4.0
館ミステリの金字塔!
アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」刊行以来、古今東西で山ほど出た館ミステリの中で、恐らくこの「十角館」が最高傑作なんじゃないでしょうか。
館ミステリのフォーマットは、ジャンル元祖「そして誰もいなくなった」でほぼ完成されてます。しかし、島の洋館に集められた招待客達、謎の主、突然のサツ害予告、次々増えていく犠牲者……と、元祖と同じパターンを踏襲しながらも、元祖以上にトリックに重きを置いた「十角館」が今も新しい読者を獲得し続けているのは、まさしくこの作品が新本格ミステリのパイオニアだからなんでしょう。
私は京極夏彦直撃世代なので、新本格ブーム時代をリアタイでは知らないんですけど、松本清張や森村誠一の社会派ミステリが主流だった当時の若い読者には、この作品って革命的な面白さだったんじゃないかな。私と同世代の読者が「姑獲鳥の夏」にサードインパクト並の衝撃を受けたように。
コミカライズ版は舞台が現代になってますが、冒頭でエラリイが「社会派なんてナンセンスだ。ミステリはトリックありきだ」と船の上で語るシーンがあります。これって当時の新本格系作家達の本音だったんかなーとか考えると、刊行当時の空気感というか、本邦ミステリ史をちょっと垣間見たようで面白いなと感じました。
そしてこのコミカライズ版、絵がめちゃくちゃ綺麗!キャラ造形もさる事ながら、背景の作画にも一切手抜きが無いので、十角館という異様な建造物を一発で視認出来るのが素晴らしい。文章で館の構造把握するのめんどい……て人は、コミカライズ版を読んでから原作読むと分かりやすいかと思います。
敢えて難癖つけるとしたら、やはり某人物の性別変更でしょうか。私が個人的に「TS設定で古い作品をリメイク」というのが余り好きじゃないからなんだけど、どうしても気になるという程でも無いかな。多少のアラが気にならん面白さなんよね。
原作読んだの相当昔で、幸い犯人が誰だったかも見事に忘れてるので(笑)、初見の人みたいに楽しめるのがめっちゃ嬉しい!こちらのコミカライズ版読んでから、久し振りに原作読もうかと思います。
- 0