山岸凉子:「日出処の天子」能 狂言化に「びっくり」 野村萬斎の厩戸王子役に「作者冥利に尽きる」
配信日:2025/04/09 15:03

山岸凉子さんの名作マンガ「日出処の天子」の能 狂言「-能 狂言- 『日出処の天子』」の製作発表記者会見が4月9日、東京都内で実施され、山岸さん、野村萬斎さんらが登場した。山岸さんは「日出処の天子」の能 狂言化に対する思いを語った。
「-能 狂言- 『日出処の天子』」は、萬斎さんが演出・出演し、人間国宝の大槻文藏さんが監修・出演する。萬斎さんが厩戸王子、福王和幸さんが蘇我毛人、大槻裕一さんが刀自古郎女をそれぞれ演じる。観世能楽堂 GINZA SIX(東京都中央区)で8月7~10日に上演される。チケットは、ローソンチケットで4月9日午後6時にプレリクエスト先行(抽選)販売がスタートする。
山岸さんは、「日出処の天子」の能 狂言化について「能 狂言は、日本で最も古い伝統芸能です。それをサブカルチャーである私の作品を舞台化したいという話が来たときは、やはりとても驚きました。しかも、常日頃『この方はすごいな』と思っていた野村萬斎さんからのお話だったので、さらにびっくりしました。そして、大槻文藏さん、大槻裕一さんが演じられるということで、正直舞い上がってしまいました。私は性格がネガティブなので、話には出ても実現には至らないこともあるから『今から喜んでどうする』と自分に言い聞かせたくらいですので、きょうこの場に立つことができて幸せです」と語った。
能 狂言のイメージについては、初めて能を見た際、「感覚が薄れると思って何も知らずに見に行った」と振り返り、「初めてすごみのある美を感じて圧倒されました。後から知ったのですが、能はあの世とこの世の話を扱っていると。演者の方はほとんど動かれないのですが、美しいのだけど、どこか悲しい、そして、畏れのようなものを感じたんです。狂言は、能がピンと張り詰めた糸のようだとすれば、狂言はそれをふっと和らげさせる。驚いたことに古典なのにエンターテインメント」と魅力を語った。
能 狂言は「世界に誇る芸術」といい、「というのも、たいていの世界の芸能は騒がしい。日本の芸能は、静かな中に何かを見つけるというのがある。尊敬しておりましたので、自分の間近にくるとは夢にも思いませんでした」と話した。
山岸さんは萬斎さんに「厩戸王子を演じてほしい」と思っていたと明かし、萬斎さんの体幹にも注目していい、「萬斎さんは本当に体幹が強くいらして。日舞、バレエ、ダンサー、武闘家、アスリートの方もそうですが、全員に共通するのが体幹が強いことです」と絶賛。
萬斎さんは、学生時代に「日出処の天子」に出会ったといい、厩戸王子について「人なんだけど人と同じでないという。私も人外と言われるんですけど、人のくくりの外にいるということなんでしょうか。思春期の頃は、周りと一緒でいたいという思いが強かったのですが、どうやら僕は違うらしいと。一人だけ体幹が強いのは明らかでしたし。どうも人と違うらしいということに悩んでいた時期がありますので、畏れ多くもそういうところは厩戸王子とシンパシーがあるのかなという気はします」と語った。
山岸さんは、萬斎さんが厩戸王子を演じることについて「厩戸王子は、少年なのですが、超能力者であり、内面に複雑なものを持っているので、ずっと萬斎さんがやってくれないかな?と思っておりました。引き受けてくださると聞いて、作者冥利に尽きます」と喜びを語った。
「日出処の天子」は、マンガ誌「LaLa」(白泉社)で1980~84年に連載されたマンガ。厩戸王子(聖徳太子)と蘇我毛人(蘇我蝦夷)の激動の物語が描かれた。1983年に「第7回講談社漫画賞」少女部門を受賞。1994年に白泉社文庫の創刊作品として刊行された。
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