3.0
作品と背景と
鬼に魂を売って生き延びることを選んだ少年の物語。
「幽★遊★白書」+「寄生獣」、というと、まあまあわかりやすいかと思う。
決して退屈したわけではないが、登場人物の感情表現はいささか紋切り型で、特にモノローグについては、稚拙、という印象が拭えなかった。
巻末の文章で、作者の親友が集団暴行によって命を落としたことが、本作の着想のきっかけになったことを知った。
作者がこの作品にどんな思いを込めたのかも知った。
だが、この点に関しては、私は作品の評価からは完全に除外した。
作品とその背景というのは難しい問題だが、その背景でもって作品に対する評価を極端に変えることを、私は自分に許可していない。
例えば、ミュージシャンがクスリをやっていることが判明してその曲を聴かなくなるとか、そういうのが私は嫌いだ。
作品は、作品だ。
どんな聖人君子が崇高な決意のもとに描いた漫画だろうが、どんなクズ野郎が適当に描いた漫画だろうが、作品は作品として純粋に評価すべきだ、というのが私の考え方である。
この漫画が生まれたバックグラウンドには、なるほど、悲劇的なドラマや悲壮な決意があったのかもしれない。
しかし、突き詰めればそれは、どんな作品にだって、あり得る。
私たちがそれを知らないだけで。
例えば、とことん下らないギャグ漫画を描いている作者の秘めた決意など、私たちが知る機会は基本的にない。
作者が作品の背景を語ることを、否定はしない。
仮に私がこの作者と同じ立場だったなら、やはり、書いたのではないかとも思う。
しかし、思うのだ。
本当に語りたいことは、作品の中で語るのが、作者の本分ではなかろうか。
その意味で、この漫画がそれほど雄弁なものになり得ているとは、私には思えなかった。
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