rokaさんの投稿一覧

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101 - 110件目/全150件
  1. 評価:4.000 4.0

    流氷の話

    「あの事件」をモチーフにした第一話を読んだときは、印象は悪かった。
    少年の実像に迫るようなリアリティーを感じなかったし、異常な事件を扱ってセンセーショナルな作品にするぜ、というあざとさすら覚えて、気に入らなかった。

    しかし、第四話の「流氷」の話まで読んで、感想が変わった。
    「子どもたちの犯罪」をテーマにしたこの漫画に流れている一貫した悲しみみたいなものに触れた気がした。
    それは、本当は別の未来があり得たかもしれないのに、様々な不運や愚かさから、自らその未来を手放してしまった子どもたちを思っての、悲しみではないかと感じた。

    作品は、そんな子どもたちを擁護するでも非難するでもなく、ただ、見つめている。
    そのスタンスは、嫌いではなかった。

    • 9
  2. 評価:4.000 4.0

    絶妙な「ずれ」

    「青野くん」から飛んできた。

    荒削りではあるけれど、この作者の才能は、はっきり表れていると思う。
    それは、ひとつには、「ずれた」人間を描く巧みさ、ではなかろうか。
    「ぶっ飛んだ」漫画のキャラクター、ではない。
    その「ずれ」は、もっと些細で、微妙なものだ。

    誰かの人格について、あるいは誰かと誰かの関係性について、「何かおかしい」と思うけれど、そのおかしさを、上手く指摘できない、というような、ずれ。
    それを繊細に描くことは、「イカれた」キャラクターを創作するよりも、ずっとさじ加減が難しい気がする。
    そういう、才能なのではないか、と。

    その「ずれ」は、絶妙すぎて、リアルすぎて、はっとするし、ちょっと怖い。
    しかし、そのような「ずれ」は、ある意味では、私たちの誰もが持ち得るものでもあるのだ、と思う。

    素晴らしいのは、そういう「ずれた」人々に対して、作者が漫画の「ネタ」として扱うのではなく、確かな愛情をもって表現しようとしていることだ。
    みんな、どこか、変。
    でも、見方によっては、私たちは皆、そうだ。
    だから、作者の「ずれた」人々への愛情というのは、ほとんど、人間を描くことに対する愛情と、等しいのではないか。
    そうでなければ、こんな漫画は描けないと思う。

    • 22
  3. 評価:4.000 4.0

    不適合読者

    今さらながら読了。

    期待しすぎたのかもしれない。
    いい作品だとは思ったが、そこまで入り込めなかった。

    その一番の理由は、結構な割合でファンタジーの要素が入っていること。
    ファンタジー自体を否定する気は全くないのだが、この漫画には、どうにもそれが相応しくないような気がしてならなかった。
    私は妙な居心地の悪さみたいなものを感じながら読んだし、その違和感は、最後まで消えなかった。

    あくまで「現実枠」の中に収まる漫画であったなら、評価は変わっていたと思う。
    しかし、それではまるで別の作品になってしまうし、作品の完成度を無視できない以上、相応しくないのは、作品ではなく、読者としての私であるのかもしれない。

    • 11
  4. 評価:4.000 4.0

    酒への愛情

    個人的には「恋する二日酔い」があまりに素晴らしすぎて、こっちはそこまで夢中になれなかった。
    ただ、作者の酒への愛情は、とてもよく伝わってきた。

    酒は、付き合い方を間違えると人生が破綻する足がかりになってしまうけれど、上手に付き合えば、人生を豊かにしてくれる可能性は、間違いなくある。

    「恋する二日酔い」が「酒が特別になる人生の瞬間」を綴った漫画であったとすれば、この作品は、徹底して「ごくありふれた日常の中にある酒の魅力」を描いている。
    特別な時でもなく、特別な相手とでもなく、特別な場所でもなく(チェーン店だもんね)、ただ、仕事帰りに飲む一杯の酒が、どれほど日々を潤してくれることか。
    それに慣れてしまうことなく、深く味わいながら生きることが出来たなら、その酒はきっと、豊かな酒だろう。

    こんなふうに酒に対する愛情を表現できるのは、素敵なことだと思った。

    • 39
  5. 評価:4.000 4.0

    今どきの私たちは

    今までSNSを題材にした漫画はいくつか読んだが、全てつまらなかった。
    この漫画だけ、例外になった。
    今どきの日常の切り取り方が、丁寧で、ささやかだけどリアルで、好感を持った。

