ウィッチウォッチ:テンポが命! “本気”の「うろミラ」秘話も 博史池畠監督インタビュー
配信日:2025/08/10 7:01

「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中の篠原健太さんの人気マンガが原作のテレビアニメ「ウィッチウォッチ」。アニメは、ギャグのテンポのよさが大きな魅力になっており、独特の間、ツッコミのテンションが絶妙だ。7月6日放送の第14話「うろんミラージュ 第119話『ファジー討伐-4』」では、劇中に登場するマンガ「うろんミラージュ」がアニメ化されたことも話題になった。監督を務めるのは「キラッとプリ☆チャン」「トニカクカワイイ」などで知られる博史池畠さんだ。数々のギャグアニメを手掛けてきた池畠監督は、人気作をどのようにアニメ化したのか? 制作の裏側を聞いた。
◇セリフのテンポ感を重視
池畠監督はシリアスな作品も手掛けているが、ギャグアニメに定評がある。
「子供の頃にお笑いやギャグアニメが大好きだったというわけではなかったのですが、大学の時に自主制作映画を作っていて、上映イベントでお客さんがゲラゲラ笑ってくれるのを見て、笑わせるのが楽しいと思ったことが自分の原体験としてあります。ギャグはシリアスよりも下に見られることもあるかもしれないけど、僕はそうは思っていません。ギャグは頭を結構使うので、そこが楽しいんです」
同作は「SKET DANCE」「彼方のアストラ」で知られる篠原さんのコメディーマンガ。「週刊少年ジャンプ」で2021年2月に連載を開始した。魔女になるべく修行中の若月ニコと、幼なじみで鬼の力を持つ高校生・モリヒトの同居生活が描かれる。モリヒトには予言された災いからニコを守る使い魔としての使命がくだされ、前途多難でまか不思議な日々が始まる。
池畠監督は「通常のギャグマンガよりオシャレなところがあって、分かりやすいところもあります。ほかのギャグアニメの手法でアニメ化するのではなく、原作のノリをきちんと生かしたアニメ化をするにはどうすればいいのだろう?と考えました。盛りすぎてしまうと、ちょっと違うかもしれない。いき過ぎず、味付けを濃くしすぎないように抑えることが重要な作品なので、さじ加減を考えています」と向き合った。「セリフのテンポ感を重視しています」とも話す。
「アニメ的なギャグのボケツッコミではなく、漫才やコントのような間でしょうか。ツッコミを待っていて、すぐにツッコミを入れる。反応を受けたツッコミではなく、ちょっとボケがあったらすぐツッコミを入れるようなテンポ感です。早いけど、しゃべっている内容はきちんと分かる。ギャグアニメには、まくし立てるようなギャグもありますが、それとは少し違って、分かりやすく聞かせて、それに対するツッコミやボケの間を調整しています」
声優陣の演技や編集によって独特のテンポ感が生まれている。
「ほかの作品と比較すると、セリフ優先で編集していると思います。収録が終わった後、再編集に近い感じで、セリフの間尺を調整していて、テンポ感がアップするようにしています。役者さんの力量に助けられています」
テンポ感と言えば、第5話の“隠れマンガオタク”の真桑先生の超長ゼリフの告白シーンも話題になった。
「視聴者の方が、この人はいつまでしゃべっているんだろう……と思ってもらいたかったんです。ちょっと不安になって、いつまで続くの?と思ってほしいけど、あまり長すぎるとダレてしまう。このカット、長くない?と不安になるくらいのところで終わるように調整しました。絵のギャグではなく、音響ギャグですね」
第8話のカンシが“10倍速”で動くエピソードも話題になった。しゃべるスピードも速くなり、原作では「キャルキャル」とセリフが表現されているが、アニメでも「キャルキャル」を再現した。
「絵に関しては、原作を読んでいる時に、僕の頭ではできていたので、再現はそこまで難しくなかったのですが、セリフには頭を使いました。(カンシ役の)天崎滉平さんには普通にしゃべってもらい、倍速にしたら、思っていた以上にキャルキャル聞こえたのでそれを採用しました。実際にキャルキャル聞こえるかが重要でしたので」
◇ニコの髪色が重要!
