5.0
ほどけてはだけた心
「錆びた夜でも恋は鳴く」で弓に手をあげていたかんちゃん事・林田の「ほどける怪物」続編、たぶん最終章です。
前作で秀那との紆余曲折の末、やっと好きだと言えた林田さん。
好きだから傷付けたくなくて、傷付けてきた自分が怖くて雁字搦めにしていた心を自ら緩め、それを秀那がほどき始めた前作。
幸せになって、と強く思ったのを覚えています。
そして、今作。
会社も同じで頻繁に行き来していた2人に、転勤という物理的な距離ができました。
秀那はいつも彼女はいたけれど、恋愛に本気になった事が一度もなかった。
でも本気で好きになってしまった林田さん相手に、感情のコントロールが上手くいかなくてもだもだします。
一方、林田さんも過去の罪に囚われていて、自分を抑える癖から抜け出せないでいたのです。
本当に切ない。
転勤に不安と寂しさを感じる秀那。
不安と寂しさを隠す林田さん。
未だに強く心に巣食うトラウマ。
東京と大阪。
そして大阪で秀那は背中に火傷の跡を持つ人物と出会うのです。
どうして好きだけじゃダメなんだろうと、読んでいて焦れて悲しくなります。
と、同時に負けるなとずっと心で繰り返しながら読みました。
本編に所々出てくるかんちゃんの暗黒の数年がとても痛々しい。
酷い会社でズタズタになった精神。
救いのはずだった弓の中にずっといた他の誰か。自分の家族の重圧。
徐々に心が死んでいってしまってたんでしょう。
この期間の出来事が、単行本の上巻に付いている『薊』でもっと掘り下げられて書かれています。
本当に『薊』は読んでて辛かった。
重いお話ですが、やはり笑えるところもあるしエロも濃厚でした。
でも単行本の方が修正が甘々で結構ばっちり見えてます。
電子は白抜きでしたね。
単行本も買って損なしです。
やっとほどけた怪物は、愛ではだけるのか。
心を曝け出せるのか。
どうぞ是非、2人の恋を見守ってください。
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