を追うが、どこか死に場所を探しているようにも見える、悲しげな目をした刑事」だったら…まあ、それじゃ全然違う話になっちゃうんだけど。
私の大好きな映画「セブン」と似ていた、というか、似すぎていた。
悪く言えば模倣、よく言えばオマージュ。
私は、好意的に受け止めたい。
漫画として、とても面白かったから。
基本的な作品のトーンやモチーフは「セブン」を踏襲しつつ、パリッとオリジナルな部分も光る。
そして、ところどころで、とても「映画的な」表現がある。
特に(ネタバレギリギリだが)、「彼氏」のシーンや「背中」のシーンなんかは、映像化することを念頭に置いて描いたのではないかと勘繰りたくなるくらい、しびれた。
映画の表現を、漫画に活かす。
それは、手塚治虫がやったことでもある。
余談だか、その「背中」のシーンは実写映画版ではカットされており、何やってんだ制作者、とひどく失望した。
正直、「ゲームもの」の漫画には、飽き飽きしていないだろうか。
「またそういう系ね」と思いつつ惰性で読んでしまう自分に、うんざりしていないだろうか。
そんなあなたに、「今際の国のアリス」。
とにかくひとつひとつのゲームがよく練られていて、完成度が高い。
緊張感も半端じゃない。
子どもの頃のかくれんぼに感じたような、無邪気なドキドキを思い出した。
アイデアの数々と確かなクオリティーでもって、最近の「ゲームもの」への失望感を完全に蹴散らしてくれた。
感謝したいくらいである。
結末は賛否両論あると思うが、私はこれ以上のオチも浮かばないし、特に文句はない。
ただまあ、途中のスピンオフはちょっと多すぎる気もする。
そして、いかんともしがたい、「今際の国」への憧れ。
学校や職場や家庭がそれなりに充実していたりして、「まあ、幸せだよな」と感じていたりなんかして、決定的な不満や致命的な欠陥が日常にあるわけでもなくて。
それでも。
心の片隅に、魂の奥底に、もしかしたら、潜んでいないだろうか。
現実の日常の秩序が全て崩壊した世界に対する、ないものねだりの妄想や、渇望が。
私にも、もしかしたら、あなたにも。
そんなあなたに、「今際の国のアリス」。
ちょっと閉じ込められたくらいで、登場人物たちがいくらなんでも正気を失いすぎ、という点には、まあ、目をつぶろう。
しかし、「監_禁嬢」にしても「骨が腐るまで」にしても、こんなに性的な描写に走る必要があるのか?とどうしても引っかかってしまう。
漫画だから、読者を楽しませようとするのは当然かもしれない。
でも、ワガママなことを言わせてもらえば、漫画は、読者に媚びないでほしい。
もっと正々堂々とやらんかい、と思ってしまう。
私はエログロを否定する気は全くない。
エログロ、大いに結構。
しかし、それをむやみに「客寄せ」みたいに扱うのは、エロに対してもグロに対しても読者に対しても、不誠実ではないかと思う。
幼い頃に、「トラウマ覚悟」みたいな気持ちで読んでいた、古きよきホラー漫画を思い出させるタッチ。
グロ描写やダイレクトなオカルト描写にも迫力があるが、感心したのはむしろ「普通の」描写で、雨の降りしきる山中、謎の老人の暮らすテントの中、そして図書館、そういう何気ないシーンの薄気味悪い描写力が、「これぞホラー」という一級品である。
主人公の二人の子供は、可愛らしく、カッコよく、幼い時代に読んだらもっと夢中になれたに違いない。
正直、「話」としてはもう一歩のところもあり、ホラーとして捻りの効いたサプライズや、「なるほど」という含蓄があれば、大傑作になっていたのではないか。
それにしても、タイトルが素晴らしい。
大人がいくら止めたところで、子供たちはいつだって、闇夜に遊ぶ。
そして、大人の決して踏み込めない、闇夜の中の、そのまた真っ暗闇を覗き込む。
悲しいながらに世相を反映した漫画であり、今の時代に読まれるべき漫画のひとつではないかと思う。
その事実が辛くて、途中で読むのをやめてしまった。
私の気分の問題であり、漫画には何ら責任がない。
この漫画を否定するつもりは全くないが、これが「読まれるべき」社会なんて、勘弁してほしい。
私が何を言っても世の中が変わるわけではないけれど、それが正直な気持ちである。
だいたい、現実はもっとずっと酷いのだ。
昔読んだ小説の中に、こんな台詞があった。
「この世が子どもにとっていい場所だったためしはない」。
何てことだ。
醜いものや残酷なものを漫画の中で見るのは決して嫌いではないし、「闇金ウシジマくん」なんか大好きなのだけれど、こればっかりは、どうしても駄目だった。
申し訳ない。
「ヒル」という存在の設定は面白かった。
ただ、「ヒル」がゴロゴロいたり、仲間を形成していたり、という設定には、ちょっと冷めた。
「なさそうだけど、あるかも」という際どいラインを完全にオーバーして、「いや、ないだろ」に行ってしまった。
もっとも、他にも「ヒル」がいることにしないと、どう話を展開させるかは難しいけれど。
「ヒル」という存在は、深読みしようとすれば、居場所のない若者とか、社会的なマイノリティーとか、色んなメタファーがよぎるけれど、この漫画は、シンプルに、一人の女の子が「普通に生きる」覚悟を決める話でもある。
「僕たちがやりました」もそうだけれど、「普通に生きる」ことの難しさというのは、現代のひとつのテーマなのかもしれない。
特殊な方法で生き抜く、客観的にはかなり不気味な存在を扱いながら、主人公の成長物語としては非常に爽やかであり、その微妙なバランスは悪くなかった。
酷評されているラストだが、物語は断ち切られ、それでも日々は続いてゆく、というような印象で、個人的には好きであった。
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女囚霊