木村良平インタビュー(前編):アニメ、ゲーム、舞台…幅広く活躍する役者が「天才」と称賛する漫画家とは?少年時代の漫画との出会いも語る!
更新日:2019/02/20 10:00
「黒子のバスケ」「ハイキュー!!」「刀剣乱舞」など、数々の人気作品に出演し、声優・俳優として活躍する木村良平さん。小さい頃から漫画に囲まれて育った木村さんが、「天才」と称賛する漫画家・藤田和日郎や「正座して待つ」あの漫画とは?
小さい頃は、実家の段ボール箱いっぱいの漫画を読み漁っていた!
木村良平
――小さい頃から漫画を読んでいましたか?
家の中で物置になっているエリアがあったんですけど、子どもの頃、探検と称してそこを漁っていたら、段ボール箱いっぱいの漫画を発見したんです。どうやら親が昔読んでいた漫画だったようで、小さい頃はそれを読み漁ったりしていました(笑)。あとは、父親が漫画雑誌をよく買っていたので、それを読んでいました。
――ご家族も結構漫画を読むんですね。
両親とも、わりと本が好きな人たちでしたね。父親は、漫画雑誌は読むけど単行本はあまり読まなかったようで、その段ボールに入っていたのはほとんど母親の本でした。
木村良平
――ご自身も、漫画に限らず小説など色々な本をお読みになるそうですね。
子供の頃から電車に乗って事務所に通っていたり、家から遠い学校に通ったりしていたので、移動時間が長かったんです。その移動中に何をするかと言えば、やっぱり本を読むことが多かったですね。
――今では昔と違って電子書籍も一般的になっていますが、木村さんはどちら派ですか?
漫画は巻数が多いものもあるので、最近は電子書籍で読むことが多いですね。紙の本だとかさばって、持ち歩くのも一苦労なので。でも、紙のいいところは「あれ、このキャラ何だっけ?」と思ったときに感覚的にめくって戻れるところですよね。生まれたときから電子書籍を使って育っていればまた違うんでしょうけど、スワイプ操作で本をめくるのはまだ慣れないです。
木村良平
藤田和日郎さんの圧倒的な才能に感服
――好きな漫画として「うしおととら」 (藤田和日郎/小学館) を挙げていただきました。この漫画との出会いは何ですか?
「うしおととら」 (藤田和日郎/小学館) は「週刊少年サンデー」(小学館)で連載中のときに読んでいました。漫画好きの父親のおかげで、家に「週刊少年サンデー」(小学館)「週刊少年ジャンプ」(集英社)「週刊少年マガジン」(講談社)が勢ぞろいしていたので、子どもの頃は全部読んでいましたね。
――「うしおととら」 (藤田和日郎/小学館) を初めて読んだとき、どう思いましたか?
漫画や小説が好きでそれなりに読んでいると、圧倒的だな、と感じる作品があるんです。それはストーリーとしての面白さというより、生み手のセンスや才能、実力が違うな、と感じることが多いんですけど、藤田和日郎さんに関しては、それがずば抜けてるんですよね。もう「天才」の一言に尽きる。
まったく予見できないことが起きたり、最終的にはきっとこういうオチにいくんだろうけど、それをどう描いて持っていくのかまったくわからなかったり。あとはキャラクターの濃厚さとか立体感とか。書き手の存在がどことなく見え隠れするような作品もあるけど、そういうのもまったくなくて、本当にキャラクター一人ひとり生きているんだろうな、という感じがすごいですよね。
読み手が積極的にならないと感情を動かされないような作品も存在すると思うんです。もちろん、それはそれで楽しめるんですけど、藤田さんの作品は感情を呼び起こさせられる。パッカーンって頭を殴られる感じ。それってすさまじいことだと思うんですよね。
――藤田さんの作品では、「うしおととら」 (藤田和日郎/小学館) が一番好きなんですか?