    電子機器が私たちの恋愛に与えた影響なんて、言い出せばきりがなくて、例えば、デートの約束、ケータイで楽勝。
    昔は、中学生の頃なんて、相手の家に電話して、お父さんが出て、震えたりしたものだ。
    文明万歳。
    あー、手軽な現代。

    けれど、そういう手軽さの裏で。

    二度と会えなくなったはずの誰か、例えば昔の恋人が、今、どこにいて、何をしているのか。
    そもそも生きているのか。
    かつての私たちには、それを知る術は、なかった。
    一番よく知っていたはずの誰かが、不意に、自分の人生から消滅する。
    別れる、ってのは、そういうことだった。
    一昔前までは、だ。
    今や、時代は変わった。
    知ろうと思えば、知れてしまうことが、結構ある。
    二度と会えなくなったはずの誰かの姿は、意外と手軽に液晶の向こうにあったりする。

    はたして、手軽になったのか、ややこしくなったのか、その両方なのか。
    その混沌とした電子の波の中を、今どきの私たちは、今日も漂う。
    ときどき、恋とかしながら。
    二度と会えないあの人の名前を、ググったりしながら。

    • 12
  6. 評価:4.000 4.0

    古きよき王道

    日常への奇妙な侵入者、明らかに邪悪な存在なのに、主人公以外は誰もそのことに気づかず、主人公は周りに信じてもらえず、孤立してゆき…というある種のサスペンスの王道的な展開。

    真新しい話ではないが、漫画としてひとつひとつの恐怖演出が的を射ており、安心して(?)楽しめる怖さである。

    非常に安定感のある、古きよきホラー漫画。

    • 8
  7. 評価:4.000 4.0

    情緒がある

    奇抜な設定とか、あっと驚く展開とか、ハラハラするようなスリルとか、そういうものがあるわけではない。
    しかし、独特の空気感は秀逸で、情緒溢れる、という表現がぴったりくる漫画。
    私が平安時代の人間なら「いとをかし」と言ったことだろう。

    • 4
  8. 評価:4.000 4.0

    生き残り

    一話完結型のオムニバスホラー。
    基本的にはローティーンを対象にした漫画だと思うのだが、意外にきちんとホラーだった。
    もちろん、猟奇的な描写などはないのだが、毎回、甘い結末はほとんどなく、やるなあ、と。

    題材は、いじめや恋の問題という古典的・普遍的なものから、ネットが絡むような現代的な怪談まで様々。
    少女漫画としてのホラーが一大ブームを巻き起こしたのは過去の話で、今やホラー漫画雑誌なんてひとつもない。
    けれど、その歴史の一部は、こんなふうに現代に生き残っているんだな、と思うと、ちょっと感慨深い。

    • 5
  9. 評価:4.000 4.0

    前作に比べて

    基本的な作品のトーンは前作と同じで、相変わらず面白いのだが、一話のエピソードの尺は半分くらいになっており、その点は好みが分かれるかと思う。
    よりサクサク読めるようになったという良さもあるが、そのぶん、キャラクターの掘り下げは浅くなり、重みのあるパンチはなくなった気もする。
    個人的には、「新」ではないバージョンの方が好きである。

    • 4
  10. 評価:4.000 4.0

    本気で怖がれた、あの頃

    嗚呼、もう、懐かしさで心が震える。

    今では、ホラー漫画を読んでも、本気の本気で怖がることなんて出来ない。
    それが出来たのは、子どもだけだ。
    だからこの懐かしさは、過去に触れた作品に対する単純な感慨ではなく、永遠に取り戻せない私自身の恐怖に対する感傷でもある。

    様々な作者によるオムニバスであるがゆえに、なおさら、ホラー漫画雑誌を夢中で怖がれたあの頃が蘇る。

    大人になって、ホラー漫画よりも遥かに恐いものをたくさん知った。
    でも、マジでホラー漫画がトップクラスに恐かった時代も、あったのだ。
    別にそれをいいとも思わない。
    ただ、そんな時代も、あったんだな、と。
    その思いは少しだけ、郷愁に似ている。

    • 5

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