プリキュア：戦わない　癒やしのアニメ「ぷちきゅあ」　ディレクター奥村優子インタビュー

配信日:2025/10/12 8:01

ショートアニメ「ぷちきゅあ～Precure Fairies～」のビジュアル（c）ぷちきゅあぱーとなーず

　人気アニメ「プリキュア」シリーズのスピンオフのショートアニメ「ぷちきゅあ～Precure Fairies～」。「プリキュア」シリーズ初となる、妖精をはじめとした“ちいさななかまたち”の物語で、心がフワッとするような癒やしにあふれたアニメとなっている。ディレクターを務める奥村優子さんに制作の裏側を聞いた。

　◇可愛くない絵を作らない

　「ぷちきゅあ」は、セリフのないノンバーバルアニメで、4月にシーズン1の配信を開始した。現在はシーズン2が、YouTubeの「ぷちきゅあ」公式チャンネルや「プリキュア」シリーズの各種公式SNSで毎週木曜午後6時半に配信中。

　30秒～1分程度のショートアニメで、CGで制作されている。これまで「ドラえもん」「すみっコぐらし」など数々のアニメのCGを手掛けてきた奥村さんがディレクターを務める。奥村さんは“CG歴”30年以上におよぶベテランで、「映画ハートキャッチプリキュア！花の都でファッションショー…ですか！？」「プリキュアオールスターズNewStage3 永遠のともだち」など「プリキュア」シリーズにも参加してきた。

　「セリフがないアニメですし、キャラクター性をどれくらい表現できるのか？と案配を考えました。シナリオの段階から“この子はこういうことはしない”といった縛りは多く設けずということになり、長く続いてきたシリーズではありますが、シリーズからの制約はあまりありませんでした」

　「プリキュア」シリーズはアクションシーンが見どころの一つではあるが、「ぷちきゅあ」は敵と戦うわけではない。可愛く、癒やされる楽しいアニメであることを大切にしようとした。

　「可愛くない絵を作らないことを大切にしています。アニメを作るうえではキャラクターの角度によって可愛くない形状になることも多いのですが、どこで止めて見ても可愛く見える絵を目指しています。手脚の短いキャラクターばかりですが、全身を使って生き生きと動くように考えています。二足歩行ではない飛んでいるキャラクターもいますが、動き方一つにもそれぞれの個性が出るようにしました。キャラクターデザインの段階で、全員が並んでもそれぞれ“可愛く見える”ように作られているので、アニメにする時も苦労は少ないですね」

　動きも可愛く、キャラクターのそれぞれの個性が見えてくる。

　「一枚一枚絵を描くのではなく、3DCGと作画の中間のような作り方をしています。切り紙アニメのように、耳や手脚をパーツに分けて、曲げることができるように作っています。肘を曲げたときや沈み込みの瞬間に“むにゅっ”と潰れる柔らかさを表現できるよう工夫しています。とはいえ、キャラクターを“可愛く動かす”ことはアニメーターの力によるところが大きい。アニメータースタッフがキャラクターへの愛をもって制作してくれていることが、可愛いアニメになっている秘訣だと思います」

　キャラクターだけでなく背景も可愛い。シーズン1は遊園地が舞台になった。シーズンは“おかしなパラダイス”が舞台となる。

　「背景は3Dを2Dのように加工したものがあれば、手描きもあり、違和感がないように使い分けています。シーズン2は、お菓子の世界が舞台で、ピンクを基調にしたスイートな雰囲気に。お菓子の世界には、お菓子の家などいろいろな場所が出てきますし、背景はシーズン2の方がバリエーションが多く、見ごたえがあると思います」

　◇十字レイアウトで縦、横アニメに対応

　セリフがないので、シナリオはト書きだけだ。それでもそれぞれのキャラクターの個性が見えてくる。

　「ショートアニメは、セリフがあるとキャラクター性は出しやすいのですが、その分時間が必要で、動きを見せにくくなることもあります。セリフなしという制約はショートアニメと相性がいいですし、やりやすいところもあります。子供だけではなく、大人も見ていただきたいので、畳みかけるより、ゆったりしたテンポで味わっていただきたいところもあります」

　TikTokなどでは縦型アニメも配信している。横型と縦型で印象が大きく変わるわけではないが……。

　「横型アニメを中心に作って、余白を入れて縦型にすることもできますが、ぷちきゅあでは最初から少し冒険して、十字型でレイアウトを作って、上下を切れば横型、両端を切れば縦型になるようにしています。両方で成立するようにレイアウトを考えています。とても難しいのですが、縦で見えなかったキャラが横では画面内にいたりして、横と縦で見えるものも違いますし、両方を楽しめるようになっています。スマホ視聴を考えると、今後は縦型映像がメインになっていくことも考えられるので、引き続き勉強中です」

　可愛く、癒やされるアニメだが、緻密な計算や細やかなこだわりが詰まっている。シーズン2は舞台を移し、新キャラクターも登場する。「新しい子たちが登場しますが、シーズン1の子たちも登場することがあるかも……」とどうやらサプライズもあるようで、シーズン2も目が離せない。

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