ウィッチウォッチ:“攻める”アニメ化 パロディーも逃げずに 原作の魅力を最大限に表現 青井宏之Pインタビュー

配信日:2025/08/11 9:01

「ウィッチウォッチ」の一場面(C)篠原健太/集英社・ウィッチウォッチ製作委員会・MBS
「ウィッチウォッチ」の一場面(C)篠原健太/集英社・ウィッチウォッチ製作委員会・MBS

 「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中の篠原健太さんの人気マンガが原作のテレビアニメ「ウィッチウォッチ」。アニメは、パロディーも含めたテンポのいいギャグシーンや、アニメならではの構成がファンの心をつかみ、人気を集めている。7月6日放送の第14話「うろんミラージュ 第119話『ファジー討伐-4』」では、劇中に登場するマンガ「うろんミラージュ」がアニメ化されたことも話題になった。アニメを手がける毎日放送(MBS)の青井宏之プロデューサーは、原作の魅力を最大限に生かすべく、攻める姿勢でアニメ化に挑んでいるという。制作の裏側を聞いた。

 ◇「ウィッチウォッチ」の笑いにとどまらない魅力

 同作は「SKET DANCE」「彼方のアストラ」で知られる篠原さんのコメディーマンガ。「週刊少年ジャンプ」で2021年2月に連載を開始した。魔女になるべく修行中の若月ニコと、幼なじみで鬼の力を持つ高校生・モリヒトの同居生活が描かれる。モリヒトには予言された災いからニコを守る使い魔としての使命がくだされ、前途多難でまか不思議な日々が始まる。

 昔からジャンプ作品が好きで、篠原さんの「SKET DANCE」「彼方のアストラ」も愛読していたという青井さんは、「ウィッチウォッチ」に笑いだけではない魅力を感じたという。

 「元々コメディー作品が好きなのですが、『ウィッチウォッチ』は、笑いだけでなく、感動できる回やバトルもある。構成に関しても、前半に登場した笑いのネタが伏線になって後々生きてくるところもあり、マンガのレベルがすごく高いと感じました。これはアニメ化したいと思い、集英社さんに問い合わせました」

 アニメを制作するのは「映画『五等分の花嫁』」「魔法少女マジカルデストロイヤーズ」などのバイブリーアニメーションスタジオ。「キラッとプリ☆チャン」「トニカクカワイイ」などで知られる博史池畠さんが監督を務める。

 「バイブリーさんとは以前、別の作品でご一緒させていただいたこともあり、『またぜひ何かやりましょう』というお話の中で、『ウィッチウォッチ』でご一緒させていただけませんか?と。その際、バイブリーさんから池畠監督をご提案いただきました。池畠監督は、ギャグ、コメディーに関して実績のある方で、ぜひお願いしたいと。縁あって今回ご一緒させていただける形になりました」

 アニメ化に際し、原作者の篠原さんからは、「ギャグ回は一つのエピソードとして独立させてほしい」「キャラクターを可愛く描いてほしい」という2つの要望があったという。

 「篠原先生としては、やはりギャグはこだわってらっしゃるところなので、1話完結のギャグ回は、アニメでもきっちり分けてほしいというオーダーがありました。例えば、アニメの第3話は『春のシースルーコーデ/魔女に宅急便/迷子犬と雨のビート』とサブタイトルが3つ並ぶ形にしています。構成の王道としては、アニメの1回の放送の中で、最初と最後の話をつなげて物語として起承転結を付けることが多いのですが、先生としてはギャグはその話数として生きているものなので、きれいに割ってほしいと。だから、アニメもサブタイトルを付けて独立させ、かつアイキャッチも入れて、話の切り目をきっちり分けています」

 ◇テレビアニメならではの構成の妙 キャラを好きになってもらうために

 制作陣の間では、「原作の全てのエピソードをアニメ化したい」という思いがあるが、テレビアニメの尺の制限もある。原作の魅力を生かすべく、アニメ化の上では構成に力を入れたという。

 「『ウィッチウォッチ』の魅力でもあるのですが、原作は単話で全て成立しているんです。ギャグなので、冒頭で何かが始まって、オチで話が収まる。一方で軸となるストーリーもあるので、アニメでは単にギャグを積み重ねていくよりは、1クール目の終わりに目標地点を決めて、そこに向かって、皆さんにキャラを好きになってもらうことを大事にして構成を練りました」

 1クール目に関しては、モリヒトたちの仲間だと思っていたケイゴの正体がウルフだったことが判明し、“仲間の裏切り”を描く「犬と雨滴」がクライマックスとなっている。

 「アニメ化するにあたって1クールは一つの切れ目なので、そこにピークを持っていく、物語の落としどころにする。原作では、アニメ第7話で描かれた『カンニコチャンネル』でケイゴが本格的に登場しますが、その前の第6話『縁結びの樹の下で』でオリジナル要素としてケイゴとモリヒトが会話するシーンを入れて、ケイゴを自然に紹介できるように、原作を読んでいない人でもすっと入っていけるようにしています。原作ではケイゴとニコ、モリヒトが過ごした時間はそんなに長くなかったので、アニメでは、ケイゴとの関係値を上げていって、過ごした時間の積み重ねを描いた上で、第12話のピークに持っていきたかったんです」

 青井さんは、さまざまなアニメを手がけてきたが、「ウィッチウォッチ」は、「かなり構成に時間をかけている作品」だという。

 「原作通りに構成していく作品も多いです。というのも、エピソードの順番を入れ替えてしまうと、どうしても軸がおかしくなって、各キャラの会話が微妙に成立しているようで成立していないようになってしまうんです。もちろん『ウィッチウォッチ』も、そういう部分は多少はあるのですが、物語としてギャグはギャグで完結しているので、ある程度組み替えができる。だからこそ構成に時間をかけて、前後関係がおかしくないかをみんなで確認しつつ、もちろん集英社さん、篠原先生にもご監修いただく形で進めています」