ヒロインで、ドジっ子魔女のニコの可愛さも作品の魅力になっている。ニコを演じる川口莉奈さんは、テレビアニメのヒロインを演じるのは初めてで、抜てきとなったが、ハマり役と話題になっている。
「ニコは結構自由に動かしてもいいのですが、原作ではあまりキャラが崩れることがないので、原作のイメージを壊さない範囲内で、アホ毛を動かしたり、楽しく動かそうとしています。基本的には、川口さんの演技が素晴らしくて、それだけでニコが可愛くなっていて、すごく助けられています」
ニコの魅力を表現するためにこだわったのが“髪の色”だ。
「ニコの髪の色をどうするかに時間がかかりました。原作は、金髪っぽかったり、いわゆるアニメピンクっぽかったりして、一番合う色は?と考えた時、最終的に、少しオレンジが入ったサーモンピンクのような色になりました。アニメピンクにすると、いわゆる魔法少女になってしまうし、金髪や茶髪だと特別感が出ない。色が決まって、可愛いんだけど、ちょっと抜けているというニコのキャラクター性が見えてきたところもあります。ニコの髪の色が決まったら、バランスを考えて、ほかのキャラクターの色もどんどん決まっていきました」
ニコの魔法シーンも見どころになっている。
「サクッと魔法を使うようにしています。ほかのアニメだとバンクを使って、魔法を使いますよ!という見せ方もしますし、最初はそういうシーンがあった方がいいのかな?とも思いましたが、ニコはスナック感覚で魔法を使いますからね。光るだけでいいんじゃないかと気軽に魔法を使って、騒動が起こるという構造にしようとしました。お手軽に魔法を使うんだけど、実はやばい魔法だぞっていうのが見えくるようにしました」
ギリギリを攻めているようにも見えるパロディーシーンもならではの魅力だろう。
「僕も結構いろいろな作品やってきたんで、どこまでやったら怒られないかみたいな感覚は身に付いていまして、割とサクッとやってしまっています(笑)。自分では分かってるつもりですけど、プロデューサーは苦労しているかもしれませんが。ただ基本的には形にする前にこれ大丈夫?と全部確認しています」
パロディーシーンを含めてさまざまな“遊び”がファンの心をつかんでいる。
「18話で、モリヒトが子供時代に描いたマンガのキャラクターになってしまうエピソードがありましたが、アニメでどう再現するのかがなかなか決まりませんでした。結局、こういうのが得意なアニメーターの小川完(たもつ)さんにお願いして、全部描いてもらうというパワープレーで乗り切りました。原画の前のラフを映像にすることでより落書き感が出せたと思います」
◇“ジャンプ伝統”の「うろミラ」
第14話では、劇中に登場するマンガ「うろんミラージュ」が“ざっくり”ではなく“がっつり”気合を入れてアニメは制作されたことも話題になった。「うろんミラージュ」のためにキービジュアルのほか、主題歌も作成され、音楽ユニット「Who-ya extended」がオープニングテーマ、「Bitter end」、シンガー・ソングライターのLEOさんによるソロプロジェクト「ALI」がエンディングテーマ「FLASHBACK SYNDROME」を手掛けた。げそいくおさんが絵コンテを担当するなど特別なエピソードとなった。
「最初は30分全部『うろミラ』をやってもいいんじゃないか?という話をしていました。分割2クールになるかもしれないという話もあり、分割だったら、2クール目の1話に『うろミラ』を30分やって、視聴者をビビらせることも考えたのですが、連続2クールになったので、構成を考えて、Aパートだけやって、後半はそれを受けて同人回にしました。特別な回なので絵コンテはスペシャルな人にお願いしたくて、げそいくおさんに依頼したところ、快く引き受けていただきました」
「ジャンプ伝統の少年たちの戦うアニメのノリで作りましょう」とほかのエピソードとはテイストを大きく変えた。背景にもこだわった。
「最近のアニメの背景はかっちり描かれることが多いのですが、昭和のアニメのようなぼんやりした背景にしようとしました。建物だけはしっかり描いているけど、地面と空の区切りがちょっと分からないようなぼんやりした感じです。今のアニメは、システムがきっちりしていますし、ぼんやりというのが伝わりにくく、フィニッシュまで持っていくのに各セクションの皆さんは苦労されていましたね」
「うろミラ」を含めて「ウィッチウォッチ」は挑戦的なアニメになっており、池畠監督は「海外のファンの方を含めて喜んでいただけていることが本当にうれしいです。今後も面白い話がどんどん出てくるので、最終回まで一話も見逃さずに見ていただければうれしいです。2クールと言わず、続きも見たいので、ぜひ応援をよろしくお願いいたします!」と話す。
一体、何が飛び出すのか!? 「ウィッチウォッチ」の挑戦はまだまだ続く。
提供元:MANTANWEB