4.0
死に向かう若者と、向かわせる者の思い
私の曾祖父は陸軍航空隊?のパイロットだったそうで、上官の立場にあり、
敵機より更に上を飛び、日本の特攻隊の成果を見届け報告する義務にあたっていたそうです。
飛行機の話はその子である祖父からよく聞きました。
祖父自身、昭和20年8月末に特攻隊として飛び立つ予定でした。(終戦の方が早かった)
諜報機関にもいたので、一度ふるさとに帰ってもヒゲぼうぼうで、汚い格好をし、母にも兄弟にも何をしているか言えなかったと言っていました。
同級生に会って馬鹿にされた場面はこの作品でもありましたが、
祖父から聞いた話そのものだなと思いました。
死に向かう日々を過ごす気持ちを祖父の口からは一度も聞いたことがありません。
思い出したくもないのか、先に飛んでいった戦友を思ってなのか、辛いのか、達観してしまっているのか、
胸中は私たち世代には到底計り知れないものだと思っています。
寄り添えるとすれば、話を聞くことも出来ないので、本当に手を握り目を見て私の話をすることくらいです。
こちらの作品は空を飛ぶ特攻隊ではなく、海の中から出撃する回天のお話です。
なんのために死ぬのか、
なんのために生きるのか、
自分はなんなのか、
自分のために死にたい。
心中の移り変わる様子が細かに描かれていて、まるで当事者の隣に座って話を聞いているかのような錯覚を覚えました。
犬死にしたくない。
かあちゃん。
そんな言葉、本当に20代そこそこの男の子の口から出たのかな?とすら思った事もありましたが、
この作品を読んでようやく理解できた気がしました。
悲しい、辛い、では語り尽くせません。
ただただ、自分たちの世代も、
何か一つでも人のために出来ることをする機会が持てる人間にならなくてはと思います。
何も無かった彼らにとって、
最後の希望は明るく平和な後世だったと思うから。
- 4