5.0
浦島エイジ君へ愛をこめて
最初は大袈裟なタイトルだな、と思って軽い気持ちで読み始めたのだけど、一気に最終話まで読み終えた。
過酷な境遇に生まれた二重人格の主人公。私達が、普段会話で使う「二重人格」とは別次元の、深刻で切実な状況。しかもそれは、主人公自身が望んでなったものだった。
父親が殺○犯だという人生を生きてきたが、父親は本当に罪を犯したのか、そしてそうでないなら真犯人は?とミステリーを読むように楽しんで読める。絵も上手いし話も面白い。しかし、途中涙なくしては読めないところも出てくる。今も思い出すと泣けてくる。物語の核心は、やはり2つの人格がひとつの身体に入っていることの悲劇だ。自分がいなくなる恐怖をリアルに想像させられる。
読み終えてしばらく時間がたち、一番印象に残るのは、やはり、冴えない、モテない、普通っぽい大学生のエイジ君である。ただただ優しかった、人間らしい暖かさを持ったA1のエイジ君。みんな彼が好きだった。また彼に会いたい、と思いながらずっと読み進めてきた。
ラストは一応、ハッピーエンドなのだろう。が、私の望むハッピーエンドではなかった。大きな大きな喪失感に襲われている。できれば、存在し続けていて欲しい、と願わずにはいられなかった。無理な話なのだけれど。
1話が高いのが嫌だが、無料が多く出ている時に読むのがお勧め。読んで損はないです!
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