4.0
家族という名のグループの怖さ
全て読み終えましたが、最初はヒロインの家族が酷すぎて読むのがつらかったです。かなり自分の家族と似通っていてヒロインの気持ちが痛いほどわかりました。本当は愛されていないことを、心の奥でわかっているのだけど、未来を読む時だけはとても感謝してくれて大事にされる。そのたびに五感を失う危機を感じていてもやめられない。
ヒロインは「機能不全家族」にありがちな典型的な「搾取子」だったんだなぁと思います。
ちゃんと五感を失っていくことを家族に伝えればいいじゃないかと思う人もいると思うのですが、ヒロインのように育ってしまうと、理屈ではわかっていても、伝えることで家族から用無しとされてしまう怖さや、やっぱり本当に愛されてない事実を知ることの恐ろしさから、結局自分を犠牲にしてしまいます。
未来を読む能力はありませんでしたが、実は私自身40歳を超えるまで、ある意味この状態ででした。
家族と実際の距離とって独立していても、困ったことがあると必ず私を利用しようとする家族でした。「家族でしょ!」と言いながら助けを求めて、そして都合が悪くなったことは全て私のせいにしていました。
本当に苦しかったなぁと、時々思い出しますが、全ての連絡を絶った今はとても穏やかに暮らせています。
ヒロインのように、色んなしがらみがあったわけではなく、私は身体ひとつで家族を断ち切ることができる環境だったのですが、家族を断つことは自分のアイデンティティを失うことになると思い込んでいて、怖くてなかなかできなかったように思います。
でも離脱してみると、自分は自分なのだとちゃんと思えるようになれました。
なので本当に同じように家族に苦しんでいる人がいたら、ヒロインのように頑張って行動を起こして欲しいなぁと心から思いました。
長く大変でしたが五感を取り戻せて良かったです。辛かった分、大事にしてくれる周りの人のありがたさを感じて、一生幸せに生きていけると思います。考えさせられる作品でした。読めて良かったです。ありがとうございました。
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消える私に夫の愛はいりません