そうですね。やっぱり、強い敵と戦うとか、主人公の活躍や成長って、男子にとってものすごく燃えるものがありますよね。一方で、ふと女性キャラから出てくる母性みたいなものに訴えかけられる瞬間もあるし、それはそれで男心をまんまとつかまれるんですよ。
主人公・蒼月潮と妖怪・とらの間で培われていく人間関係も、深まっているようで最初の頃と全然変わっていないようにも見えて、でも実は後になって振り返ったらすごく深まっていた…みたいな。でもきっとそういうものなんだろうな、一緒にいる時間には何も勝てないんだろうな、とか読んでいるといろんなことを考えちゃいますね。
- 少年漫画 うしおととら
- 4.5 (497件)
――「うしおととら」 (藤田和日郎/小学館) の中で、好きなシーンはありますか?
とらと、潮の同級生の井上真由子(いのうえ まゆこ)が初めて出会う、妖怪・餓眠様(がみんさま)の話は毎回読み返してしまいます。とらと真由子の関係が好きなんです。最後、真由子が自分を助けてくれたとらにハンバーガーを食べさせるシーンがあるんですけど、絶対可愛いに決まってるじゃないですか!っていうところが好きです。
あとは、結界を張る使命を持つお役目様(おやくめさま)の最期のシーンです。お役目様は、物語の中心にずっといるわけじゃないのに、あれだけキャラクターのみならず読者へ胸打つ一言を残して去っていくのは、すごいですよね。しかも全くシーンとマッチしない言葉で、そこがまたグサッと心をえぐってくるんです。
- 少年漫画 うしおととら
- 4.5 (497件)
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きっと潮も、無敵な獣の槍を持つことで、無意識に残酷な戦いを楽しんじゃっている部分があったんじゃないかな。そんなときにお役目様と出会って、ごく単純な一言を言われたとき、感動とともに罪悪感も生まれたと思うんですよね。
それはあくまで僕が感じたことだし、どこまで考えて描かれているのかはわからないけど、自分と同じ人間が描いているとは到底思えない。「うしおととら」 (藤田和日郎/小学館) を読んでしまうと、自分は絶対物書きにはなれないな、と思っちゃいます(笑)。
再登場した敵キャラのイメージがガラッと変わる!
木村良平
――「からくりサーカス」 (藤田和日郎/小学館) もお好きなんですね。
最初、設定だけ聞いたときは「笑わせてないと死ぬ病気って一体何?」「この設定でどうやって物語を進めるんだよ!」と思っていたんです。でも、読んでいくとそうやって繋がるんだ!と目から鱗が落ちて、そのままラストまで一気読みでした。藤田さんは一体どこまで考えてたんだろうな、と思います。
――特に印象的なシーンはありますか?
最大の敵・フランシーヌ人形も、最初は感情の無いお姫様というイメージだったけど、序盤の彼女と物語が進んでから登場する彼女は、あまりにも抱えるイメージが違い過ぎて…。見事に藤田さんの手のひらの上に転がされたな、という感じです。
一番好きなのは、長年フランシーヌ人形を守ってきたコロンビーヌが、激しい戦いの末に死ぬとき、主人公の男の子・才賀勝に抱きしめてもらうシーン。ずっと男の人に抱きしめてもらうことを夢見ていて、最後にそれが叶って「うれしいな」って笑顔を見せながら滅んでいく。ここがすごく好きで…敵なのに、愛らしささえ感じたりもするんです。
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――「からくりサーカス」 (藤田和日郎/小学館) は長いお話なので、予想がつかないところも多かったですか?
一度は本気で戦い合った敵が再び登場したとき、その見え方がガラッと変わるのは印象的でしたね。正義の味方になるとか都合のいい出方だけではなく、読者に媚びを売らない作者さんの意気込みもいいですよね。あくまでも敵として貫く姿勢がかっこいいですね。
木村良平
写真:原恵美子
ヘアメイク:福島加奈子
スタイリスト:村田友哉
プロフィール
木村良平(きむら りょうへい)
東京都出身。幼少期から子役として舞台等で活躍。テレビアニメ「東のエデン」(2009年)で初主演を務め、一躍脚光を浴びる。その後「黒子のバスケ」、「銀の匙 Silver Spoon」など数々の話題作でメインキャラクターを担当。テレビアニメ、ゲーム、実写映画、舞台等、幅広いジャンルで活躍している。2012年第6回声優アワード助演男優賞受賞。
◆木村良平 劇団ひまわり 公式プロフィール
https://profile.himawari.net/view/1515
◆木村良平 公式Twitter
https://twitter.com/ryouhey_drunk
◆木村良平 公式Instagram
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