5.0
登場人物の心理描写がていねい。
言葉では簡単に表現できないような
何ともいえない細かい感情を、
上手く捉えてると思った。
ストーリーは淡々と進む。
登場人物たちは
あまり顔に感情を出さない。
しかしその内面では
悩み、考え、熱い気持ちを持つ。
回天に搭乗する。
その時点で死を意味するということ。
しかし
命じられるのが
同じ「死」だったとして、
渡辺たちが志願したのは
敵を撃沈するためだった。
「自分たちにとって意味のある死」
だったからであって
けして無謀な作戦の「犬死に」のためではない。
同じ死でも、意味がちがうという主張。
それでも下される命令が
無謀な作戦の「犬死に」である残酷さ。
ウソの戦果報告に気付いていて、
無謀な作戦に気付いていて、
全てを分かった上で
それでも搭乗しなければならなかったということ。
ただでさえ回天という存在に
ショックを感じたのに
ますますやりきれなく、悲しみが増した。
強行策に突き進む
上の立場にいる人々に対して、
正気の沙汰と思えない。
戦争は狂気で
人を歪ませてしまうのだと感じた。
読まなければ分からなかったことだらけ。
考えさせられる作品です。
知ることしかできなくても
せめて知らなければ、という気持ちに
なりました。
- 4