4.0
上質のエンターテイメント
私は少女漫画には疎いのだが、これが過去の名作の集大成的な作品だろうと思った。「キャンディ·キャンディ」や、「はいからさんが通る」等のエッセンスを汲み上げた作品なのだろう。私は小説版を読んでいないので、あくまで漫画版からの印象になってしまうが。不幸な境遇の女性が真実の愛に包まれる過程を縦糸に、超能力者の戦いを横糸にするとは、何とも贅沢なエンターテイメントだ。これから先、美世と清霞には様々な試練が訪れるだろうが、家同士の葛藤ごときは大したことではない。大震災が近づいているのが、まず気掛かりだ。まあ、美世と清霞は無事だろうが。しかし、その後には最早超能力でもどうにもならぬ悲劇の歯車が回りだす。清霞がその時も軍部に留まって居れば、前線に出る事はないにせよ、過酷な試練を受けるだろう。或いは、彼等に子供が授かっていれば、その子にも過酷な運命が待ち受けているかも知れない。
しかし、これは後生を生きている者の驕りだろう。その与えられた瞬間を精一杯生きる、人間にそれ以上の事が出来様か?
私は最近つくづく、劇の効用とは、最高の瞬間で時の回転を止められる事だと思う。現実の人生は決してハッピーエンドにならない。しかし、劇は素敵な瞬間で時の回転を止められる。ハンフリー·ボガートが、警察署長の肩を抱いて、去って行く瞬間で時を止められるのだ。美世と清霞も幸福な瞬間で時を止められるかも知れない。
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わたしの幸せな結婚