ダンボールで育った少女の悲劇・・・児童虐待を題材にした漫画4選
更新日:2016/10/07 10:00
子育て中の友人ママから「最近、児童虐待の漫画のバナーを多く見かけてついつい読んでしまうの。魔の2歳児の我が子にイライラして、ついつい手を上げたくなる自分が嫌になって夜中のキッチンで子供を泣かせたことを後悔。そんな時に限ってどうして私のスマホに虐待のバナーを出してくんの? ねえ、どうして?」と軽く絡まれてしまいました。
あなたのスマホのこと俺に聞かれても、それ知らんがな……って話なのですが、その彼女は児童虐待の漫画作品をむせび泣きながら読み、叱りつけて泣き疲れて寝ている我が子のことをギュッと抱きしめ「明日からママ、もう少し優しくなるからね」と誓ったそうです。ええ話や……。
子育てしているすべてのママたちがそうだとは限りませんが、ママたちの多くが児童虐待について気になるのは、自分の意志でままならない我が子にイラついて、自分の感情をむき出しにしてしまったことがあるからではないでしょうか?
我が子に怒鳴ったり、お仕置きしたり、そのことが我が子にとって虐待になるのではないか、後々、我が子の記憶に残っているのではないか、そうしたことを気にするママたちが児童虐待について関心があるのは当然だと思います。
そしてこれから紹介する作品を読んでいただくことで「ああ、私は違うわ……」と少しだけ気持ちが軽くなるのではないでしょうか。
「我が子がこんな目に遭ったら…いやーッ!」
真田魔里子の「ダンボールで育った少女」 (真田魔里子/ぶんか社) は、タイトルのとおり、両親の虐待によってダンボールの中で育てられた少女・沙羅が、保護されてから世の中や人の愛に気づく感動作です。
普通の両親は、ダンボールで我が子を育てませんよね?
ごはんも食べさせてお風呂にも入れて、元気に育ってくれればうれしいという親がほとんどだと思います。そして、多くのママたちは「もし、我が子がダンボールで育てられたら、そんなのいやーっ!」と感じ、前出の友人ママのように我が子の寝顔を見にいくわけです。
けれども、ダンボールに我が子を入れたまま放置してしまう、そんな親が現実にも実在するのです。
児童虐待の家庭の多くは、しつけという名前の暴力がまかり通っています。
我が子のことを「バカ」と呼ぶ鬼畜母!
ワイドショーで話題になった実在事件を漫画化した作品で構成される、まるいぴよこの「消えた子供~戸籍のない11歳少女餓死事件~」 (まるいぴよこ/ぶんか社) にも、我が子を虐待する大人たちが登場します。
作品「届かぬ叫び」は、2008年に起きた児童虐待事件をもとにした作品です。亡くなった男児は、不倫関係の末に再婚した夫婦の間に生まれた子供です。両親は女児だけをかわいがり、生まれた男児を虐待するように。
男児はゴミ箱の中で窒息死しているところが発見されますが、後に両親が下着だけの男児をベランダのゴミ箱に入れて蓋をし、そのまま放置していたことがわかり、監禁致死などで逮捕されています。
親に見捨てられた子供たちの拠り所…
親に虐待されたり、育児放棄されたりした子供たちは、どうなってしまうのでしょうか?
そのような子どもたちを保護し、養育するため、児童養護施設という場所があります。そこでは様々な心の傷を負った子供たちが集団で生活しています。ただ、そこに辿り着くことすらできず、家に監禁されたまま命を落とす子供たちも少なくありません・・・。
「児童養護施設の子どもたち」 (榎本由美/ぶんか社) には、危険な状況にありながらなんとか助かった恵子ちゃんの壮絶なエピソードがあります。
母親が再婚してまた離婚。妹と弟ばかりかわいがり、恵子ちゃんが誕生日に口にしたのは、流しに捨てられていた残飯でした。そんな恵子ちゃんは母親と喧嘩をし、食事も与えられないまま家に監禁されてしまいます。そこに担任の先生が訪ねてくるのですが、母親は具合が悪いといって追い返そうとします。そしてひたむきに「生きたい」と思う恵子ちゃんがとった行動は・・・。
虐待は、我が子だけの問題ではない!?
「児童福祉司の涙~もがれる翼~」 (あまねかずみ/ぶんか社) では、駆け出しの児童福祉司・宮本愛が親からの暴力・ネグレクトに苦しむ子供たちを救うために精力的に活動しています。
実は愛も母親に愛されなかった少女です。下着一枚で寒空の中、追い出されながら、どうしてお母さんは私をいじめるの?と自問自答した悲しい記憶を持つ女性です。
この作品の中では何度か、虐待が行われた家庭の近所の住民が児童相談所へ通報する場面があります。通報することで近隣トラブルになるのではないか、また勇気を出して虐待について通報しても、児童相談所に信じてもらえず苦しむ通報者の姿についても描かれています。 こうした虐待の通報についてのトラブルは漫画の中だけと思う方もいるかもしれませんが、こうしたことは現実に起きているのです。
今回、紹介した作品内の児童虐待家庭の多くは、貧困に苦しんでいたり、問題のある家庭が中心です。けれども、そうした様子のない、“普通の家”の中でも、児童虐待が行われている可能性があります。
虐待はいけないことですが、「ダメ!絶対!」というだけでなくなるものではありません。 私たちにできることといえば、子育てで追いつめられている母親・父親へのアプローチでしょうか。子育て中のママが煮詰まってしまったとき、近くでママたちからのSOSを感じたとき、話を聞くだけで彼女たちが穏やかな気持ちになれることもあると思います。
人と人のつながりが希薄になりがちな現在、関わり合いになりたくないこともあるかもしれませんが、周囲への心を閉ざさずに優しい気持ちを持つこと。それが、まわりまわって自分にも優しさとして還ってくる。 児童虐待の漫画作品を読むことで、女性だけではなく男性も、もっと虐待について関心を持ち、そこから虐待のない世の中にするためにできることを始められたらと思います。
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作者
ストーリーな女たち編集部
ぶんか社で女性向けコミックを編集。『愚者の皮―チガヤ編―』などが連載され ている『ストーリーな女たち』を月刊で編集するほか、読者投稿を中心にした読 み切り作品をまとめた「読者投稿!ストーリーな女たち」、読み切りの社会派作 品をまとめた読み切り作品などのラインナップがある。 多くの人たちに共感されるような、問題提起作品をお届けしたく日々、業務に邁進中。記事タグ
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