「彼岸島」は怖いのに笑える?!画像で惹かれる理由を紹介!
更新日:2016/10/14 10:00
吸血鬼サバイバルホラーという代名詞だけでなく、「バトルもの」や、「ファンタジー」、時には「笑える」などさまざまな評価を受ける「彼岸島」 (松本光司/講談社) 。
本当に怖いのか、それとも笑えるようなものなのか?どこが魅力でドラマ化や映画化、そしてなにより長期連載となっているのか?
その秘密を迫力あるシーンや、ネットでも話題のシーン、思わずグッとくる熱いシーンなどを通して紹介していきます。
彼岸島のあらすじ。人気の理由は?
大ヒット作「彼岸島」 (松本光司/講談社) は、主人公の兄である宮本篤が戦っているシーン、それも吸血鬼の親玉である雅に背後を狙われるシーンから唐突にはじまります。
短い冒頭部分で、吸血鬼の恐怖、感染ルートなど、物語の根幹部分の説明がされるのですが、スピード感と迫力で、説明的と思わせることなくストーリーが進んでいきます。
その後、視点は主人公である宮本明に移り、舞台もごくふつうの商店街へと移動します。
ここで、その後否応なしに活躍させられるメンバーが登場し、また明の思うようにならない恋や、兄への気持ちなど、中盤までの明の気持ちを決定づける重要なモノローグや会話が展開されます。
篤の免許証を持つ女が明に近づき、導かれたことで舞台はすぐに吸血鬼の彼岸島へと戻り、閉鎖空間でのサバイバル、吸血鬼とのバトル物語に繋がっていきます。
明たちが吸血鬼の待つ彼岸島に渡り、襲われて、戦いを決意する。
また強くなりたいと願い、超人的な力を身につけていく明の気持は、常に明確で共感できるもので、魅力ある作品となっています。
迫力のある戦闘シーン
読んだことがない方でも、「丸太」というキーワードは目にしたことがあるのではないでしょうか?
本作のバトルシーンの中から、特に迫力のあるものをご紹介していきます。
滅多なことでは死なない吸血鬼にとどめを刺すための荒々しいシーンばかりです。
豪快に丸太を振り回す(第百八十話 丸太)
【彼岸島といえば丸太、丸太といえば彼岸島】ともいえる頼もしい武器、丸太。
今回読みなおしていて原点を探してみましたところ、吸血鬼の封印が解かれてしまったあと最初の一撃から丸太でした。
槍で吸血鬼の串刺し(第二十八話 関所)
戦いなれた篤に対して明たちは未熟で、まだまだ篤だけが主戦力の序盤ですが、みんなで協力して吸血鬼を一箇所に押しつけ、横から槍で串刺しです。
篤、決死の覚悟(第四十四話 手にした剣)
刀は折れ、周囲は吸血鬼に固められてしまってなお、雅を殺すことを諦めない篤は、体当たりをして雅もろとも川に落ちようとします。
この作品の戦闘シーンの良さは、ひとえにキャラクターの潔い覚悟にある気がします。
ついに雅の鉄扇に打ち勝つ(第二百十五話 渾身の一撃)
篤をはじめ、明自身の刀を幾度も防いできた雅の鉄扇ですが、第二百十五話「渾身の一撃」にしてついに打ち砕かれます。
当然、一撃くらっただけで雅が倒れるわけではありませんが、敵である雅も褒めるほど明の成長ぶりが伝わる迫力のシーンです。
ネットで話題!衝撃のシーン
作中ではほぼ万能のアイテムが如き扱いの丸太に関する話題や、よく考えるとコミカルともいえる擬音、そして超人過ぎる明の戦い振りなどネットを賑わしたシーンを紹介していきます。
冒頭からハアハアしていた!(第一話 兄と弟)
考えすぎると、笑えることもある本作の擬音。中でも圧倒的に多いのがハアハアです。読み返すと、作品の顔である第一話の冒頭から宮本篤はハアハアしていました。
魚なのに、バタフライ泳ぎ(第五十話 音)
本作で、吸血鬼は人間の血を一定期間吸わないと“邪鬼”になってしまいます。この邪鬼は魚形なのになぜバタフライ泳ぎ?と突っ込まれていたシーンです。
たしかに絵としてユーモアに見えてしまうというのはあります。けれど邪鬼も、もとをたどれば人間だったわけですから、よく考えるとバタフライ泳ぎでも不自然ではないのかもしれません…。
飛んでくる矢はマトリックスのごとく(第九十話 雅の口)
8か月の修行を積んだ明が強くなったあとの描写です。
雅との対決中に、飛んできた矢を全てかわすという離れ業。まるでマトリックスで弾丸をよけるシーンのようだ、と話題でした。
丸太合戦(第百八十話 丸太)
復活した雅は丸太で一撃食らうのですが、倒れません。自分が一撃くらった丸太を小枝といい、手近にあった大きな木を引っこ抜いて殴りかかってきます。
この時、振り回す前に木の感触を確かめて「いい丸太だな‥‥」と言い放つのですが、このセリフはネットの丸太伝説に刻まれた名言となっているようです。
葛藤を描いた熱いシーン
本作が様々な突っ込みどころを抱えながらも人気を博している理由のひとつは、キャラクターがしっかりと描かれているということだと思います。明の万能に近い兄への憧れと反発など、登場人物たちの葛藤を描いたシーンを紹介していきます。
