アイカツ!×プリパラ:前代未聞の“奇跡のコラボ” 常識にとらわれず 全てはファンのために プロデューサーインタビュー
配信日:2025/10/13 9:01

アニメやゲームなどが人気の「アイカツ!」と「プリパラ」がコラボした劇場版アニメ「アイカツ!×プリパラ THE MOVIE -出会いのキセキ!-」が10月10日に公開された。「アイカツ!」あかりGenerationと「プリパラ」の10周年を記念した“奇跡のコラボ”で、2作がタッグを組んだ。「アイカツ!」はバンダイがアーケードカードゲームを展開し、バンダイナムコピクチャーズがアニメを制作している。一方、「プリパラ」は、タカラトミーアーツがゲーム、タツノコプロがアニメを手掛けている。ライバル関係にあるはずの「アイカツ!」「プリパラ」だが、前代未聞の“奇跡のコラボ”は不思議な一体感がある。バンダイナムコピクチャーズの木村大プロデューサー、清水良太プロデューサー、タツノコプロの依田健プロデューサーに制作の裏側を聞いた。
◇誰も想像していないような面白い企画を
ーー「プリティーシリーズ」と「アイカツ!」はこれまでイベントなどでのコラボはありましたが、アニメを制作することになった経緯は?
木村さん 「アイカツ! 10th STORY ~未来へのSTARWAY~」の次の展開を考えた時、あかりGenerationの10周年で何かをやりたいと考えていて、「10th STORY」と同じ方向性もありますが、それを超えられるのか?というと難しいかもしれない。違う方向性を探っていた時、「アイカツ!シリーズ」と「プリティーシリーズ」のイベント後、事業部からリアルライブ合同案が出たので、「プリパラ」も10周年なので、映像をやってみるのもありでは?と軽く言ったんです。実現できるかは分かりませんが、誰も想像していないような面白い企画ですし、とりあえずタツノコさんにお話をしてみました。「プリパラ」も10周年なので、一緒にやってみたいと話が進み、タツノコさんからタカラトミーアーツさんに話をしていただきました。タカラトミーアーツさんからもいいお返事をいただき、バンダイにも話をして、4社が早い段階で一つになって企画が進みました。
ーースムーズだった?
依田さん 実際にスムーズだったかは、分からないところはありますよ(笑)。自分はせっかくなら常識にとらわれず面白いことがやりたいというタイプですし、タカラトミーアーツのプロデューサーの大庭(晋一郎)さんもそうだと思うんです。大庭さんには、大人の事情で難しいこともあるかもしれないけれど、どうしても実現させたい!と相談しました。ただ、アニメの現場はスタジオの壁を越えて協力し合うこともあるんです。ライバルではあるのですが、例えばバンダイナムコピクチャーズさんの10月の新番組の「しゃばけ」でもタツノコがお手伝いしています。
ーーバンダイナムコピクチャーズは、サンライズの一部を分社化して設立された会社です。「プリパラ」の森脇真琴監督は、サンライズの作品を手掛けていたり、「プリティーリズム」シリーズの菱田正和監督もサンライズ出身だったりします。世間が思っているほど遠い関係ではない?
木村さん 「アイカツ!×プリパラ」の大川(貴大)監督、総作画監督の秋津(達哉)さんも「アイカツ!シリーズ」「プリティーシリーズ」の両方に参加していますしね。歴史を考えると、そもそも大河原邦男さんもタツノコさんの出身ですし。
依田さん 意外に近いんですよ。
木村さん お互いにオリジナル作品を自分たちで作ろうとする会社という共通点もあります。
ーーそれぞれの作品の印象は?
