4.0
復讐は誰のため
漫画でも映画でも、リアルな復讐者の描写にはどこか悲しみがつきまとう。
それは、復讐が本質的には「無意味」なものであることを受け入れた悲しみというか、虚しさなのではないかと思う。
復讐なんかしたって、何にもならない。
それがよくわかっていながら、それでも、これしかない、という。
それを覚悟と呼ぶにせよ、諦めと呼ぶにせよ、復讐には、ある種の悲壮感がついて回る。
充実感や達成感とは、復讐は本来、無縁だ。
だから、この漫画の「気持ちいい」は新鮮だった。
異色である。
しかし、よくよく考えてみれば、これは復讐の核心を突いているとも言える。
復讐は、誰のためなのか。
それは結局のところ、究極の自己満足ということになるのかもしれない。
死者は帰らない。
誰が喜ぶわけでもない。
復讐は、自分のため。
悲しいほどに、自分のため。
その残酷で醜い事実を、潔く引き受けたのが、主人公の「気持ちいい」なのかもしれない。
その復讐は、乱れきっていながら、静かで、悲しくて、美しい。
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