親友と幼なじみと明の微妙な関係(第一話 兄と弟)
たとえサバイバルホラーであっても、色恋要素は外せません。
明が恋しているヒロインは、初っぱなから親友と付き合っているという状態です。そして、両方とも大切な人という事実は、作中で何度も明を苛むのです。
兄弟の再会も、まずは疑いから(第二十六話 再会)
彼岸島で兄・篤とやっと再会できた明ですが、いきなり丸太を突きつけられます。
そして第一声が「とりあえず殺しておくか」。
たとえ見た目が肉親であっても、疑わしきは殺さなければ自分が生き残れないのが、「彼岸島」なのです。
襲ってくるのなら、兄でも刺せ!(第三十五話 守る者)
吸血鬼の親玉・雅に操られてしまった篤に対して、明が取った行動がこちら。
ここでは吸血鬼になってしまったわけではありませんが、正気を失った相手と対決してしまった以上は、倒さなければ自分たちが生き残れない…まさに「彼岸島」らしい状況です。
わかり合えた友を殺さなければならない(第六十四話 プライド)
彼岸島へ渡って、すぐに気まずい形で離れ離れになってしまったポンとの再会は、思いもよらぬ悲惨な形でした。
話がなんとか通じ、わかり合えたかに見えたふたりですが、やるかやられるかの状況を明は突きつけられます。
なんで?と思わず突っ込んでしまうシーン
キャラクターの心情がいくら理解できても、デフォルメの効いた描写だと考えても、それでもやっぱり「なんで?」と突っ込まずにはいられない。
ある意味【彼岸島らしい】シーンを挙げてみたいと思います。
ふたり同時に渡るのは危ない吊り橋に怪物が!?(第三十七話 対岸)
吊り橋の反対側へみんなで逃げて、橋を落としてしまおうという作戦中のシーンより。
橋はボロボロ、渡るのは1人ずつ。2人同時はかなり危険で、3人同時などは絶対に無理!という描写のあとに、飛び乗ってくる巨大な邪鬼。
なぜか橋は持ちこたえています。
気持ちひとつで能力が飛躍する(第四十五話 約束)
頼りにしていた兄・篤とはぐれてしまい、その生死もはっきりしない状況の中で遭遇してしまった吸血鬼との戦闘です。
篤は生きているはず、そして待ち合わせ場所に必ず行くのだ、と気持ちを奮い立たせた明は、矢を握り吸血鬼の頭部に突き刺すなどめざましい活躍を始めます。
気になる地理問題(第二百六話 指令書)
これはネットでもさんざん言われていることですが、彼岸島の地理ってどうなっているのか?という疑問は常につきまといます。
本土からの行き来が途絶えても気にされない程度の島かと思いきや、四階建ての総合病院があり、その一方で足下にはバラックのような住宅が並ぶ風景。島の水準が気になるところです。
先にオチを知りたくなる怖いシーン
よくよく考えれば「ぶっ飛んでいる」といえるようなシーンでも、抜群の語り口のせいで読んでいると本当に怖くなることも。ホラー作品の本分を十二分に発揮しているシーンをみていきましょう。
夜の工場内で、命がけのかくれんぼ(第八話 操作方法)
彼岸島に渡る前、吸血鬼に追われて夜の工場内に逃げ込む明たち。
工作機械の間に隠れ、吸血鬼をやり過ごすなど定番のシチュエーションですが、思わずこちらも力んでしまいます。
雅の待つ病院に騙されて行ってしまった篤たち(第四十話 電話)
篤の回想シーンより。語りは現在の篤なので、篤たちが雅の罠にはまっていくのが先に先にと伝わって来て、ハラハラさせられます。
しかもこの回想は、物語の根幹に関わる重要な情報を含んでいて、思わず目を背けたくなるのにストーリーは気になるという悩ましいところでもあります。
最強の兄弟対決(第百五十七話 薙刀)
とある理由で対決することになる篤と明。悩み抜いた明も覚悟がきまり、いざ全力でぶつかり合いがはじまるシーンです。
ここまでの2人を知るからこそ、突きつけ合う刃にはいつも以上に迫力を感じ、思わず結果だけ知りたくなってしまうのです。
ついに決着!?(三十三巻表紙)
長かった、あっという間だけれど大長編だ。続編もあるけれど一区切りだし、この表紙だし、きっと決着がついてくれるはず。
…と万感の思いがこみ上げる三十三巻です。
斬られても斬られても蘇る雅とのバトルで、読んでいるこちらの手も汗をかき、思わず最終ページを先に開きたくなってしまいました。
今回、「彼岸島」 (松本光司/講談社) をご紹介するにあたり、改めてページを最初からめくっていると、内容は覚えているのに気がつくとつい読みふけってしまっている、という状態に幾度となくなってしまいました。
島に関する設定、超人的な力の描写など紹介したい部分はたくさんあるのですが、この作品の最大の特徴は抜群に優れた語り口です。主人公の明は、妄想癖があり、仲間たちに作り話を聞かせるという設定でしたが、まさにこの作品自体がそういう能力に秀でた作者によるもの、といえるのだと思いました。