 ◇パロディーは日和ると楽しくない

 原作では、ジャンプ作品などのパロディーも魅力の一つとなっている。アニメでも「逃げない姿勢」でパロディーシーンに挑んでいるという。

 「マンガなどの紙媒体と、テレビ放送する映像媒体は制約が違うのですが、極力変えずにやりたいと思っています。正直、僕が『変えたい』と言えば変えられるところも多少あり、逃げようと思えば逃げられるのですが、原作の大事な部分をできるだけアニメにする上で変更せずに、尊重したいと。特にパロディーは日和(ひよ)ると、どうしても楽しくなくなってしまう。映像化する上で、どうしても難しいところは変えている部分もありますが、基本は原作をリスペクトして、作品を初めて見る人が楽しめるようにと考えて、議論しながらやっています」

 原作の魅力でもあるパロディーを実現させるために「やるべきことから逃げない」と攻めの姿勢を崩さない。「原作がやっているところは最大限よくしたいと常に考えています。バイブリーさんと連携して、集英社さんと相談して進めていくことは、苦労でもあり、楽しさでもあります。こういうチャンスはなかなかないので」と語る。

 ◇気合入りすぎ! 「うろミラ」アニメ化の裏側 “続編”は?

 「日和ると楽しくない」「やるなら本気で」という制作陣の熱をファンが思い知らされたのが、第14話「うろんミラージュ 第119話『ファジー討伐-4』」だろう。劇中に登場するマンガ「うろんミラージュ」が“ざっくり”ではなく“がっつり”気合を入れてアニメ化されたことが話題になった。「うろんミラージュ」のためにキービジュアルのほか、主題歌も作成され、音楽ユニット「Who-ya extended」がオープニングテーマ「Bitter end」、シンガー・ソングライターのLEOさんによるソロプロジェクト「ALI」がエンディングテーマ「FLASHBACK SYNDROME」を手掛けた。げそいくおさんが絵コンテを担当するなど特別なエピソードとなった。

 「『うろんミラージュ』はきちんと描きたいという思いがあって、当初は1話丸ごとできるかなとも考えていたほどです。7月6日放送の第14話に『うろミラ』回を持ってきたのも狙いがあり、1クール目はほかの作品も新たに始まりますし、話題としてはそちらのほうが大きいということもあって、7月頭に放送できるように逆算しました。また、『うろミラ』をやるのであれば、オープニング&エンディングも新たに作って、『うろミラ』尽くしでいこうと。楽曲もやはり書き下ろしにしたかったのですが、著名な方がそれに乗ってくれるかは分からない。今回、『ウィッチウォッチ』では、レーベルサイドに企画を説明した上でお願いして、快くアーティストさんに快諾していただき、すてきな楽曲を書いていただきました」

 「うろんミラージュ」は、コミックスの累計発行部数が4500万部を突破している……という設定の大人気マンガだ。“アニメ化”にも力が入った。

 「どことなくいろいろなジャンプ作品に影響を受けたようなテイストを入れ込んでいただきました。絵コンテを担当してくださったげそさんは池畠監督のご指名で、もしかすると本編のアクションよりも動いていたかもしれないのですが(笑)、やれるなら本気でやろうと。撮影や処理も本編とは違う形にしているので、皆さんにもガラッと変わった感じで見ていただけたのではないかと」

 秋月空役の白石涼子さん、浪崎朧役の吉野裕行さん、草間狭霧役の下野紘さん、ザック・バラン役の杉田智和さん、不破役の大塚芳忠さん、白藤仄役の小清水亜美さんという豪華キャストも話題になった。

 「原作のボイスドラマでは、『ウィッチウォッチ』のモリヒト役の鈴木崚汰さんが朧を演じているので今回は変更して、ザック役の杉田さんはすごくハマっていたので、変えたくないなと。ほかの皆さんは、『こういう方々がハマると面白いな』という視点でお願いをしました。収録も皆さん、和気あいあいと気持ちよくやっていただきました」

 本気のアニメ化はファンの間でも話題になり、早くも“続編”を期待する声が上がっている。

 「『ウィッチウォッチ』は、前半からパロディーを含めて変に改変せずに、いい意味で狙って、楽しくやっている作品でもあるので、『うろミラ』を一つのお祭りだと思って見ていただければ楽しいのかなと。原作を読んでいる方は、今後も『うろミラ』のキャラクターが活躍することはご存じだと思うのですが、皆さんのご声援があってアニメが続くことになれば、また『うろミラ』をもう一回やるんじゃないかと……」

 アニメ「ウィッチウォッチ」は、原作へのリスペクトを大前提に、パロディーを含めたギャグや「うろミラ」回など、さまざまな挑戦的な試みでファンの心をつかんでいる。アニメを手がける青井さん自身、「本当に楽しくて!」と笑顔で語る。

 「もう10年近くアニメに携わっているのですが、こんなにアフレコで笑ったことがなくて。ダビングでも、編集作業でも、こんなにお腹を抱えて笑うことってなかったんです。それは本当にこの作品ならではのことだと思います。声優さんのパワーもすごくて、シナリオで読んだ時より面白くなっているんです。いろいろなところで感想を見る限り、皆さんにも楽しんでいただけていて、その声はスタッフの皆さんにもきっと届いています。スタッフの皆さんも楽しんで、この作品に参加させていただいています」

 「今後も楽しいエピソードがあるので、ぜひ楽しんでいただけたら」と語る青井さん。どのエピソードがどのようにアニメで描かれるのか、期待が高まる。

提供元:MANTANWEB

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