4.0
破れ鍋に綴じ蓋
この作品がアニメ化された際、女性声優陣は上野さんのアプローチをことごとくスルーし続ける田中君を非難した。だがちょっと待ってほしい。彼は健全な男子中学生であって、ホストではないのだ。もし彼が、上野さんのご機嫌を伺ったり、乗ぜられてその気になったりする様な男だったら、そもそも上野さんは惚れたりしなかっただろう。妹達への躾方をみていれば、彼がデリカシーの無い男ではなく、上野部長に無理難題を押しつけられ、山下さんに無礼な口を利かれても、感情を表に出さず、じっと耐えているのが分かる。見上げた男ではないか。
大体上野さんという人は、かなりの内弁慶で、先輩や同級生相手だと別人の様に顔色を伺う調整役になってしまう。同じ様に頭と運動神経が発達し、スケベな花森さんがその傍若無人さ故に優等生グループから顰蹙をかっているのも横目で見ているだろう。その上野さんが地金であるエキセントリックな性格と、好色さをぶつけても動じず、常識の範囲内に着地させてくれる田中君は、恐らく生涯二度と巡り逢えないかも知れない貴重なパートナーだと本能で直感しているのだ。田中君にとっては、ガールフレンドが南峰さんであれ他の誰であれ、さほどの影響はないだろうが、上野さんは田中君がいなければ萎れた花の様になってしまうのではないか。田中君の関心を買うという目的があってこそ、彼女の創造力は発揮されるのだ。
ただ、余計なお世話だが、自分が先に卒業して縁が切れてしまわない様に、発明も良いけど妹さん達の家庭教師でもやって、田中家と縁を繋げといた方が良いんじゃないか。無論作品内とは関係ない事だけど。
個人的な事だが、この作品は先行きの覚束ない立ち上がりから知っているので、愛着がある。色々なことで気持ちがくさくさしている時にこの作品を読み返すと、スーッと気持ちが落ち着いてくる。まだ未読の方は、そういう効能もあると思うので、是非読んでみてください。
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5
上野さんは不器用