依田さん 「プリパラ」はまずギャグがベースにあって、シリアスも入ってくるというのが基本的なスタイルなんですが、「アイカツ!」は真逆なんですね。ベースが真面目で、たまにギャグが入ってきます。シリーズ構成の加藤(陽一)さんは、タツノコでもお世話になっていますが、企画力がすごい。丁寧に作られていると感じていました。
木村さん あかりGenerationを含めて「アイカツ!」の3年半は、加藤さんもそうですし、木村隆一監督の個性が強い。真面目さは確かにあると思います。「アイカツ!」のデータカードダスは7~9歳がターゲットです。10歳を超えると、アニメから離れていく子が多く、4~6歳はバンダイだと「プリキュア」が対象になってきます。上にも上げられないし、下にも下げられないのですが、「プリパラ」はより広い層を狙っているようにも感じていました。
依田さん 7~9歳は難しいんですよね。「プリパラ」は7~9歳をターゲットに始まっていますが、アニメが続く中で、段々と上と下に広がっていきました。
清水さん 僕はいち視聴者として楽しく「プリパラ」を見ていました。その中で、楽曲がすごくキャッチーな印象がありました。今回の「アイカツ!×プリパラ」もアニメを制作していて、誰かが「コノウタトマレイヒ」を歌い出して、それに釣られてみんな歌い出したり。疲れていたのかもしれませんが(笑)。
◇両作品のいいところを最大限に
ーー企画はスムーズに進んだようですが、制作は? バンダイナムコピクチャーズがアニメ制作、タツノコプロがCGを担当していています。
依田さん 両現場はもちろん最後まで大変だったと思いますが、進め方でもめるようなことはありませんでしたね。CGとアニメ制作でしっかり分けたことでやりやすかったんだと思います。CGの現場でも「アイカツ!」のファンが多くて、やりたがっていましたしね。
清水さん 最初は、本当にやれるのか?とも思っていたけど、とんとん拍子で決まっていき、スムーズでしたよね。楽しい企画なので、現場でも絶対に形にしたいという気持ちがありました。 ーーそれぞれの作品でキャラクターのデザインも違いますが、あえて変えなかった? 自然に共存しているようにも見えます。
木村さん 一新するという話もあったのですが、10周年の記念ですし、当時からのファンの方に楽しんでもらうことを第一に考えた時、変えない方がいい。総作画監督の秋津さんに調整をしていただき、微調整はしていますが、基本的には元の設定で進めました。
清水さん 秋津さんは相当苦労されたと思います。最初は合わなかったのですが、制作する中でつかんでいったようでした。
ーー全てはファンのためにという気持ちだった?
清水さん まさにそうです。
依田さん 僕ら自身がそれぞれの作品のファンだし、こんなことをやってくれたらうれしい、という感覚があります。そこを大切にしています。
木村さん これまでなかったけど、見てみたかったものを公式としてしっかり見せることがコンセプトですし、ファンの方には“楽しい”を届けるしかないと思っていました。両作品のいいところを最大限に楽しんでいただくことを考えた時、結果として二つの異なる作品がなじんでいったところもあります。
ーー大川監督が両作品のファンだったことも大きい?
清水さん 大川監督とはこれまでもご一緒させていただいていて、両作品のファンであることを知っていました。細かいところまで配慮されていて、絵コンテでもどっちかに寄りすぎることなくファンが喜ぶ要素をうまく足していました。
依田さん 絵コンテで足していただいたネタがことごとくファンにはうれしい要素ばかりなんですよね。バランスが素晴らしいんです。「アイカツ!」らしさ、「プリパラ」らしさの両方のいいところが入っています。
ーー個性が潰し合うことなく、うまく調和した?
依田さん そうですね。キャラクターや音楽の作り方など「アイカツ!」とは違いも多くて、見ていて、そうだったんだ!と気付きもありました。
清水さん 楽曲の作り方は違うけど、新曲は「アイカツ!」「プリパラ」の両方のスタッフで作っていて、それぞれの“らしさ”が合わさりました。
依田さん 音楽チームもすごくいいんですよね。両方のいいとこ取りで、バランスもいい。
木村さん 劇伴は、これまで「アイカツ!」にも「プリパラ」にも参加していない方なのですが、両方をしっかり理解して、いいところを表現していただきました。
依田さん 「プリパラ」っぽい音と「アイカツ!」のメロディーラインがしっかり入っていたり、音楽の力も大きいです。振り付けも両作品に参加していない方を紹介していただき、客観的に見つつ、バランスをしっかりとってもらいました。
◇「アイカツ!」のアニメの今後の展開は?
-ーこのコラボは10年に一度のお祭りなのか? それとも続いていくのか?
木村さん 今回は初めてだから面白くできましたが、新しいことをやらないと意味がないと思っています。別の世代のキャラクターを組み合わせたとしても、同じことの繰り返しになってしまいます。それが面白いかは、まだ自分の中では分かりません。面白いんだったらやった方がいいし、ファンが望まないならやらない方がいい。今回、一番面白いことができたので、正解はまだ出ていません。
依田さん 全く同じです。最初がいきなり禁じ手でしたし、これ以上はなかなかできないかもしれません。ただ、コラボのことは置いておいて、今回ご一緒したチームが素晴らしかったので、また違うことをやってみたいです。違う文化に触れることで発見がたくさんありましたし。
ーー「アイカツ!シリーズ」は今後、アニメの展開はある?
木村さん 「アイカツ!シリーズ」を止める考えはありません。継続に向けて考えていきます。
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