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雪女と蟹を食う

あらすじ

金も行き場もない男・北は、自殺を図るが、どうしてもあと一歩が踏み出せずにいた。ある日、テレビのグルメ番組を観て、「人生最後の日は北海道で蟹を食べたい」と思い立ち、強盗を決意する。高級住宅に押し入り、人妻に金を要求するが、彼女の行動は、全く予期せぬものだった――。

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  2. 061話 コメント1
    第54話 夏の蟹
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  3. 062話 コメント4
    第55話 最果て
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    第56話 秘密の約束
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    第58話 夏が終わる
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    第59話 蟹を食う
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みんなのレビュー

  1. 評価:4.000 4.0

    手放した文学

    ネタバレ レビューを表示する

    読み始めたときから、必ず最後まで読んでから評価しようと決めていた。
    どんな作品だって結末は大切だが、これは特に、そういう種類の作品だと思ったからである。

    不運から多くを失い、自暴自棄になって自殺を決意した男と、その男から強_盗の被害にあった人妻が、北海道へ蟹を食べに行く。
    その無茶なストーリーにも、最初は都合よすぎるように思えた人妻のキャラクターにも、不思議と説得力を与える力業は、なかなか大したものだと思った。

    平和で、儚く、危うい、二人の死への旅路。
    その綴り方は実に叙情的で、ときに詩的で、純文学のそれに近い。
    作中、太宰治への言及があったり、人妻の夫が小説家だったり、作者のひとつの意図として、漫画で文学をやる、ということがあったのだろうと思う。
    それも、あまりにクラシックな、「心中物」という文学を。
    その心意気やよし。

    だからこそ、このラストはいただけない。
    二人のうち、少なくとも一人は、死ななければいけなかったと私は思う。
    というか、読み始めたときから、そういうラストでなければ、少なくとも星五つはつけない、と決めていた。

    死をもってこそ、それまでの全ての道行きが、深い悲しみとともに、特別な鮮やかさと美しさと切実さで読者の胸に蘇り、また、長く残る。
    そういう種類の作品になり得たし、なるべきだった。
    いくぶんの偏見を込めて言えば、それが文学だと私は思う。
    そういう意味では、文学を志しながら、最後の最後でそれを手放した作品、ということになる。

    しかし、作者はそんなこと、わかっていたはずだろう、とも思う。
    わかっていながら、こういうふうに、描きたかったのだろう。
    描きたかったなら、描くべきだ。

    この結末は、作品としての整合性や世界観や完成度よりも、登場人物に対する、作者自身の愛情や愛着を選択したものであるように私には感じられた。
    作者はきっと、この二人を、幸せにしてあげたかったのだろう。
    その思い入れみたいなものは、嫌いではない。
    だから、文学を手放したこの結末の是非を、私はもう、問わない。

    by roka
    • 42
  2. 評価:5.000 5.0

    うらやましい

    ただ、この2人の旅を羨ましいと思いました。
    人生疲れ気味の大人の胸に刺さります

    舞台は何処も行ったことのある場所ばかりでしたが、背景の作り込みが細かいだけではなく劇中に登場するほぼ全ての場所が実在する店舗に実在するメニュー。設定が非常に細かく実話ではと錯覚する程です。

    札幌のホテルのシーンではフロントや室内の作りまで現実そのまま。
    六花亭のケーキやコーヒーカップ、すすきのの吉野家のテーブル配置に至るまで、今そこに行けば全く同じ物が見られます。
    おそらく取材で実際に足を運ばれたのでしょう。

    沢山の写真を撮り物語を考えながら、作者が実際にこの2人と同じルートを旅したんでしょうね。

    by 匿名希望
    • 27
  3. 評価:5.000 5.0

    たった一つの冴えたやり方

    他のコミックスを買った時にこの漫画の第一話が、付録の冊子で付いていたので、それを読んでただちに出ている分を全部購入した。そういう出会いがなければ、こういう絵柄で奇妙なタイトルの漫画を読んで見ようとはおもわなかっただろう。
    特に自殺未遂のシーンのリアリティに驚いた。あの、首に縄をかけた時に感じる、周囲の空気が冷然としてきて、眼前に漆黒の闇が広がってくる感覚。あれは実際にやった者でないとわからない物だ。弱り目に祟り目で、理不尽極まる理由でうつ病に追い込まれ、自殺にも失敗すると目をかけていた筈の身内にまで侮蔑の言葉を浴びせられる。いつの間にこの国は、冷血なエゴイストばかりがのさばれる社会になってしまったのか?
    自罰的な傾向を捨てきれない者は、死に向かっていくしかないのだろうか?
    これは、近松の現代版としては最高の作品だと思う。結末がどうなるかはまだわからないが、北と彩女には、この世であれ、あの世であれ、幸せになってもらいたい。作中の二人と同様、この作品を読んでいる時だけは、私も此の世で一人ぼっちじゃないという感覚をもらえた。
    いくら凄惨な社会になっても、漫画を読む時ぐらいはせめてもの慰めを得たいという気持ちを持っている人であれば、是非読んでみてください。

    • 5
  4. 評価:5.000 5.0

    引き込まれる不思議な物語の続きが気になる

    最新話まで購入して読みました。現実離れしてるのになぜかすごく引き込まれる物語です。フィクションとわかっていても、これからどう展開するのか、気になってしかたないです。不思議な設定なのに、ぜんぜんシラケません。こんなファンタジーを求めていました。続話の配信がすごく待ち遠しいです。画風も気に入っています。

    by 匿名希望
    • 6
  5. 評価:5.000 5.0

    自分を取り戻せる愛があるという証明

    ネタバレ レビューを表示する

    何の落ち度もない主人公に「冤罪」というの不幸が訪れるのがことの発端。

    誰の助けも得られないどころか、主人公を守るべき立場の人たちの仕打ちに、打ちひしがれる主人公だが、失うものがなくなったと感じたときに、通常起こり得ないことが起きる。それが物語の醍醐味かもしれない。

    相手と接するごとに心の傷が少しずつ回復し、一度しかないこの人生を見直していけることに、「その瞬間を大切に生きる」希望が共感できる。

    確かに不幸なことは起こった。
    だからといって、自暴自棄な最悪の状態にならずにすんだのは、そして主人公の傷心が少しずつ癒やされていくのは、

    十分落ち込ませてくれる相手を、強引にでも主人公が見つけたからこそだ。

    ヒロインの心の闇に、主人公がどう動くのか、ぜひ最後まで読んでみてほしい。

    • 1

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