5.0
心理描写が少女漫画を超えている
びっくりした。
絵は少女漫画なのに、心理描写や心理展開が単純明快な少女漫画ではない。
たとえば、
こんなに倫理観が強い純真無垢なお姫様が、
どうやったら民を弾圧し邪魔者を処刑しまくった極悪非道の父親や祖父から育つの?
そう思って読んでいたら、しっかり説明があった。ヒロインのお姫様自身に、こう自問自答させるのだ。
極悪非道の行いをしていたおじいさまやお父様は、なぜ私をこんな風に育てたの?
いっそのこと、極悪非道の行いが平気なお姫様として育ててもらえば、
私はもっと楽だった。
・・・みたいな自問自答が。
この祖父と父は、心も美しい倫理観の強い純真無垢なお姫様として、この見目麗しいお姫様を育ててしまったのだ。
そのため、倫理観の強いお姫様は、
「民を苦しめた極悪非道の私達王族は処刑されても当然、それでも民に償い切れない」
・・・と延々思い続ける。
そんな純真無垢なお姫様を愛しながら、王族を倒すスパイとして王城に入り込んだ貧乏貴族の少年は、お姫様の家族である王族を殺し、お姫様の希望に従いお姫様をも処刑して、民を救い狼領主となる。
スパイだと知らずにスパイの少年を愛してしまったお姫様は、騙されたことにショックを受ける。家族も初恋も全て失ったのだから。だが、少年に騙されていたのに、自分が生きていると少年の足手まといになると思い、少年に処刑されることを望んだのだ
でも、このお姫様はなかなか素直なやり手で、処刑される前に、「あなたのことが本当に好きだったのに・・・嫌いな授業もあなたと早く会いたくて、早く終わらせようと一生懸命頑張ったのよ・・・」云々、といかに自分が少年を好きだったかを延々少年に伝え、散々少年に文句を言って、本当はお姫様が好きな少年の心を突き刺していたが。
お姫様に嘘つきと批判され、何も言い返せなかった辛い思いの少年。
少年は、愛するお姫様を犠牲にしてまで実現させた革命を成功させて民を幸せにしなければ、お姫様を犠牲した意味がない・・・と寝食を忘れて死に物狂いで頑張り、痩せこけた頬に金色の瞳をギラつかせる狼領主になる。
少年が青年になり、30歳になろうとしたとき、お姫様の記憶を持つ15歳の少女が、往年の少年の前に現れ、また二人の物語が始まる。
原作があるそうですね。読んでみます。原作には漫画で割愛されていた深い心理描写がありそう。楽しみです。
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狼領主のお嬢様