4.0
悪意がない故に
読んでいて、どうにもならない苛立ちともどかしさに頭が痛くなった。
そういう感情を喚起させるための作品だと思うから、成功している、と言ってよいと思う。
いわゆる「毒親」問題を扱った作品だが、子どもに害悪を及ぼす親にも、色々ある(だから、「毒親」と一括りにカテゴリ化するのが私はあまり好きではない)。
例えば、大きな方向性だけ見たって、明確な悪意を持って子どもを傷つけようとする親と、「子どものためを思って」結果的に悪をなす親、両者を同一に「毒親」問題として語ることは、問題の本質を見誤らせる気がする。
本作で描かれているのは後者の方、「子どものためを思って」という親だが、考え方によっては、こっちの方がタチが悪いとも言える。
過剰な暴力とか食事を与えないとか、そういった事象であれば法でもって抑止することは一応、出来る(それが難しいことは重々承知しているが)。
しかし、「子どものためを思って」型の親が精神的に子どもを追いつめる行為に関しては、外部から抑制する術が多分、皆無に近い。
しかも、
「この子のためなのよ」
「私が一番この子のことをわかってるのよ」
「私が何とかしてあげなくちゃ」
という強固な思い込みに裏づけられているぶん、周りからの声は極めて届きにくい。
「悪いことをしてやろう」として悪をなす人間ばかりではない。
残念ながら、善をなさんとして悪をなすのが人間だし、そのような人間の営みは、しばしば甚大な悲劇を引き起こす。
ヒトラーだって自分では善のつもりだったんだろうし。
難しい。
解決法があるのか、私にはまるでわからない。
ただ、子を持つ立場の人間は、読む意味のある漫画だと思った。
それだけでもう、この種の作品の価値としては、十分かもしれない。
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